ひとりごと(2014年4月分) |
2014年4月30日(水) 「禅問答」 久々の雨。植物には恵みの雨でしょうか。学校に行くには、楽譜やCDでふくれた重いバッグ2つと傘、というキツイ条件。腕がますますたくましくなってきています。 4連投だとさすがに話題も尽きてきます。何を書こうか・・・。 お休みの日に、ここ数年来見ないふりをしていたというか、どうにも手をつける余裕のなかったものを、少〜しずつ少〜しずつ片付けています。本当は、練習とリサイタル関連の事務仕事をするために空けた時間でしたが、気になって気になって仕方なくて止む無く・・・。心の中のもやもやがずっと晴れない状態が続いていて、それは「やらなくてはいけないのにできていない」ものが積もり続けているせいだと分かっていたので、そのままにしておくのがしのびなかったのです。わずかずつですが、心の重荷は減ってきています。 でも、ふとした拍子に気付いてしまったのです。思っている事を心の中に押し込めないでちゃんと表に出していたつもりでしたが、どんな時も肩の力が入ったままだったと。あぁこれではしんどいはずだとやっと気付けたのでした・・・。 自分の事は思いのほか分かっていないもので、今自分が一番したい事は何か?とか、自分の状態は今どうなのか?とか、実は全く分かっていないのかも。人の事は割によく見える(ような気がする)のに、自分の事がわからないのが妙に歯がゆかったりするのです。でも人に頼らずに自分で何とかしなきゃと思ってしまうのも、ピアノ弾きの悪しきところ。 そういえば今朝、天国にいらっしゃるはずの師匠がレッスンをして下さいました。記憶があいまいですが、レッスンのお題は師匠の十八番の無言歌だったような気がします。目覚ましのベルに中断されて終わってしまいましたが、未だ肝の据わらない私を見ていられなくなってレッスンして下さったのでしょうか。昔と変わらず、先生の一言でがらっと全てが変わってしまう魔法のようなレッスンでした。 そして学校へ行ってレッスン。いつも必死に考えています。何をアドバイスするべきか、この人に必要な事は何だろう?と。師匠のような魔法の一言は決して出てこないけれど、大学を卒業した時にひとりで音楽を創ってゆけるように、その日までにその道筋を築くお手伝いができたらいいなと思うのです。前回のレッスンであっち方向から攻めた事を、今日はこっち方向から攻めてゆく、みたいな事はしょっちゅうで、でもいつも違う事ばかり言っている?と誤解されないように、結局言葉を尽くして話す事も多く・・・口が重いはずなのにホントよくしゃべる。道理で口が疲れるはずです・・・。 学生時代、よくレッスンにお伴して行った声楽の先生、その人に必要な事を暗示する何かを言葉少なに、ずばっと指摘なさる方でした。まるで禅問答みたい。レッスンを受けている友人は、沈黙の後の先生の一言をドキドキしながら待ち、その言葉の真意をつかもうと1週間ひたすらに考え、そしてあれこれ試していました。 そして自分の話。本当は言い過ぎるのはよくないかなと考え込んでしまう事もあります。その先生のように、重みのある一言を言えるような器ではないし・・・。でも「こうして」とこちらから一方的に言っている訳ではないし、言葉を尽くして話すのも、いろいろな方向からのさまざまな考え方があるという事を伝えたいから。相手によって何をどのタイミングで伝えるか、やっと最近考えられるようになりました。これが現時点での自分のスタイルですが、また年月を経て変わってゆくんだろうなと思います。 一番難しいのは、自分に対して客観的な目と耳を持つ先生になる事ですね・・・。 2014年4月29日(火) 「2014年のプログラム」 何となく避けて通っていたような感のある(?)今年のプログラムについて。 昨年20回目を何とか終え、お陰様でデビュー20周年となった訳ですが、本当にそんな長い間、毎年続けていたのかあまり実感がわきません。今まで曲を決して重ねず、毎年プログラムを変えてきたのですが、それはレパートリーを増やす必要性を感じていたから。学生時代は1つの作品に深く取り組むという感じで、それはそれで正に必要だったと思うのですが、これからはいろいろな作品に出会ってみたいし、もっと自分の引き出しを増やさなければと思ったのです。弾いてみなければわからない事があるのも分かり、思いがけず「出会えた」作品も幾つもありました。 というところで20年経ち、時を経て新たな気持ちで再度取り上げる曲も交えて今後は弾いてゆこうと、昨年から決めていました。2度目のチャレンジ曲も決めてあったのですが、いざプログラムを決める段になったら何だかしっくりこない。「今、正に弾きたい曲」ではない・・・。