ひとりごと(2013年9月分) |
2013年9月30日(月) 「アカンサス」 9月は、月末までにどうにかしなければいけないモノが多いもの。今年の秋の忙しさは夏休みから恐れていたもののナンバーワンですが、最近は余計な事を考えないようにしているので、変に苦しむ(?)事もない代わりに間に合っていない事も多いはず。そのしわ寄せが周りの方々にいっていないか、ふと気になりました。いろいろお返事出来ないままになっているものも多いのですが、こんな状況なのでごめんなさい。優先順位をつけて、追々手がけて行く事にします・・・。 そもそも今年の秋はかなり時間的余裕が見込まれていたので、実はお勉強しようともくろんでいたのでした。ピアノ・デュオの相棒は忙しい時間の合間をぬって本当によく勉強する人なので、自分も勉強しないと置いていかれるなぁとちょっと危機感を感じたのもあり・・・。6月頃に銀のタマゴコンサートシリーズが突然持ち上がった事で、いつの間にか秋はいろいろなコンサートで弾かせて頂く事になり、予定は180度変わってしまいました。自ら望むだけではできないありがたい企画も多いので、それはそれでよし、と。ただ、体は一つしかないので無理な事は諦める。毎日優先順位をつけてやるべき事をやっていく。というルールを自ら定めました。 ま、それはともかくと。高校時代の事をふと思い出しました。当時、アカンサス・コンサートという放課後開演のコンサート・シリーズがあり、在学中に1度は出演する事になっていました。ソロはいけないという決まりはなかったように記憶していますが、皆が選ぶのは室内楽。しかし授業での室内楽のレッスンはまだないので、ほぼ自己流ながらその曲が好きで好きで仕方ないオーラ全開で弾いていたり、先輩に聴いてもらったアドバイス頼みだったり。室内楽のイロハを学ぶ前に室内楽は楽しいという事を知ってしまって、手当たり次第にイイ曲を探してはメンバーを募って弾いてみる、そんな事が楽しいお年頃でした。 今思えばよくそんな時間も心の余裕もあったなと感心するのですが、やろうよと言われれば喜んで参加し、ピアノ誰かいない?と言われればこぞって首を突っ込んでいました。シューベルトの鱒、チャイコフスキーの偉大な芸術家の思い出、フォーレのピアノカルテット1、ブラームスのピアノトリオ1などなど・・・こってり系が多いかも?大学院で室内楽の基礎からみっちり教えて頂いた(「室内楽は寝食共にする位でないと」とおっしゃった)先生がお聞きになったらどう思われるか、というラインナップ。でも本当に楽しかった。現在のこのスケジュール、高校時代に分不相応にもあれやこれやと室内楽を同時進行していた時とまるで同じだなと、懐かしく思い出しています。 いよいよシルバー・マウンテン・コンサート・シリーズ、明日から始まります。お祭り騒ぎなのか、それとも?ドキドキ・・・。 2013年9月29日(日) 「ヘリオス・アットホーム」 富山公演もお陰様で無事に終え、帰ってまいりました。 土曜の夜、ちょっと遅めの開演でしたが、遠方からのお客さまもいらしたようです。フォルテピアノとピアノを囲むように並んだ客席、今回はいろいろな年代の方がいらして下さいました。「ヘリオス・アットホーム」のタイトルにふさわしいギャラリー・スペース、フォルテピアノの親密であたたかな響きがちょうどよく広がるような広さ。今回は楽器のすぐ近くで聴いて頂きましたが、サロンでのコンサートって昔もきっとこんな感じだったのでしょうか。 さて、こちらを出発する時にはまさに台風に脅かされていた時。いつものゴロゴロ(キャリー)にカバーがないけど、ひどい雨だったらどうしたらよいか?とか、学校でレッスンして会議もあってその足で行くのに、雨にどう濡れてもいいという服装ではまずくないだろうか?とか、結構真剣に考えていました。そもそも前日学校を出る時、もし暴風警報が出て学校が全て休講になったら、重いので学校に一晩置いて翌日持って行くつもりの連弾の楽譜、これを取りにわざわざ台風の中来なくてはいけない、だから一応全部持ち帰ったのです。