ひとりごと(2013年3月分)

2013年3月31日(日)             「仕事の内」

長丁場だった講習会とコンクールも何とか終え、明日から学校モード。今年は全く「春休み」が無く、ぎゅぅっと詰まった毎日でした。どこかでまとまった時間が取れたら、したい事はたくさんたくさんあるのですが〜今一番したい事は、「休む」事。

それにしても、伝えたい事が伝えられないもどかしさでいっぱいの数日間でした。日本語だったら、伝えたい事を伝えられるどころか、一番ピンとくる言葉を的確に選ぶ余裕もあるのに。そんなこんなで何もできないのに頭はフル回転していたためか、今ここに何かを書こうとしても全然思い浮かびません・・・。

6月のリサイタルのチラシ等も半月前に出来あがっているのですが、それに向かい合うまでに至っていません。気付けばあと2か月。さきのデュオ・リサイタルも間に合う気がしないと思いながら、実技試験期間が終わってから1カ月ちょっとで一気に持ってきました。鼻先に人参をつりさげたり、お尻を叩いてくれる(?)相手がいたお陰です。今度はひとり。気持ちを強く強く持ちながら、脇目をふらずにまっすぐ突き進むだけの時間しか無いのです。

子供の頃から生活がピアノ一色になる事に恐れがあり、またいろいろな経験が自分の音楽に反映されると信じていました。だからこそ今の自分があるのですが、逆に時間に追われるようになった今は、全てを後回しにしても練習を最優先にする勇気を持たないといけない。さもないと大切なものを気付かぬ内に失うのではないか、そんな風に思うようになりました。しっかり休んだら、雑念を振り払って早くピアノに向かい合おう(と言葉にする事で自分に言い聞かせて・・・と)。

今は神経がとんがっていて、胃腸も疲れている状態。体調管理も仕事の内なので、まずは自然に目覚めるまでしっかり眠ろう。そして頭をからっぽにしてコトコトとスープでも作り、時間を気にせずゆっくり食べる。いつしか盛りを迎えている春の花々も見て回ろう。そしたらピアノにすぅっと向かえるはず。そんな風に過ごせる日をつくるのも仕事の内・・・。



2013年3月30日(土)             「お国柄」

ご無沙汰しております。ってまだ8日しか経っていないのに、思わずそう書きたくなるほど長い時間が流れたような気がしています。

今年はどうにか薬に頼らず花粉症を乗り越えようと思い、常にマスクの毎日ですが、最近かなりひどいです。スギよりもヒノキの方にひどい症状が出る事、すっかり忘れておりました。

今年は卒業シーズンに早々と桜が咲きました。3月に桜が咲くと自分の中の時の感覚が狂うのか、1年の中で最も大きな変わり目を迎えているという実感が薄れます。桜の季節は新しい年度が始まり、新たな人や出来事に出会うというワクワク感とちょっぴり不安が入り混じった、そんな不思議な感情の中で迎えるのが常です。時期がずれた事で今年はゆっくり桜を愛でる時間も持てないままですが、ちょうど今通っている会場にはたくさんの桜が植えられており、昨日は雪がひらひらと舞い落ちるような見事な桜吹雪を見る事ができました。

先週から例年の講習会があってレッスンやコンサートの伴奏をしており、その後始まったコンクールでも伴奏をしています。海外から受けに来た参加者もいて、片言英語とドイツ語で意思疎通がどうにかはかれているんだか・・・?昔自分が経験しただけに、気持ちがちょっとだけ分かるような気がします。心細さや不安も抱えているのか、廊下ですれ違うと何かしら質問が降りかかってきます。ちゃんと答えられるだけの語学力が無い事をもどかしく思うのですが、舞台では相手の気持ちにできるだけ寄り添って弾く事ができるか、それが自分に出来る事の全てではないかと思っています。

中国の学生さんが自国の作曲家の新曲を弾くそうで、その合わせをしましたが、なかなか興味深かったです。ハーモニーの扱いも、メロディーラインも、曲全体の雰囲気も、正に中国を感じさせられるものでした。お国の事を大して知らないのに、中国らしいと言っていいのかどうか分かりませんが、そういう特徴ってにじみ出てくるものなのでしょうか。私たち日本人が日本の作曲家の曲を弾いても、外国の方はきっとそんな風に聴かれるのでしょうね。

演奏スタイルもまた然り。出番の間の待ち時間は舞台袖でずっと聴かせて頂いていますが、もともと人の演奏を聴くのが好きなのでいつも楽しみ。演奏には不思議とお国柄が反映されている気がします。自分の事はあまり自覚は無いのですが、日本人らしさはもちろん出ていると思うのです。日本らしさって何だろう?と改めて考えると、分かっているようで分かっていないかも。

なんて事を考えながら、今日もあと1時間で会場に向かいます。いろいろな事も起きるものですが、相手の気持ちを考え、とにかく演奏に集中して最善を尽くすだけ。今日はどんな1日になるでしょうか・・・?



