ひとりごと(2015年8月分)

2015年8月30日(日)             「二代目駅長さん」

今日は南大阪・熊取から更新します。

このところひと月2回更新だったので、3回も更新できたのは約1年ぶり。

東京を出てきた時はもう秋のように寒くて、猛暑日が1週間も続いていたのが嘘のよう。今年の夏はきつくて暑さを恨まんばかりでしたが、こんなに急に寒くなるとやはり寂しいものです。大阪に来たらまだ暑さは健在でホッとしましたが、例年の今頃と比べるとちょっと暑さが足りない。クマゼミのジャンジャンと言う鳴き声もテンションが低く、むしろ秋の虫の鳴き声の方が優勢です。そこかしこに秋の気配を感じると、もう夏休みも終わりかと、学校も始まるかと思い、ちょっと・・・。

休みになればなったでしなくてはならないことは多々有りますが、何だかんだ言っても体を休める時間があるのは助かります。それにしても無理がきかなくなりました。「年を重ねる」意味、最近良く考えます。演奏してゆくにあたって、スポーツ選手のように30、40代で引退するのはあまりきかないですし、仮に体の動く絶頂期を過ぎたとしても、内面的なものが重視される世界なので~と今までは思っていたのですが・・・。確かに内面的なものが充実するのに年月は必要ですが、それと引き換えに失われるものも確かにあるなぁと。テクニカル的にバリバリする曲、元からあまり自分の範疇にないのですが、そういう曲を弾くにはもう制約があるでしょうね・・・。

ここの練習室の窓から見える棚田、今年は目の前の1枚分だけサトイモ畑。何年かに一度そうするのだとか。大きな大きなサトイモの葉っぱが畑一面埋めつくしているのも、風が吹く度いっせいになびく稲穂に引けを取らぬほどインパクト十分ですが、その葉っぱのどれも縁が黄色く枯れかけて、秋が近いのを感じさせます。お散歩でご近所を回れば、イチジクの実が成っている樹のとなりで柿が早々と色づき(早いって)、ナツミカンやレモンが緑色の実をつけ、フルーツいっぱい収穫の秋!畑仕事をされている方もあちこちにみかけます。赤い実がついているあれはなんだろう?と原田さんと話しながら歩いていたら、鍬をふるっていたおじさんに声をかけられました。なんでも青いタマゴを生む珍しいニワトリが居るとの事で、生みたてのうすい綺麗なブルーのタマゴも拝見。野焼きの煙のにおい、昔田舎に行った時の事をふと思い出す、そんなにおいです。

自然の移り変わりを感じ、自分の鈍っていた感性がまた少しずつとんがってくるのを感じ、そうすると都会で生活している事が何だか普通でないということも改めて気付くのです。ここにいる時は時計も見ないしテレビもないし、都会にいた時に頭を悩ませていた事もしばし忘れ、そうするとあるがままの事、自然界の事をありのままに受け入れるという、本来当たり前であるべき生活をしてるような、そんな気にさせられます。もしこういうところで日々生活していたら音楽も人生も変わるのかな。そんなところから、年を重ねる意味も考えるのかもしれません・・・。

そうそう、二代目駅長さんに会ってきました。今年6月30日付で書いた駅長さん、喪が明けて二代目駅長さんが就任されました。もともと初代駅長さんの部下だったニタマが二代目駅長さん(通称はニタマのまま)で、何度かもう会っていますが、すっかり貫禄がついていて頼もしい。初代駅長さんのたまは大明神となって、駅ホームの神社から見守っていてくれているので、きっとニタマも心強いでしょう。貴志川線がいつまでも存続しますように、こちらに来た時は必ず乗りに行こうと思います。皆様もぜひたま大明神とニタマに会いに行ってみて下さい。お勧めです。

久しぶりの夜更かし、そろそろ寝ます・・・。



2015年8月21日(金)             「デュオのレコーディング」

お盆真っただ中に行われたデュオのレコーディングも、何とか無事に終わりました。終わってみて初めて疲れているのが分かったほど、結構必死な2日間でした。翌日出たのはなんと肩こり。普段肩こりは無いので、それにはびっくり。背中や腕、手の筋肉痛が出るかと思ったら、そっちは全く平気・・・かと思ったら翌々日腰痛など出てきました。

それにしてもお盆真っただ中なんて、私たちはともかくとして、スタッフの皆様には申し訳ないという気持ちです。貴重な時間を使わせて頂き、本当に感謝しています。そもそもなぜこの時期かというと、やはり学校があるので落ち着いた時期でないと録れない。そう考えると8月しかないなぁと思ったのですが、お話を頂いたのが確か4月頭。それから場所を探したら、都合のつくところではお盆真っ只中しかホールがなかったという訳で。でもディレクターさんもエンジニアさんも、調律師さんも譜めくりストさんも、皆さんスケジュールを合わせて下さった事で、最強のメンバーで録音が決まりました。