それで他の再演候補を考えたのですが、それはそれで新たな気持ちで取り組めるほど時間が経っていない気がして(10年前なんてついこの間)、さんざん考えた末に結局今回もまた新しい曲だけでプログラムを組んでしまったのでした。もっともっと自分が変わってからでないと、深みも何も出てこない気がします・・・。 しかし本当に今回は難航しました。ここまで決められなかったのは前代未聞の事。と言っても試験期間の一番忙しい時だったので、どうやって決めたのかさえ、記憶がない・・・。 手帳を見たら、ちょこっとメモ書きがありました。そうそう、何かひとひねりした曲ないかな?といろいろ探したのを思い出しました。さまざまな作曲家をリストアップし、その人の作でいけそうな曲、と思ったのですが、探そうとして見つかるものではないですね・・・。それがダメなら、メインの曲を決めれば何か降ってくるだろうと思いつつ、全然思い当たらなかった事も思い出しました。 ただ、モーツァルトは弾きたいなと最近ずっと思っていたのです。ピアノ・デュオでも毎年何かと弾き、伊賀さん青木くんのシリーズも昨年はモーツァルト、夏の子供さん達の合宿でコンチェルトも弾かせて頂きました。やっぱりいいな、余計な事を考えずに心から気持ちよく音楽に乗っかりたい、と。そしてもう一つはシューベルト。こちらはピアノ・デュオでのファンタジー、そして歌曲、昨年は念願だった岩の上の羊飼いも演奏させて頂けて、欲や派手さとは無縁のナチュラルな素朴な音楽、ここに戻りたいな、と。 この2人の作曲家の作品を入れるとなるとプログラムがかなり無難な路線に行きそうで、それでひとひねりしたものを探したのもあります。でも全くつながりのない作品を組み合わせるのもどうかとも思い・・・。そこで何となく気になりながらも、今まで機会のなかったメンデルスゾーンの無言歌が浮上してきました。この3人だったら一緒にプログラム前半。いろいろ弾いてみたりしながら、時間も計って考えました。 シューベルトはD784のイ短調ソナタを。モーツァルトのソナタも一瞬考えましたが、時間的にモーツァルトとシューベルトのソナタ2曲だけとなってしまい、そんな前半はちょっと重いし、形式的な変化が乏しい。どうにか無言歌も入れる事を考えて、モーツァルトは短めで明るいデュポールの変奏曲で始める事としました。前半の残りの時間に無言歌が何曲入るか、何をどういう順番で入れるか、これを決めるのがまた難しくて結局48曲全部弾破。その中でどうしても弾きたいものをピックアップし、調性的なつながりも加味しながら選んだのが今回の6曲。フラット系の調性の曲も幾つか気になったのですが、つながりがうまくいかず外したものもあります。年代順だとメンデルスゾーンが最後ですが、前半最後にソナタを持ってきたくてシューベルトを後ろにしました。 こうなると後半のメインがどうなるか、ですが、これは考えに考えに考え・・・数日して突如降ってきました。それがリストの詩的で宗教的な調べ。なぜかリストは全く頭の中になく・・・数年前、院の学生さんと一緒に勉強した曲。まさか自分が弾く事になろうとは、その時全く思いもしませんでした。全10曲弾いたらそれだけで一晩のプログラムなので、弾破はしなかったものの、聴いてみて選びました。 こんな感じで必死にひねり出し、結局、10数年前の名曲シリーズみたいなプログラムとなりました。例年に増してかなり聴きやすいプログラムかと思います。今年は木曜の晩ですが、豊かで多彩な音楽で週半ばのお疲れを癒しに、ぜひぜひいらして下さい。どうぞよろしくお願い致します。 アンコール・ピースみたいな曲は実はとっても難しい。先日夢の中に出て来て下さった今は亡き某ヴァイオリ二ストの先生が、いつもそうおっしゃっていましたっけ。粋に素敵に弾けるようになりたいものです・・・。 2014年4月28日(月) 「シューベルトのピアノ」 さわやかなお天気とはうらはらに、花粉(多分ヒノキ?)に苦しめられる度合いが強まっている今日この頃。いつもの年なら、マスクが暑いと思う頃に花粉の季節も終わるので、そろそろかなと思っていたのですが・・・記録を見ると昨年マスクを外せたのは5月終わり頃。あと1ヶ月も続くの〜?と憂鬱になっています。それ位今年は季節を先取りしているということでしょうか。 今月初めには富山に行ってきました。フォルテピアノでいつもお世話になっている竹田さんのところへ。ここ数年は夏に、フォルテピアノとモダンピアノの弾き比べコンサートをさせて頂いています。先月、シューベルトのファンタジーに向き合った事から、シューベルトの時代のピアノを弾かせて頂きたいという気持ちがむくむく。以前に竹田さんのところにお邪魔させて頂いた時、シューベルトの頃のピアノ(レプリカでない本物!)を触らせて頂いたので、今年はそのピアノでコンサートをさせて頂きたいとお願いしました。ありがたくもお許し頂き、念願かないそうなのです。 