ひとりごと(2014年5月分)

2014年5月31日(土)             「違和感」

今日は実に暑い1日でした。何だか疲れた・・・と思ったら夏バテしたようです。いくら夏好きでもこれだけ急だとちょっとしんどい。まぁ初夏ではありますが、春の歌なぞさらっていると違和感を感じます・・・。

リサイタル前。ほぼ半月強、くらいでしょうか。いろいろな事に目をつぶってピアノに向かう事に集中出来るようになり、そうなれば漠然としていた「どう弾こうか?」という事がまとまり始め、どんな練習をどういう順でしていけばよいのかがみえてきます。それと同時に、よく寝られるようにもなります。昔は寝る時間を削って練習するという事ができ、「今日は全然さらえていないから夜中に全プログラムを通しておこう」とか、結構そういう事もしていましたが・・・今はさすがに無理。規則的な生活と言えるかどうかは?ですが、どうにか睡眠時間を確保しています。

でも今回は、いろいろな事がいつもと何か違う気がします。本来は、毎回違って当然。いつもと同じだと安心でき、いつもと違うと不安、というのも変ですが、いいのかこれで?と「主観的な自分」に「客観的な自分」が問いかけながら過ごしています。共演相手がいればお互いにお互いを見ているし、何かあっても一緒に考える事が出来ますが、ピアノはそうはいかない・・・。

まぁただ練習しているだけではなく、いろいろな事を考えたりもしていると言う事なのです。しかしさすがにそれを文章にするだけのエネルギーがないというか、それよりもやはり当日に向けて演奏の方に時間を割きたいので、大した事が書けずごめんなさい。気まぐれにまた何かを書く事がないとは言えませんが。

5日のリサイタル、当日券も出ますのでぜひお出かけ下さい。直に聴いて頂いてこそお伝えできる事があり、良くも悪くも生身の自分がそのまま出ていると思います。どうぞよろしくお願い致します。

それにしても日が長くなりました。夜は19時頃まで明るいし、朝は4時に明るくなっている。夏至までまだ大分あるはずなのに・・・?




2014年5月30日(金)             「枇杷」

このところ毎日暑いですね。本当に5月なのか疑わしい・・・。

いつしか知らぬ間に生えてにょきにょきと枝を伸ばしていた枇杷、数年前に1度実をつけてそれがたいそう美味しかったのですが、その後は全く花が咲きませんでした。枇杷の樹はとても収穫できないような高いところに実をつけている印象があるので、毎年剪定をしていたのですが、それが枇杷としては気にくわなかったらしい・・・。昨年剪定をやめたら、今年はちゃんと実をつけてくれました。ぎりぎりまで樹で熟させようとしたらカラス?に1つ食われたので、慌てて収穫して食べてみたのですが、これが大変美味!ただ甘いだけでなく酸味とのバランスがよく、小粒ながらも満足のいく出来でした。

そして久々に仲良しのご近所ネコちゃんに遭遇。午後の日射しの強い中、日陰を見つけて来てくれたようでした。今日は夕方にもまた会い、ゴロゴロすりすりと寄ってきてくれたので、しばらく一緒に遊んでいました。

という気晴らしを挟みながら、練習が割とはかどった1日・・・。



2014年5月26日(月)             「鳩の便り」

あっという間に前回より10日経っています。今から10日後と言えば・・・?

先日、大きな場所をお借りして1回目のリハーサル。正確に言えば「まだとてもとても」という状態と分かっていながら、そのあたりの日程に強引に入れています。これは、いかにできていないかを自覚して、その後の練習にはっぱをかけるため。テンポが定まっていないもの、そして指のコントロールが効かないもの、これはまだまだ弾けていないという事が一発で分かります。そんな事を悠長に言ってもいられず、必死のパッチでさらう今日この頃です。

さてシューベルト。聴くのは好きでも、本当に昔は大変でした。風に吹かれるかの如く、鼻歌を歌うかの如く流れる旋律。あのナチュラルさが出せないのです。何となくそれをイメージ出来るようになってきても指が言う事をきかない、そんな時代もありました。今さらいながら、昔出来なかった事が少しは出来るようになったかなと思い、ふと思い出した出来事があります。

学生時代、お友達の歌曲の伴奏もよくさせて頂いていたのですが、ドイツ・リート(歌曲)の公開レッスンが学内であり、一緒に出させて頂く機会がありました。先生はドイツ・リートのエキスパートの素晴らしいピアニストの方で、歌の方についてももちろんですが、ピアノの方の表情の付け方について実に細かく丁寧に教えて下さいました。その時の曲は、シューベルトの歌曲集「白鳥の歌」から、あの有名な「セレナード」、そして最終曲の「鳩の便り」。