図書館で借りた楽書も含め、本気で重かった〜。そこまで考えていたのに翌日は雨も殆ど降らず、気抜けしました(実はそんなちまちました事を結構考えているものです)。 レッスン終えて即刻学校を出て東京駅に向かい、そのまま車中の人に。それでも着いたのは20時半。富山はなぜか遠いといつも思うのですが、北陸新幹線ができたら東京から2時間ちょいで来られるらしいのです。そうなる日が待ち遠しい。 越後湯沢の乗り換えで寒くてブルブルしていました。高岡に降り立っても同様に寒かったのですが、どこからかふゎっといい香り。何だっけこの香り?と思ったら、ちょうどキンモクセイが開花した頃でした。東京ではまだつぼみも見えないと思っていたので、ちょっと嬉しい気分。 翌日は会場とは別の音楽室にフォルテピアノとモダンピアノを置いて頂き、そこでずっと練習。と言っても、メインは久しぶりに戯れるフォルテピアノの方。タッチを確認し、表現を詰めていったらあっという間に時間が経ちました。 当日は会場にてずっとリハーサル。前日殆ど弾いていないモダンピアノは丁寧に音作りをし、そして前日弾いたフォルテピアノも会場が変われば響きも変わるので一通り弾き、カデンツァは何通りもパターンを変えてお試し。これは結局プリモ(第一奏者)とセコンド(第二奏者)の掛け合いで行く事にしたので、相手が全く予期せぬ和音にいったり転調したりしても、顔色を変えず飄々とつなげてゆくのが目標です。とは言っても作曲家相手に敵う訳もなく、毎回毎回違うパターンで軽々と返され、それに苦し紛れに応じているように聴こえるのかな?と思・・・う暇もなく、どきどきびくびくしながら弾いています。 ちょこっとした時間を狙って、次のコンサートのモーツァルトのトリオや、レッスンで弾いてもらっているベートーヴェンのソナタなどをフォルテピアノで弾いてみました。やはり楽器が変わることで一発で解決する事ってあるのです。楽器固有の音が正にその表現をつくっているのだなと思わされた瞬間です。先日のモーツァルトの合わせの時にあーでもないこーでもないと皆で検討した事は、この楽器で弾けばなんという事もない事なのですね・・・。 リハーサルに夢中になっていたらお昼の時間を逸し、遅いおやつの時間に食べに行きました。本番前は通常殆ど食べないのですが、なぜかこの日は突然おなかが空いてエネルギー切れし、待ったなし!状態。戻ってきてもう一度だけフォルテピアノをちょこっと弾いたら、あっという間に本番となりました。追われるように着替え、しゃべる段取りを確認しながら会場に向かい、いつの間にかお客様の前に立っていました。 今回も相変わらず夢だったのかウツツだったのか、残念ながらあまりはっきりとは覚えていません・・・。が、初めて弾く曲のように心をいったん真っ白にして、改めて曲の表現について考え、気持ちを込めて演奏しました。休憩時の竹田さんの楽器解体の折、お客様がほぼ全員楽器の周りに集まり、食い入るように見つめていたのが印象的でした。音を聴いたすぐ後、中を見られるのはやはり楽しいでしょうし。 今回お渡ししたプログラム、手書きでコンサートに寄せる思いを書くスペースがありました。自筆のコメントは会場入り口に飾られるとのことで、読みやすいように大きめの字で丁寧に2人で書きましたが、人の手を伝って人から人へ届く思いを大切にしているコンサートの有り方って素敵。スタッフの皆様の思いがこちら演奏する側にも届きました。ぜひ続けて頂きたいですね。終演後もお客様にお気軽に声をかけて頂き、それはとても嬉しい事でした。 思いつくままにつらつら書いたら箇条書き風になってしまいましたが〜今回も充実した、気持ちのよい滞在でした。そしてコンサートもあたたかい気持ちで迎え、そして終える事が出来ました。いらして下さったお客様、竹田楽器様、長期間に渡って準備して下さったスタッフの皆様、本当にありがとうございました。 