最近何度かコンサートでお世話になったモーツァルト時代のフォルテピアノ、タッチとか黒鍵(フォルテピアノでは白鍵ですが)の幅や長さ、音色音量に大分慣れてきましたが、今度のフォルテピアノはまたまた大分違います。全てゼロからやり直し。という訳でピアノに慣れさせて頂くために来て、結局1日中ピアノと戯れていました。 本番終わったばかりのシューベルトのファンタジー、やはりモダンピアノで弾くのと大分感じが違いました。タッチはもちろんですが、一番感じるのは音色の違い。何と形容すればよいのか・・・難しいです。今度弾くシューベルトのソナタとか即興曲、時代も近いかなと思ってメンデルスゾーンも弾いてみました。 ふと思い出して、野ばらのピアノ・パートも。いつ弾いても、楽譜のシンプルさ故にどう弾けばよいのか迷い、どうしてもさまにならないと正直苦手意識を持っていたのです。が、このピアノだとあの可憐さが出せる。ペダルなしでも余韻が微妙に残るので、最初の8分音符の切り方をどうしようかと変にかまえる必要がないのです。他のシューベルトの曲もそうなのですが、モダンピアノだとちょいと響きが重く感じ、シューベルトのナチュラルさを出すのにいろいろ工夫が必要。だけどこのピアノなら、ありのままの音がシューベルトそのものを物語っているかのように思えたのです。 ちょっと解体して中を見せて頂きました。モーツァルト時代のフォルテピアノより楽器は大分大きいけれど、それに似合わずシンプルな構造だからナチュラルな音が出るんですね。大切に大切に扱って弾かなくちゃと思う位、えらくシンプルなつくりでした。ピアノが進化を遂げている姿をこうやって見せて頂くと、モダンピアノって本当にいろいろな事ができるんだなとつくづく思います。それを生かしてこそモダンピアノ。だからといってシンプルなフォルテピアノは何もできないということではなく、楽器と仲良くなってこの楽器の一番いいところを聴いて頂こうと、弾く側も工夫や努力をする。楽器がいつも以上にぐっと自分の近くにいてくれる位にならないと・・・。 という訳でこのコンサート、7月にいつもお世話になっている長野のペンションぷれじ〜るさんでさせて頂く予定。現在細かい事を詰めている真っ最中です。決まりましたらご報告致します。 富山では白エビ、そして旬のホタルイカがとても美味しかった(東京では決して食べられない)。ご馳走様でした。そして東京でゆっくり見る時間がなかった桜が、こちらでは満開間近でした。 さて、昨日書いた名前分からずの白いお花、トリテレイア・ヒアシンシアナというそうです。よぉく見ると、小さな花の中に細い緑のラインが入っていて、なかなかおしゃれ。子供の頃は図鑑を端から端までめくって探していましたが、今はネットで見つけることができるから便利便利・・・。 2014年4月27日(日) 「花の香り」 5月のようなさわやかなお天気続き。いつしか世の中は連休に入っていたようです・・・。すっかりお待たせしてごめんなさい。 新学期が始まり、そして授業期間に入って早3週間が経ちました。毎年の事ながら、この時期は落ち着くまでが大変です。学校の事はもちろん、その他も何だかいろいろやっていました。どこから手をつけるべきかわからない状態が、この連休で少しずつ減ってきて心の負担も軽くな・・・る程減ってはいませんが、そんな事を書いても仕方ないので今日は気楽な話題を。 いつも遊びに来てくれるご近所ネコちゃんがいます。その内のヒトリ(一匹という感じではない)、そのネコちゃんに数年前初めて会った時、暑い夏のある日の夕方、ブッドレア(フサフジウツギ)の花の下で寝そべっていました。風が吹くとそのあたりに甘い香りが漂うのですが、その後何度も同じ場所にいるのを見ました。ジャスミンの咲く季節にもすぐ近くに居たり、パンジーの花に鼻を近づけていたり・・・どうやらお花が好きなようです。昨日は、名前分からずの白い花が自生してわんさか咲いているすぐ横に、寝そべっているのを見つけました。ごろごろすりすりじゃれるところは普通ですが、花好きな不思議なネコちゃんです。 春は花の香りでいっぱいになる季節。香りの強い花の陰に隠れているけれど、シクラメンやチューリップ、山吹などもちゃんと、それぞれ独自の香りを放っています。そして1年に1度、忘れることもなく花を咲かせてくれる。当たり前のように思うけれど、でもそれはよく考えるとすごい事だなと思いながら、最近お花の手入れをしています。この数年はそこまで丁寧にできなくて・・・ちょうどこの時期しっかり見る余裕があって、今年は葉っぱが穴だらけにならずにバラを見る事ができそうです。とは言っても油断は禁物。 明日は音楽の事を書くつもりです・・・。 |
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