ひとりごと(2015年3月分)

2015年3月31日(火)             「シューマンとブラームス」

春の足取りは得てして早いもので・・・桜がやっと咲いたと思ったらあっという間に満開宣言となりました。どんな花も大好きですが、桜は特別。街中のあちこちに淡いピンク色の雲が浮いているような今の季節、気持ちが浮き立つような気がします。

例年お手伝いしている弦の講習会、そしてコンクールの伴奏も終わりました。1年ぶりに伴奏させて頂いた受講生の皆さんの成長ぶりには目を見張りました。1日1日の積み重ねが365回続き、今の演奏につながっているのだなと・・・経験した事考えた事の一つ一つが音に演奏に出ているようで、そういうものも感じながら伴奏していました。そして自分の語学力のなさにも落ち込んでいます・・・。

いろいろな物の見方があると知る事はとても大切。小さな頃からそれを知る経験を積めるって幸せな事だと思います。今回海外から3名の先生がいらっしゃりました。それぞれの先生で、レッスンの進め方も大切にされている事も違います。最終的には同じゴール地点にたどり着くような気がするのだけど、わかるまで時間をかけて教えて頂ける訳ではない。だから皆すごい集中力でレッスンを受け、必死に考えて練習していると思うのです。翌日のレッスンで、受講生コンサートで、ガラッと変わった進歩の跡が見えるのは本当に嬉しい。そんな1週間を過ごしていました。

さて、ピアノ・デュオの話を少しだけ。講習会とコンクールで必死になっている内、あの時の事が薄れて来てしまったので・・・。

自分で書くのもなんですが、今回もいいプログラムだったなと思っています。果たして間に合うかどうか、あんなに危機感いっぱいの怖い思いをしたにも関わらず、本番は弾くのが楽しかったし、いろいろな味わいを楽しめました。今回、いろいろな方から「あ、ドリー弾くの?」と声をかけて頂きましたが、ドリーってそこまで浸透しているのかと正直驚かされました(マ・メール・ロアやドビュッシー小組曲よりもずっとずっと知られていたようで)。でも弾くのは本当に難しい。何というか、あの空気感。ふんわりした雰囲気をまとわせる曲あり、軽やかなステップの舞曲あり、「ザ・フォーレ」とも言うべきハーモニーに彩られた曲あり。そして手の交差やぶつかるところも、思っている以上に多い。でもどれも親しみやすくて美しい。やはり名曲と呼ぶにふさわしい曲でした。

カプースチンのシンフォニエッタ。楽譜には「カプースチンの曲の中では弾き易い部類に入るであろう」と書かれてはいましたが、どうしてどうして、本当に大変でした。作曲者ご本人はジャズの影響を相当に受けていらっしゃるのですが、でもジャズそのものではない、と弾いている内に感じるようになりました。ご本人のインタビュー記事、そして自作自演されている動画を参考にさせて頂き、どう弾けばいいのかすごく悩みながら考えました。ハーモニーはジャズ特有の和音が多く採り入れられているものの、作曲に関してはクラシックの考え方がベースではなかろうかと推測。分析にもめちゃくちゃ手間取りました。元がオーケストラ曲なので、横のラインがさまざまに絡み合っており、それを理解し、4本の腕で配分するのも難しい。ご指定のテンポは恐ろしい程の速さ。絶対に弾ける訳がないと思っていたのですが、どんどんつんのめって勝手に速くなってしまう事も当初はしょっちゅうでした。プログラム中で一番合わせに時間がかかっていますが、楽譜を読み込みいろいろ試せば、まだまだ変わる可能性も大だと思えます。元々はディベルティメントとタイトルをつけようと思っていたとはご本人の弁。その通り、とても楽しい曲でした。

ブラームスのシューマンの主題による変奏曲。どうしてこの作品が殆ど弾かれないのか、実に不思議。それ位深さもあって素晴らしい曲だと思うのですが・・・。ブラームスがこれを書く前、彼を世に送り出してくれた恩人でもあるシューマンが、この主題を元に変奏曲を書きました。それはシューマンがライン川に身投げした前後の事、彼にとって人生最後の作品となりました。しみじみとした・・・なんて一言ではとても片づけられない、胸に静かに迫ってくる曲なのです。このシューマン自身の変奏曲、実はデュオの公演が終わってから音源を見つけて聴きました。今ならもっと違った想いをもって、ブラームスの方の変奏曲も弾けそうな気がします。