番外編ですが、やはり富山のお寿司は驚きの美味しさでした。もちろんシロエビも・・・。 2013年9月20日(金) 「ピアノも目覚める」 どたばたから始まった新学期も少し落ち着いてきました。出欠登録のシステムが分かっただけで大分気は楽。しかしパソコンに向かうべき活動時間帯が、システムのメンテナンスの時間とばっちり重なっているのは誤算・・・。 先日銀のタマゴ(学園のシルバーマウンテンの事です)でリハーサルをしてきました。レッスンを朝9時から午後までみっちりした後、デュオとソロ両方を続けて予約していたので計6時間分。始める前は「結構疲れているのに今から6時間も?」と正直思いましたが、弾き始めたらあっという間。そんな貴重な時間は休む間を惜しんででも弾くべき、という意識が染みついているのには、我ながら苦笑です。建物の入り口一体の壁面はガラス張り、人が通る通路なのに、実にちょうどいい目の高さに覗き窓があるのです。珍しいのか、人が入ってきては覗いていきます。 ホールでリハーサルという機会はよく有り、本番当日の事もあれば、近々本番を控えていて練習として使わせて頂く事もあり、新品やしばらく休養していたピアノに起きてもらうための弾きこみをさせて頂く事もあります。どんな状況であれ、ピアノとホール、両方の響きに耳を澄ませて弾き方をあれやこれや変えたり、目覚めて少しずつ鳴りが戻ってきた響きに耳を傾けたり・・・集中してしまえば全てを忘れます。ピアノが「あぁぁ良く寝た〜」と伸びをして、「さぁ鳴らしてみるかっ」というように目覚め、だんだん音が伸びて色がついていくあの時間が好きです。 華やかな響き、深い響き、温かな響き・・・ピアノも個性があるので、どれもこれもが美しいきらびやかな音に変化していく訳では有りません。個人的には味のある音といいますか、音色に深みがあって、いろいろな音色を出せる可能性を秘めているピアノが好き。先日リハーサルをした1階には2台ピアノが置かれていて、1台は以前より学園のどこかに置かれていたもの(という話)、もう1台は新たに運び込まれたもの。新しい方はまだ鳴ってくれないという話を聞いていましたが、目覚めてくれればいろいろな可能性があるのではないかと思い、そちらをずっと弾いていました。ピアノも人の一生のように時間の流れの中でいろいろな経験をして、音も変わっていくはず。長い一生の中、2013年9月に集中してリハーサルで入れかわりたちかわり弾きこんだところで、全盛期が訪れる訳はないのですが、それでも少しずつ何かが変わっていくのを感じていますし、約半月後の本公演でどんな音に育っているか?を楽しみにしたいと思います。 それにしても、ソロの曲を弾くのはどれ位ぶりだか。今年6月の再演となるソロの方のプログラムでさえ、考えてみたら本番終わってから初めて弾いたという有様。でもお陰でまっさらに気持ちに戻れました。弾きながら、本番演奏中や練習過程に考えた事やってみた事、あれやこれやがよみがえってきます。いろいろな事を後回しにして雑念を振り払い、ピアノだけ弾いていられた幸せな時間がわずかに有った事も思い出しました。 気付けば来週は富山。数日後からモーツァルトの室内楽の合わせも始まりますが、譜読みがまだだと気付きました。せっかくフォルテピアノを弾かせて頂けるんだから、室内楽の楽譜も富山に持参してちょこっと弾いてみようかな・・・。 2013年9月8日(日) 「銀のタマゴ」 なんとまぁ長いようなあっという間のような、そんな1週間でした。日常生活って、思い出せばこんな感じだっけ。 夏休みをはさんで学校の様子ががらっと変わり・・・どころではなく、全く新たな環境に飛び込んだ位の違いを感じています。事務棟そのものがお引っ越し、そして事務関連の手続きも変わり、ひとつひとつ慣れるのに必死の1週間でした。同僚の先生方とも顔を合わせればそのシステムに関する話題となり、分からない事があれば質問しに行き・・・。