中でも印象的だったのは、8分音符の扱いとペダルに関してでした。どちらの曲も8分音符の切り方、それが何拍目なのか、表拍なのか裏拍なのか、どんなハーモニーなのか、それによって強さも音色も長さも微妙に変わる。ペダルも他の音との兼ね合いで使えたり使えなかったり、でもペダルに惑わされるのではなく、イメージに基づいて各音のニュアンスを決めてゆくという事。ちょっと今ゆっくり考えて書く時間がないのでおおざっぱな言い方になりますが、あぁここまで考え抜いて音を作っていかなければいけないんだ〜と、いい意味でショックを受けたのを覚えています。その公開レッスンの後、あぁでもなくこうでもなくといろいろ試して少しはましになりましたが、耳の中に残るあのイメージに近づくには自分の指のコントロール力が足りなくて、愕然としました・・・。

あれからん十年が経ち、今思えばあの時の経験もひとつの転機だったと思うのです。独りでピアノを弾いているだけでは決して気付けない事に気付かせて頂いた、ありがたい機会だったなぁと。人は独りで生きられないのと同じで、本来音楽も人と一緒に演奏するもの。伴奏や室内楽などで、相手にわかりやすく(音楽で)伝え、そして音楽で一つになれるように、と考えるところから、自分の表現の引き出しも少しずつ増えてきました。

で、シューベルトでしたっけ。

シューベルトを弾いていると曲の中に絶望や孤独を強く感じる時があります。今回弾くソナタ、これはあの力強い傑作「さすらい人幻想曲」のすぐ後に書かれたものなのですが、キャラクター的には真逆と言っていい位、寂しさに身がつまされるような想いがします。逆に(というべきか?)憧れを強く感じさせられる時もあります。生涯最後に書かれた歌曲と言われている「鳩の便り」、この曲が憧れに満ちている事に何かホッとさせられます・・・。




2014年5月16日(金)             「鼻歌」

お久しぶりです。

実際にはそんなに経っていないのですが、なんだかそんな気分。最近は20日以上空く事も結構あるので・・・。

さて、マスクをしないで外を歩けるようになったのもこの数日の事。やっと、苦しい花粉のシーズンが終わりを告げつつあります。それにしても最近は暑い日が多いっ。例年より季節を先取りしているかのようですが、梅雨に向けていいお天気の日もだんだん減ってくるんだろうな。そう思えばこそお天気の日は貴重です。

と言ってもやっとやっと曲目解説が書きあがったところで、晴れたとしてもどこかに出かけられる訳ではなく、極力家でさらうようにしています。例年、曲目解説には本当に苦しめられています。終わってみると何があんなに大変だったんだろ?と思うのですが、限られた字数の中にお伝えしたい事をまとめるのは至難の業。例えば去年の展覧会の絵や映像1集などは情報も書きたい事も多すぎて、何を削るかに苦労しました。今年の曲だと情報がえてして少なく、まず資料集めに苦労し、それをどうまとまった文章にするかで苦労しました。気をつけないと箇条書き、もしくは「・・・でした。・・・でした。」みたいになってしまうし。

ま、それはともかく、どうにか終わったので、これからやっと弾く事に時間を多く取れそうです。リサイタルに向けて準備していて、一番気が楽になるのが正にこの時期。本番まで間に合うのか目処が立たなくても(?)、ピアノを弾く事に沢山時間をこれから使えるんだ!と思える事に意味がある。気になる事が頭の中から消えて、初めて集中モードに入れるのです。

リストという作曲家、ひそかにメロディーメーカーだなと思っています。普通には技巧的なイメージが定着しているような感がありますが(そういう曲も有り)、美しい旋律を自在に操っているというイメージの方がむしろ強く、私にはパガニーニと重なってみえます。ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾだったパガニーニの作品、超絶技巧の難所と難所の間に、美しい旋律を歌えるところが用意されているところがあります。ヴァイオリンのレッスンについてゆくと、「パガニーニはイタリア人だからオペラのアリアのように歌って」とご指摘がある事も多いです。リストはパガニーニの演奏を聴き、「自分はピアノでのパガニーニみたいな存在になる」と言ったそうですが、歌の部分まで大きく影響を受けたのでしょうか・・・?

リストの場合、旋律はゆるやかなテンポで歌われ、フレーズがとにかく長い。ピアノは音が減衰する楽器なので、ゆるやかなテンポだとそれも計算に入れて旋律を描かなければならないのですが、1つ1つの音の音量音色、そしてテンポ・ルバート(伸び縮み)もうまく調整できると、フレーズがぴたっとはまります。

今は行き帰りの電車の中でも楽譜を広げて読んでいるのですが、気付くと鼻歌を歌っている・・・。
 


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