2013年3月22日(金)             「シューベルティアーデの如く」

東京・三軒茶屋での2日連続公演も終わって、いつしか1週間が経っています。そのわずかな間に春が3段跳び位の勢いでやってきた感じでしょうか。

お陰様で今回もたくさんのお客様をお迎えし、無事終える事が出来ました。いらして下さった皆様、サロンのオーナーさんご家族の皆様、調律師さん、受付や譜めくりのお手伝いの皆様、本当にありがとうございました。メールを下さった方々へ、大変嬉しく読ませて頂きましたが、全くお返事できていなくてごめんなさい。少しずつお返ししていきます。

2月半ばからこの公演のために、ほぼ全てのエネルギーも時間も費やしていたもので、その準備期間も終わってからの事も何だか現実味がありません。1つ1つの出来事も想いも消化しておさめてから先に進みたいタチとしては、それをじっくり味わわないのはもったいないとも思うし、地に足がついていないような心許ない状況にも思えるし・・・。練習の中で気付けた事や考えた事もいろいろありましたが、体がキツクて夜は動けなくなり、そのままどうにか体を起こして朝出かけるという毎日で、結局書けずじまい。満員電車と荷物の重さで肩や腕、背中がやられたのも初めての事でした。

今は時間の余裕がちょっと無いので、東京公演については改めて書く事にします。10日前に書きかけてそのまま残っている文があるので、それを手直ししながら長野公演を振り返ってみます。

長野公演のあった日は長い長い1日でした。雪の峰の原高原、朝ゆるゆるっと起きてブランチを頂き、リハーサルしていたらいつしか本番が迫っており、フルコースさながらのぎっしり充実の本番があり、終わってから荷物を詰めて美しい夕暮れの中に出発、帰ってきてからも翌日のリハーサルに備えて準備いろいろ・・・。

ペンションの玄関前には大きな大きな雪山を掘って作ったと思われる、超特大サイズの洞穴(大きすぎてかまくらとは呼べない)がありました。今回は雪靴を持って行ったのでちょこっとだけ遊びましたが、それにしても雪は深く膝まですっぽり埋まり、ジーンズはびしょぬれです。でも正直、洞穴に登れて入れて満足。

そういえば、先の熊取合宿も慌ただしい内に終わり、いったん帰宅して次に長野に向かうまでの滞在時間が22時間。この間にやらなくてはならない事が山のようにあって、最終の新幹線に乗るまで本とパソコンとプリンタにかじりついていました。峰の原でも練習の合間に、当日お配りするプログラムの曲目解説を書いており、入稿までリミット3時間!みたいな緊張感の中で過ごしておりました。本当に心臓に悪いです。

という訳で、峰の原高原でのデュオ・コンサートもお陰様で無事終わりました。今回は平日のお昼間という珍しい設定、前日にまた雪が降って道がどうなるか心配されましたが、シューベルティアーデ(シューベルトが友人たちと度々開いていたというホームコンサートのような集まり)の如く、あたたかな雰囲気に包まれたコンサートとなりました。いらして下さった皆様、本当にありがとうございました。

熊取合宿からずっと続いていた緊張がここ峰の原で少しほどけた気がしています。それはなぜか、アットホームな雰囲気のところには音楽が必要だと、まさに実感できる環境にいたからだと思えます。神経を研ぎ澄ませて集中し、お客様と一緒に1つの音楽を共有するという楽しみがあっていい。それと真逆かもしれないけれど、人の心やその場を和ませ、リラックスできる音楽もまた必要。もう何度か演奏させて頂いていますが、ペンションぷれじ〜るさんはそういう風に思わせてくれる素敵なところです。

折しもその日は3月11日。予想より時間がかかり、14時46分はまだ演奏中でしたが、祈りながら弾いていました。まだまだまだまだ時間が必要です・・・。

明日から、例年お手伝いしている弦の講習会プラスコンクールの伴奏に入り、それが終わればすぐ新学期。桜もそろそろ満開らしいですね・・・。




2013年3月8日(金)              「カノン風練習曲」

今日は大阪から更新します。

今週は大阪の熊取でずっと合宿していますが、こちらも数日前からいきなり暖かくなりました。と同時に花粉飛散量もひどく多く、家の中でもマスクをしてちょうどいい位です。ウグイスの初鳴きは遅れているようで、でも梅は満開、日射しは暖かく、春が近づいてきています。いつしかもう本番は来週に迫ってきているのですが、それに自分でも気付いているのかいないのか、とにかく出来る事を今するだけ、という日々です。