何かを変えるってエネルギーがいるのはもちろんですが、事務方の職員の皆様はきっともっともっと大変な思いをされていることと思うのです。 それにしても本当に変わったなぁと、昔から思えば感慨深いです。こちらにつとめさせて頂くようになって確か12年目ですが、12年前と比べても随分と変わりました。実は遠〜い昔、私が学生の頃、とあるオーディション受けたのがこの学園内のホールでした。記憶は多少怪しいですが、ホールの周りは何もなくてホールだけがでんと建っていたイメージ。今となってはホールを取り囲むように校舎が建っているのですが、それはあの後建てられたものでしょう。最寄り駅も今でこそ綺麗で栄えている印象ですが、昔はもっと下町っぽい雰囲気に溢れていて、今と全く別の街のごとく。あの時、ン十年も後にご縁があってこの学園にお世話になるなんて、想像だにしませんでした。そしてこんな近未来的な建物が建つ事も。ご縁って不思議なものです。 新学期のあれやこれやと同時進行で、シルバーマウンテン竣工記念コンサートの準備もたけなわです。3ヶ月に300公演(!)という恐るべき企画なので、自分たちで動かねばならない事も結構あり、そしてここの建物が稼働するのも初めてなので予測がつかぬ事も多く、どうなる事やら。幾つか出させて頂く内の最初の公演はピアノ・デュオ。2人で動けるのはこれ幸い。何もかも抱え込んで「これって間に合う?」って悲観的に考えるのは私の悪いところなのですが、「何はともあれ、大切な事を忘れないようにしよう」と楽観的に大きくどどんと構えられる人がいるだけで、とりあえずプラスマイナスゼロになります。 公演の詳細、チケット情報も含めて大分埋める事が出来ました(コンサート情報のページをご覧下さい)。ピアノ・デュオはあと1カ月を切っていますが、関東初上陸のフォルテピアノの優しい響きをぜひぜひ聴いて頂きたいです。どうぞよろしくお願い致します。 数日前の話。正門を出たら、ちょうどそこに小さなお子さんを連れたお母さんが歩いていらっしゃいました。こちらを見て「大っきなタマゴ!」と叫んでいたのが聞こえて、思わず笑ってしまいました。一応「銀山」なのですが、確かに上部のラインはタマゴそのものです。 夏休みに入る前に見学会があって行ってきたのですが、その時は内装はまだもう少しというところでした。タマゴのラインが内部でどうなっているのか、未だよく飲み込めていないのですが、2階1階地下1階と3つ大きなリハーサル室があります。事務棟の入り口とタマゴの入り口は向かい合わせに位置しており、先日、夜帰る時に電気がついていたので吸い寄せられるように入りました。何気に覗いたら、ピアノがカバーをかぶって静かにお休み中。後で分かったのですが、その日に搬入されたようです。ピアノも旅をした後は疲れているはず。 10月のピアノ・デュオでは、いつも快く楽器を運んで貸して下さる富山の竹田楽器さんが、富山から楽器を運んで下さいます。ご自身も運転されていらっしゃるのでお疲れのはずですが、いつも楽器と、そして私たちのコンディションまでも気遣って下さる竹田さんには、心より感謝しています。今回は特に富山から川崎までの長旅となるので、フォルテピアノのコンディションをどう整えるかを考えて下さっています。なるべく演奏時と同じ環境でフォルテピアノを休ませてあげたいけれど、ここで毎日公演が続くので(使っているので)、それができるかどうかが少し心配。でもそれに関しては安心してお任せし、演奏をどうするかに集中しようと思っています。 いつしかエアコンをつけずとも済む位の気候になりました。夏の終わりを感じてちょっとばかりさみしくなりますが、それでもこれ位の方が体が喜んでいるのがわかり、夏の疲れも大分とれた気がします。それにしても忙しい夏でした。にも関わらず、秋はもっと忙しい・・・? |
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