尊敬するシューマンが最も苦しい時に書いた作品、その主題を元にブラームスはどんな気持ちで作曲したのでしょうか。ブラームス作品の方は響きも厚く、さすがブラームスの特徴がよく出ています。本番で演奏し終わった時に、「まだもっと奥に何かがある、これからもずっと弾き続けてその奥にあるものを探したい」と思ったのを覚えています・・・。

モーツァルトは彼の連弾第2作目、まだまだシンプルなのですが、シンプル故にもっと遊べる余地も工夫する余地もあるかなと思います。ブラームスのワルツは昨年に続いて2回目ですが、自分の中で少し角がとれたような気がしました。この曲も本当に素晴らしすぎる曲なので、もっともっと年月を経たらどうなるか楽しみです。アンコールにはハンガリア舞曲の1番と5番。何年か前にプログラムに載せた時は、有名なのにも関わらず本当に難しいと思ったのですが、今回久しぶりに弾いてみてほんの少しだけ何かわかったような気がしました。自分でも楽しめるようになったというか・・・。

思いつくままにつらつらと書いてみました。連弾作品、もともと家庭的な趣をもったものなので、2台ピアノに比べて華やかな作品は断然少ないのですが、2人して深い作品が好きという点は全く同じ。弾いてゆく内に深まってゆける曲はやはりいいものですね。いらして下さった皆様、本当にありがとうございました。

日が経ってしまったので、もともと書こうと思っていたすごく大切な何かを忘れているような気がします・・・。




2015年3月19日(木)             「満席御礼」

気付けば、桜の開花まであと数日・・・。最近めっきりと春らしく暖かく、いや暑い位?になりました。いかがお過ごしでしょうか。

お陰様でピアノ・デュオの2公演、初の両日満席御礼となりまして、無事終える事ができました。チケット売り切れで止む無くお断りさせて頂いた方々、本当にごめんなさい。いらして下さった皆様、テッセラのオーナー様ご家族の皆様、調律師さん、そして毎年がっちりと受付を守り、こまごまとした事に気付き、また不安げない見事な譜めくりをして下さった不動のスタッフの皆様、本当にありがとうございました。

本番前の合わせの経過、曲について考えた事等、書きたい事はそれはもういっぱいあったのですが、体力がもたなかった・・・最後の2週間はほぼこれに絞りきっていました。曲目解説書きもプログラム発注も際のぎりぎりに気付いて間に合わせ、後1日遅かったらプログラムは当日届かなかったのではないかと・・・。残った時間、あるだけ全てを使って合わせをしていました。曲が分かってくればくるほど、あんな事もこんな事もできると気付き、一度固まりかけたものをいっぺん壊してみたり・・・間際になって意見が食い違うところが出てきた場所もあったし、まぁ本気でどうにかいいものを創ろうと思えばこそ、妥協はできない訳で。

我ながら1日中よく弾くなぁと思ったりしていました。ソロの練習はそこまでしません。伴奏では、どんどん相手が代わりながら結局1日弾いている事はよく有りますが、同じ相手と1日中あぁでもない、こうでもないと出来るのですね。面白いし楽しいから弾いている最中は平気なのですが、帰ったら何もできずそのままバタンキュー、慌てて朝お風呂に入って再度出掛けるの繰り返しでした。今回こそ本当に間に合うのかなと危機感があったのですが、それは作品がどれも深くて興味深いものばかりだからだと思うのです。コワイコワイという危機感に支配されながら、でももっと時間をかけてこの過程を楽しめたら・・・とふっと思ったりするものです。なんて贅沢な経験をさせて頂いているのだろうか、と。

と思っている内にあっさりと終わってしまいました。終わってから一気に素面に戻り、今久しぶりにあの感覚を思い出しています。やっぱりひとりでないところに大きな意味がありますね。一緒に音楽してくれる相手がいるって本当にありがたいものです。

デュオ・リサイタルに関してはまた改めて書きたいです。お約束できないですができたらぜひ。

ピアノ以外全てストップしている内にたまりまくった雑用、それを必死で片付けていたら大分すっきりしたのですが、肝心要のひとりごとを書く時間が無くなってしまいました。一つだけ、コンサートのページにソロ・リサイタルの曲目を載せましたので、どうぞご覧下さい。あと2か月ほどで本番です。今度はひとりで危機管理をしっかりしよう。学校も始まることだし・・・。


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