ひとりごと(2014年8月分)

2014年8月31日(日)             「カール・シュタイン その2」

昨夜帰京して、今日はオープンキャンパスの体験レッスン。少しだけ学校慣れ(?)し、早速明日から朝7時に出る生活が戻ってきます。うぅぅ、あの時間帯の車内の混雑は本当に苦手です。

ゆるゆるとした時間の流れの熊取缶詰合宿。本当に6日もあったのかと思うほど、あっという間に終わってしまいました。時間を存分に使える事がどんなに贅沢な事か、その価値を分かる時には、既にゆっくり時間を使う事ができなくなっているというこの事実・・・。

この夏にお会いした方々、尋ねた土地、さまざまな出来事・・・ゆっくり思い返す為にもっと時間がほしい、そんな幸せな時間を過ごせたひと夏でした。とても全て書ききれないのですが、皆さんが下さったお心遣いとお時間、そして偶然ではなく必然だったと思えるそのタイミングにも感謝しています。

大分前の事となってしまいましたが、ペンションぷれじ〜るさんでフォルテピアノを弾かせて頂いた時の事を少し。

本公演の前夜、宿泊されている方々、オーナーさんご一家の皆様、調律の竹田さんご夫妻、そして私たちだけのプライベート・コンサートがありました。正に「シューベルティアーデ」。シューベルトが生前、友人たちと集って自作のお披露目をしたり、そんな親密な雰囲気の中で行われたであろうコンサート。それを思い起こさせる雰囲気でした。

そのカール・シュタイン製フォルテピアノ、譜面台の脇に燭台を載せられる台が付いています。当時は、暗くなったらここにろうそくを灯して弾いていたのでしょう。点けたらどうなるのかと想像していましたが、それを初めてしてみたのがこの夜のコンサートでした。ログハウスの外は漆黒の闇。電灯を消し、フォルテピアノの両脇に2本のろうそく、暗いかと思いきや目が慣れてくると意外にも見えてくるものです。正直、譜めくりの時に楽譜に燃え移る危険はないかと少しびくびくしていましたが、あの雰囲気は忘れる事ができません・・・。

ちなみに昼間に合わせをしていた時は、天窓から木漏れ日が入ってきて、風にそよぐ影がゆらゆらとフォルテピアノの木目に映し出され、とても綺麗でした。そんな中でシューベルトを弾くことができるという贅沢・・・。

そうそう、夜の「シューベルティアーデ」ではオープニングに、ふと思いついてベートーヴェンの月光ソナタを弾かせて頂きました。子供の時、よく部屋を暗くして月光ソナタの1楽章を弾いていたのですが、まさにあの雰囲気ではないかと思って。月光が書かれた時にはこの楽器はまだ生まれていないのですが、ベートーヴェン亡き後、この楽器できっと誰かが月光を弾いていたに違いないと確信できるほどに、この楽器の音色が曲にぴたっとはまっていたと思うのです。弾いていた時は何とも言えない不思議な感じがしました。

翌日午後のひとときのコンサートでは、ログハウスに溢れんばかりのお客様。楽器のすぐ近くで聴いていらっしゃるのですが、それが当たり前に思えるほどの和やかな空気です。連弾ってやっぱりそういう親しげな楽しい雰囲気の中で演奏されるものだなぁと。弾いている時の心持ちもソロとは全く違います。休憩時には、ぷれじ〜るさんが焼きたてのクッキーと香り高いコーヒーをご用意して下さり、ログハウスを一歩出て木立に囲まれながらのコーヒータイム。ログハウスの中では竹田さんが楽器を解体して見せて下さり、興味津津に楽器を覗きこまれる人もあり。こんなに何もかもうまく事が運んでいいのかなと思ってしまうほどの、素敵なコンサートとなりました。お客様、そしてぷれじ〜るの皆様、竹田さんご夫妻様、素晴らしい時間にして下さり、本当にありがとうございました。

2週間後の所沢のコンサートのために、合宿でもシューベルトのファンタジーを合わせていました。最近弾いていた割には何かが違うと思いきや、今度はモダンピアノでした・・・。



2014年8月30日(土)             「季節」

東京は寒いそうで・・・。

夏の終わりの恒例、熊取でのピアノ・デュオ合宿も今日で終わり、これから帰京します。今週初め、こちらに着いた時はとにかく暑くて熱中症になりそうでしたが、少し過ごしやすくなりました。今週いっぱい関西も天気悪いと聞いていたのに、雨が降ったのは1日だけ。曇りの日もありましたが、今日はとてもよいお天気となりました。天気予報で、東京は10月頃の気温だと聞いてびっくり。何を着て帰ろう?