とは言え、その段階で他の夏休みの予定は殆ど決まっていたので、どうやって合わせの時間を取るか、それが大変でした。結局は直前1週間ぎゅうぎゅうに合わせをしていましたし、その前も何かにつけて合わせの時間を頂けて、何とか間に合った状況です。録音は、コンサートのようにたった1回、その場のインスピレーションで、「まるで今生まれたかのごとく」な音楽にするのとは全く意味が違います。各曲につき幾つかのテイク、毎回違うテンポや表現で弾いてしまったら大変な事になってしまうのです。にも拘わらず、その曲をどう表現するか、いくつもの引き出し(方法)を持っている状態で録音に臨まないと、すごくつまらない演奏になってしまう。不思議なもので。しかし!更に不思議な事に、今までしょっちゅうプログラムで取り上げてきたマ・メール・ロワやエスパーニャの方が、録音に時間がかかったのです。たくさん弾いてきたが故にこだわりが深かったからなのか、それとも曲がそれだけ難しいのか・・・?

今回、前もってこのホールで半日弾かせて頂いていたので、いろいろ予測も立ち(暑さの予測も)、心づもりも出来て、その分スムーズに録音モードに入れました。ちゃんとどの曲から録るか順番も考えていったし。耳と手が慣れるように表現のダイナミックな曲から入って、静かなコントロールを必要とするものは後にするとか、集中力を必要とするものや体力的に大変なものは疲れない内に先に弾くとか、プリモとセコンドの交代を最小限ですませるようにするとか。それでも両日ほぼ1日中弾き続けた感じでした。1曲(集)ごとにちょこっと休憩し、そこで空調を入れるのですが、わずかな時間なので大して変わらなくて暑いまま。それでも集中すると暑さは一瞬で忘れました。ブドウ糖と黒糖、自然塩、野菜ジュース、そしてクーラーバッグを持って行ったのは大正解!

プロの方が最高なシチュエーションで録って下さった演奏をその場で聴くことは普段ないのですが、恐ろしいくらいありのままにクリアに録れていて、だからこそ全くごまかしがききません。詰めの甘いところはよくわかるし、ライヴとは違ってノーミスである事、縦が揃う事、など気になります。それに、どうしたら立体的に奥行きのある表現が出来るか・・・?長い時間弾いていると耳も指も慣れ、いろいろ出来る事があるのに気付き、音色、間合い、バランス、そういう事を少しずつ変える工夫もしました。考える事がありすぎて演奏以外は気が回らなくなり、でもそんな状態でいられるようにサポートして下さったスタッフの皆さんには心より感謝しています。

1日目はきちんと弾ける事を目標に丁寧に積み重ね、2日目はコンサートのごとく新鮮な気持ちで一発勝負で弾く。それでも2日目は何度も弾きました。録音ってかなりのところまで自分を追い込むので、普段見えていない自分を見る羽目になる、そんな状況でしょうか。終わると忘れてしまうのですが、2人で良かったなぁと。ソロの録音の時は自問自答するしかないところ、あぁしようかこうしようか、どう思う?と話せる相手がいるのは本当にありがたいと感じました。

というところで、録音翌日途中まで書いていた事をどうにかまとめ切れました。ホッ。今月はあと1回位更新できたらいいけど・・・?




2015年8月14日(金)             「月桃」

お盆休みに入り、世の中少し静かになりました。電車も大分空いて来たし。一時期のすさまじき暑さが少しだけマシになり、1日2日東京に戻ってまた出掛けるというスケジュールも一段落、無理して体を動かしていた状況から大分落ち着きました。夏好きだったというのに、こんなにしんどい夏は初めてです。夏バテしていたというのでしょうか、本当にやる気が起きないというか、だるかったというか・・・いっときは、この先待ち受けているのは熱中症?という位、今までにない不調を感じていました。が、もう大丈夫(なはず)。

昨日から部屋の中に蚊が入り込み、時々あの嫌な羽音がします。1匹捕まえてホッとしていたらもう1匹いるらしく、でもどうしても捕まえられない。という訳で足元に月桃のアロマオイルをティッシュに垂らして置き、そんな中で書いています。柑橘系のベルガモットや柚子の香りでも、蚊よけには思いのほか効き目がありますが、月桃の甘くて、しかしすぅっとする香り、いい感じです。