先週位から時々録音して聴いていますが、先週はまだまだとても・・・という感じだったのが少しずつマシになり、またテンポも落ち着いてきています。また、どこをどうしようというアイデアが浮かんでは試すの繰り返しだったのが、全体のバランスを考えて何をどれ位したらいいかが見えてきて、弾く前に何を考えて弾きながら何を気をつけるか、それも無意識のうちに少しずつ出来るようになってきています。本番半月前にあたる先週あたりが、果たしてどこまでできるようになるのか不安で、精神的に追われていた気がしますが、やはり心のゆとりが何においても一番大切なのかもしれないと思います。

先週の缶詰生活では、毎日その場所まで満員電車に揺られ、バッグも楽譜で漬物石並みに重くなり、また帰ってからいろいろする事もあって寝る時間もままならず、からだが限界まで頑張っていたのを感じていました。でも今はとにかく良く寝られるし、自然に囲まれて静かな環境で落ち着いて過ごせ、それが音楽にもいい方に反映されています。録音を聴いていても不思議とテンポもゆとりも違うのです。

今日はカノン風練習曲(とも言います)について、少し思った事を。

シューマンのカノン形式による6つの練習曲、これは弾けば弾くほど面白く、また良く書かれている事に感嘆し、また複雑さに手こずる曲でもあります。前にも少し書きましたが改めて書きますと、シューマンが当時開発されたペダルピアノという足鍵盤付きのピアノをとても気に入り、その楽器のために作曲しました。でもペダル付きピアノは今は無いので、ドビュッシーが2台ピアノのために編曲したものにより、人々に知られるところとなりました。原田さんはこの曲がとても好きで良く知っていましたが、私は2台用に編曲されたものも実は聴いた事がなく、今回初めてこの曲に出会いました。ちょうど曲探しをしていた時に、ビゼーが連弾用に編曲したものがある事を知って、じゃぁやってみようかという事になりました。

カノンというのは、カエルの歌でおなじみの輪唱を思い浮かべて頂ければいいのですが、同じ旋律を少し後から追いかける形式です(詳しく説明しますと、全く同じ旋律でも音程を変えて追いかける事もあります)。旋律を追いかけるつもりで楽譜を見ると、2本の旋律と伴奏が入り組んでとてもわかりにくく、分析の段階で挫折しかけました。しかしバッハのフーガを好んで弾いている身としては、何としてもこれをきちんと理解したうえで弾いてみたい。という訳で何をしたか?というと「塗り線」。パイプオルガン用に編曲された楽譜を見つけ、それを元に2本の旋律がどこに入っているか調べて、色鉛筆を持ってきコピーの勉強用連弾譜にカキコキ。色鉛筆をつかうのもかなり久しぶりでしたが、そう言えばゴールトベルク変奏曲の各カノンを分析する時、やはり分かりにくくてこうやって塗り線した事、思い出しました。

シューマンはバッハの研究をしていた人ですが、バッハと大きく違うと思われた事があります。カノンのもととなる旋律の音域が非常に広い。非常に広いという事は、2本で追いかけっこすると旋律がよじれて絡み合う(音の高さでいうと、上になったり下になったりする)という事です。この曲の連弾ヴァージョンでは、1つの旋律が2本の腕を渡り歩くのは当たり前、第一奏者と第二奏者を行き来することもあり、そこに伴奏になる音が入ってきたりし、色分けした楽譜はそれこそ複雑怪奇。2本の旋律の分かりやすさを優先して、原田さんが6曲ある内の1曲だけ、楽譜を打ち直してくれました。結局はビゼーが編曲したものを元に、弾きやすいように手の割り振りを変えたところもあります。それでも、音の高さが逆になっている楽譜を頭の中でひっくり返して弾く事もあり、あるいは両手を交差させて弾いたりする事もあり、頭の中の整理整頓がなかなか難しくもあります・・・。

しかし楽譜の複雑さとはうらはらに、聴こえる響きは本当に美しい。2本の旋律を追いかけるだけでも不協和音がいくつも出てきそうですが、綺麗に調和するだけにとどまらず、ロマン主義時代のカラー、そしてシューマンの個性がこれだけ盛り込まれているのはすごい事です。シューマンのピアノ曲というと私は作品番号の若い頃、才気爆発の生き生きとした作品をまず思い浮かべるのですが、中期のこの穏やかな曲調の作品もなかなか良いもの。できるならいつか1人で、そしてパイプオルガンで弾いてみたい、と密かに思っていますが、それはともかくと、もっともっと演奏されていい作品だと思います。

ちゃんと時間をかけてもっとわかりやすく、そして思っている事を伝えられるよう文章を練り直したいのですが、この後合わせが待っているのでこの辺でやめておきます。

あ、3月15・16日のピアノ・デュオ・リサイタルですが、若干数の当日券をお出し出来る予定です。急にご都合がつきましたら、ぜひいらして下さい。このサイトのコンサートのページでも、チケット状況は随時お知らせ致します。

今日で熊取合宿は終わり、いったん東京に戻って、今度は銀世界の峰の原高原に向かいます。雪遊びできるかな・・・?


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