6日もあればさすがにこのひとりごとも書く時間は有るだろうと思っていたのですが、結局ぎりぎり今書くので精いっぱいの状況となってしまいました。リサイタルのお礼状を少し持って来て書いたのもあり、ピアノデュオのご案内を出していたのもあり、新学期に関しての事務的な事もあり、スケジュール決めもあり・・・何だかんだでピアノだけに集中する事は結構難しいものです。でも何よりも良く眠れました。日付が変わる前にまず寝ていますし、朝もゆっくり。こんなに疲れていたのかと改めて実感できるほど、本当によく眠れました。それだけでも何より。

こちらはツクツクボウシがカノンで聞こえる程、今たくさん鳴いています。田んぼによっては稲穂がもう垂れていたり、でも目の前の田んぼはまだ稲の花が満開というところ。あぜ道を歩いていたらぶつかってくるのかと思うほどトンボがたくさん飛んでいます。田んぼのど真ん中に1本だけでぇんと生えているミカンの樹には、青い小さな実がたわわとなっていました。今日は風がゆる〜く吹き、乾いた草の香りが家の中まで届いています。自然ではないですが、夜にだんじり(地車、と書くそうです)の練習している音が風に乗って聞こえてきます。

季節ごとの自然の移り変わり。それを見に、聞きに、感じに、ここに楽しみに来ているような気がします。秋の盛り、桜の季節、初夏はまだで、果たしていつ来られるか・・・?

明後日から新学期かと思うと非常に名残惜しいのですが、スケジュールもりだくさんの夏でした。私自身チャキの江戸っ子(3代ではなく2代目半なのでチャキチャキとはまだ言えない)、典型都会っ子かもしれないと思いつつ、まだピアノを本格的に取り組んでいない子供時代は、夏休みと言えば田舎の長野でずっと過ごさせて頂いていた思い出もあり、都会っ子だけではない何かが自分の中にあるような気もしていました。この夏のように都会を離れている時間の方が断然長くなると、もしかしたら今の自分に必要なのは「時間がゆったり流れる自然の多いところ」なのかと、ふと思ったりしてきます。今住んでいるところも、都会にしては虫や小動物が結構居て植物も多いのですが。

出発まであと1時間、今から荷物を詰めなきゃ・・・。




2014年8月18日(月)             「鳥海山」

8月も既に半分過ぎてしまいました。終戦の日も69回目、平和について考えさせられた1日でした。日がのぼるのも遅くなり、空にはすぅっと流れる秋の雲があらわれ、何だかんだ言っても新学期も近いんだなと思わされます・・・。

お盆明け早々、コンクールが始まっています。今週はまるまる一週間、連日審査が続き、発表が終われば翌日から2次予選、それが終わればすぐ本選というハードなスケジュール。参加する学生さん達、春からずっと練習に取り組んでいました。学期末はさまざまな試験や演奏会がある中、時間をやりくりし、何の曲をどういう順に仕上げて行くか考えて合わせの予定を組み、夏休み前におさらい会ラッシュがあり、あっという間にもう本番となってしまいました。ある学生さんの「もうこの日が来ちゃったという感じ」というひとこと、それだけに実感がこもっています。

さて、秋にいろいろ演奏させて頂ける事となりまして、コンサート情報のページに掲載致しました。まずは毎度おなじみのピアノ・デュオ。そして、かれこれ14回目となる伊賀さん青木くんとの室内楽(今年はラロ!)。そして大学時代同期で今洗足でも同僚である、クラリネットの中村めぐみちゃん、彼女とは三善晃先生作品の夕べに1曲、それと別にランチタイム・コンサートでもご一緒させて頂ける事となりました。そして洗足では彼女の門下で、在学中何度も伴奏させて頂いた山田知佳子さんのデビュー・リサイタル。その他、9月に入って別の大きなコンクール、学内の演奏会、試験の伴奏、と思いがけずもよりどりみどり。

ありがたい事ですし、いろいろな方、楽器、曲に出会えてとても楽しみなのですが、目下の悩み。譜読みが・・・。全く初めての曲も大分あり、弾きにくい近現代曲もあり、必死のぱっちで読んでいる真っ最中。個々のコンサートについては近くなりましたら書かせて頂くつもりです。皆さんそれぞれ個性的な素敵な方ばかりで、選曲からして「その人」があらわれるもの。想いのいっぱい詰まったコンサート、ぜひいらして頂きたく、よろしくお願い致します。

さて、今月頭の東北の旅の、いくつかあった目的の内の一つ。昔、副科ピアノでレッスンにいらしていた生徒さんをお訪ねする事でした。彼女は学生の時分より豊かな経験を積んでいて、既に「大きな器」を持っていました。細やかな心配りがさりげなくでき、何に対してもまっすぐで、そしていろいろな「表現をするすべ」を持っていました。かつてリサイタルの感想のお手紙を何度か頂きましたが、どれほど勇気づけられた事か・・・。