石川での子供さん達のための夏休みコンサート、とても楽しく心地よいひとときでした。アットホームな空間で行われたのですが、お母様方も子供さん達も協力して役割分担され、「みんなでつくったコンサート」そのものでした。会場設営はお母様方、案内板は子供さん達の描いた絵、司会も朗読も子供さん達担当、終わったあとの懇親会では大きな大きなスイカや凍らせてあったお茶などふるまわれ、お母様方からいろいろなお話を伺い・・・コンサートの原点を改めて思い出したような気がします。いろいろお手伝い下さった子供さん達とお母様方、いらして下さった皆様、本当にありがとうございました。

このコンサートの前日、ご近所にあるひまわり迷路に連れて行って頂きました。何となく想像はして行ったのですが、想像をはるかにしのぐ広い広~いひまわり畑で、果たしてゴールに戻ってくる事ができるのだろうかと心配になった程。ひまわりの花も良く育って人の顔くらい大きく、背丈をはるかに超える高さ、迷路を歩いているとひまわりによくぶたれる(!?)のです。何とも言えない草の香り、乾いた土の香り、じりじりと照りつける日差し、青くて広い空、ひまわりのあっち側から聴こえてくる子供たちの声・・・久しぶりに夏を堪能しました。

さて、その後学校の夏季受験講習会のレッスンのために2日間戻り、今度は長野へ。まず、安曇野のあづみ野コンサートホールさんにお世話になりました。ベーゼンドルファーのピアノ、木で造られているホール、ともにあたたかくまろやかな響きを生みだし、素晴らしいホールです。100席ほどの心地よい空間、連弾はもちろん、室内楽に最適だと思います。周りの風景が素晴らしく、何のために来たかを忘れそうな位。こちらで半日ほど練習させて頂きました。本当にありがとうございました。

そして、この秋と来年夏の予定について打ち合わせをがっつりと、日本初のビオホテルとなった池田町のカミツレの宿・八寿恵荘にて。豊かな自然に囲まれ、静かで、とても気持ちよく過ごす事ができるところです。やはりこちらも木がふんだんに使われた造り、館内は裸足で歩けて目にも優しいのです。食べ物は土地のもの、素材の味が生かされた胃にもやさしいお料理。カミツレ(カモミール)製品の工場が併設されており、周りはカミツレの畑だそうですが、時期的に収穫後でみられなかったのが残念。お風呂はカミツレエキスたっぷりのお湯、お肌がすべすべ。何よりもスタッフの皆さんの笑顔が優しいのが嬉しいです。打ち合わせでほぼずっとお宿にこもりきり状態でしたが、木に囲まれた空間で、時折チェロの音が聴こえて来て、館内滞在もぜいたくな時間となりました。

長野から戻ってきて、今度は明日明後日のレコーディング。原田さんとのデュオ、初CDはフランスもの(パリに留学されていた古曽志先生作品も)を集めたプログラムです。という訳で合わせをしたり、古曽志先生に聴いて頂いたり・・・。先生の組曲「こねこのポール」は真っ黒なこねこのポールが主人公。2曲目には「初めてお庭に出たポールには、見るものみんながめずらしい」と書いてあるのですが、まさにその曲を弾こうとしたその瞬間、古曽志先生宅のお庭を黒ネコちゃんが横切ったのです。そのタイミングの絶妙さもおかしかったし、先生のお宅のお刺身大好きなチャーリーくんはレッスン室の隣でしっかり聴いていてくれたとか・・・。

先日長野へ行く途中で録音予定のホールに寄り、1日練習させて頂いたのですが、前もって弾かせて頂けた事でいろいろ思い出しました。そうだ、演奏会と録音は違うんだっけ・・・。2時間弱の本番だけに全てを注ぎ込めたらよい演奏会と、完璧なものを記録に残す為に2日間集中力を持続させなければならない録音とでは、気持ちの持って行き方も体力の配分も全く異なります。またもう一つの不安材料は暑さ。先日の練習の折も舞台上はなかなかの暑さでした。しかし録音時は、音がはいらないようにと空調を切るのです。果たして耐えられるのか?涼しい格好をし、冷たい飲み物を常備、体をクールダウンさせるスプレーとか、そういうものもいるかな?といろいろ考えております。あぁ暑さがコワイ。

でも久しぶりに書く気が起きたのは嬉しい。単純に、何かに追い込まれている時は他の事がやりたくなるという、いつもの症状かもしれず。でも最近はいつしか寝てしまって朝になっているという事が多かったので、この心の余裕が夏休みかと。学校の事はすっかり忘れています・・・。


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