結婚されるという話を聞いた時、お仕事はどうするのかとちょっと気になりました。大学卒業後、一生の職になる素晴らしいお仕事をしていたのですが、スパッとやめる、と。そして嫁いでいった先は秋田の土田牧場さん。聞いた瞬間はとても驚き、でもとても彼女らしい選択だと思い、彼女なら間違いなく大丈夫と思えたのです。厳しい大自然の中で働くところが目に見えるような気がしました。

それから長い年月が経ち・・・数年前、最初に秋田の羽後町で演奏させて頂く事になった時、ふと思い浮かんで連絡しました。それが10数年ぶりの再会でした。ただ、いつも羽後町の方々に呼んで頂けるのは冬なので、いつか夏に牧場をお訪ねしたいなと密かに思っていて・・・それがやーっと実現したのがこの夏のこと。

想像もつかない広い広い草原に牧場はありました。すぐ近くに風力発電の風車が何基も回っていて、いかに風が強いところかを物語っています。忙しい中申し訳なかったのですが、牧場のあちこちを案内して頂き、さわやかな風に吹かれながら、美味しいソフトクリームとヨーグルト、チーズトースト、ソーセージなど頂きました。一番印象に残っているのは、まるでアルプスの少女ハイジに出てくるかの如くの丘。アップダウンがいくつも続き、その丘からは下界が見渡せ、鳥海山の雄大な姿も拝めます。その美しく厳しい自然の中で、自然と共に、着実に毎日毎日を生きる。これが何を意味するのか、といろいろ考えさせられました・・・。

リンクのページに土田牧場さんのリンクを張りました。牧場からみえる風景写真も沢山あります。また飲むヨーグルトはじめ乳製品などもどれも本当に美味しく、お取り寄せ出来るようになっています。よろしかったらご覧になって下さい。

鳥海山を思い出しながら書いていたら、あの風にまた吹かれたくなってしまいました・・・。



2014年8月10日(日)             「120000!」

残暑お見舞い、そして台風お見舞い申し上げます。

どうして世の中の人々がふるさとへ帰ろうとしている時に邪魔しに来るかな・・・。移動をされる方、そして台風通過地域にいらっしゃる方、くれぐれもお気をつけて下さい。被害がこれ以上増えませんように、心から祈ります。

小中学生の頃はまめに暑中お見舞いを出していましたっけ。毎日ポストを覗きながら、そういえば昔は、夏といえばお手紙や葉書が多く来ていたような・・・。手紙が好きで良く書いていましたが、今は全然書けなくなってしまいました。便利なようでめちゃくちゃ忙しくなっているこの情報社会。知らなくてもいい事をいつのまにか沢山知っていて、肝心要の大事な事は指の間からするっと逃げて行く。そんな気がします。演奏も、そういう「目に見えないけれど大切なもの」を音にして伝えていく事だと信じているので・・・。

8月に入ってから東北をぐるーっと回っていました。そういう「目に見えない大切なもの」、もちろん「目に見える大切なもの」もありますが、それを守っていらっしゃる多くの方々にお会いした旅でした。

学校のある期間は本当に目まぐるしくて、追われるように毎日を過ごしています。そんなに忙しくなったはずはないんだけど?と思ってよくよく考えると、情報過多ゆえの忙しさが増えたのではないかと、そこに行きつくのです。旅の間、いろいろ考えさせられました。考えさせられ、それゆえ反省させられる事も沢山あり、でも実はやらなくてはならない事がはかどらない事実にも直面し、それでどぉっと疲れが出てぼぉっとしている時間が増えています。

まぁ今思えば、どうしてあんなに頑張れたんだろうと思う位、昔は頑張れていたんだと思います。今はとてもできない、という事に気付き、少しは人間らしくなったのかもしれません・・・。

それはともかくと、いつの間にかアクセスカウンターが120000超えていました。しばらくパソコン開けられないまま、いつの間に?という感じです。なかなか更新しないのにいつも見て下さる方々がいらして、本当に嬉しく思います。ありがとうございます。今度ともよろしくお付き合い下さい。

明日からは例年お手伝いしている子供さん達の合宿。子供さんの可能性の大きさには驚かされる事が多々あり、はじめの一歩の大切さを実感させられます。ちょこっとでも何かお役にたてればいいなと思いますし、きっと自分も初心に帰れる事と思うのです。

暑い日がまだまだ続きますが、夏バテと熱中症にはくれぐれもお気をつけて・・・。


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