ひとりごと(2013年10月分)

2013年10月31日(木)            「聴き比べ200年の旅の続き」

さてさて、今日は「聴き比べ200年の旅」の当日篇を。10月13日に書いた続きです。

本番の前々日にフォルテピアノを搬入、その翌日の夕方まで楽器と仲良くなる時間はたくさんあったのですが、時間はいくらあってもいいですね。演奏予定の曲の合わせはもちろんしていましたが、関係ないモーツァルトの他の曲とかも思い出しながらいろいろ弾いていました。今はモーツァルトの曲を思い浮かべると、必然的に耳の中ではフォルテピアノが鳴るようになりました。正直、明後日のモーツァルトの合わせをしていても、ここがフォルテピアノだったらこう弾くのに・・・と思うところが無きにしもあらず、です。

話戻して、本番前日の夕方に銀のタマゴ(シルバーマウンテンの事です)の地下にフォルテピアノを運び込み、本番まで待機してもらいました。本番当日も午後と夜のダブルヘッダーというキツキツのスケジュール。前公演は朝からリハーサル、14時開演、16時終演予定。私たちは16時から調律とリハーサル、18時開場、18時半開演。2時間の間にフォルテピアノと前公演で使われたピアノの調律とあらば、実質リハーサルは無いものと覚悟していましたが、昼間に地下のロビーでしっかり調律して下さり、モダンピアノの方も手際よく調整して下さり、ほぼ全曲リハーサル出来たのです。また演奏部のスタッフの皆さんにも本当に助けて頂きました。会場は前後どちら向きでも公演可能なのですが、なんと前公演では通常のパターンと逆向きのセッティング。そのままにするか全て並べ替えるか迷いましたが、いろいろ考えておいた事を変えてしまうと神経を演奏以外の方に回さざるを得ないと判断、客席など全て並べ替えて頂きました。その他全てに渡っててきぱきと事を進めて頂き、気がかりな事は何もなく演奏に集中出来、本当に感謝しています。

モダンピアノと比べるとフォルテピアノはかなり音量が小さいと分かっていましたが、実際客席から客観的に聴き比べた事はありません。録音機でレベル設定するとあまりにも違うのでびっくり。そんなフォルテピアノなので、耳をそばだてて聴いて頂きたいと考え、客席はゆるくフォルテピアノを取り囲むように並べました。楽器はフォルテピアノを手前に、モダンピアノを向こう側へ、後半のプログラムの時はフォルテピアノを脇へ移動。

気付いたらもうすぐ本番。着替えたのは開演15分位前?というどたばたぶりでしたが、ふと会場の中を見てみると竹田さんが調律されている中、お客さんがぐるっと取り囲んでいます。後できいたところによると、お客さんが質問ぜめにしていたとかしていないとか。皆さんがフォルテピアノとその音に関心を持って近づいていらしたのかなと思うと、何だか嬉しくなります。開演前のぴぃんとはりつめた空気とは全然違う、何だかホッとする光景でした。

・・・とここまで書いておきながら、いざ開演後の事はあまり記憶がないのです。客席が近いし、学内だからこそ知っている方々のお顔がちらほら。視線をどこに向ければよいかと考えながらしゃべり、そしてフォルテピアノを弾き・・・。そして休憩の前に竹田さんのフォルテピアノ講座。響きを聴いて頂くだけではなく、竹田さんの熱のこもったお話も含め、フォルテピアノを知って好きになって頂きたいという想いがあります。聴き比べのために両ピアノでトルコ行進曲を弾く羽目になったのだけは誤算でした(ここでは緊張したっ)。休憩中の楽器解体ショーではたくさんの方がフォルテピアノを取り囲み、部品に触り、また鍵盤に触れて音を出してみて、楽器にお近づきになって下さったようでした。

プログラム後半は勝手知ったるモダンピアノ。改めて楽器の性能も表現力も全然違うと感じたものです。記憶に間違いがなければ、2台あるスタインウェイの内、新しく納入された方を選びました。公演日の3週間前にはまだイマイチ鳴ってきていないと思っていたあのピアノも、いろいろな人が休む間もなく演奏し、いろいろな音色の引き出しも増えたし、楽器も鳴るようになってきていました。次にこのピアノを弾く時はきっともっと変わっているだろうな。楽しみです。

あれだけいろいろ考えて準備した公演も、終わってしまえばあっという間。終演後にあたふた駆け回っている内に楽器は搬出され、ありがとうを言う間もありませんでした。やっぱりもっともっと弾いていたかったし、プログラム前半だけではとても足りない・・・。

もっと書けそうな事がたくさんあったはずですが、時も経ち、他の公演もある内に記憶が薄れてしまいました。ここまで引っ張っておきながらごめんなさい。

というところで明後日はモーツァルトの室内楽、これまた名曲揃い、モーツァルト大好きな方でしたらたまらないラインナップだと思います。弾けば弾くほど難しいのですが、それと同時にやっぱり素晴らしいと思うし、音楽の喜びに溢れている作品というのもいいですね。当日券出る予定ですので、よろしかったらいらして下さい。

もう11月。遅ればせながらやっと来年手帳のリフィルを買ってきました。なかなか入れ替える暇がない・・・。




2013年10月30日(水)            「モーツァルト」

先日の「反動」の話の続き。時間を考えずに気が向く事をするのは相当効き目があるらしく、疲れも一気に取れましたが、その効力も切れてきた今日この頃。毎日荷物の重さが半端でなく(原因は大量の楽譜)、小さなゴロゴロを買わなきゃダメかな?と思案中です。聴き比べ200年の旅の続きを早く書きたいのですが、今日も無理なようです。すみません。

モーツァルトの東京公演も迫ってきました。静岡公演で1回本番を踏んでいる事もあり、前回の合わせより1週間ほど空いたのですが・・・あの時の感覚を忘れている?という危機感が少し。例えその前回公演がすごくうまくいっていたとしても、演奏は同じ事の焼き直しでなく、常に新鮮な気持ちで新たに表現し直してゆくもの。だからこそ少し忘れる位でちょうどいいのですが、この1週間もいろいろな事があり、新鮮に弾ける域を既に通り越してしまったかも。モーツァルトに絞って集中して行かないといけません・・・。

そう言えば!静岡公演の事を書いていませんでした(今ごろ気付くというのが正に今の状況・・・)。今回も三島の皆様のあたたかな拍手に支えられて、お陰様で無事終える事が出来ました。確かあの日は秋雨前線によるひどい雨が降っていて、ごぉぉというすさまじい雨音を初めて聞きましたが、それでもたくさんの方がいらして下さった事に心より感謝しております。ありがとうございました。それにしても三島公演はなぜかいつも天気が悪いです。ここに来るのも13回目だと言うのに、富士山が見えた事が殆どない。おまけに台風が演奏中に上空を通過したり、大雨に襲われたり・・・時期的なものなのかとも思うのですが、すっきりと晴れた青空と富士山を見られるのはいつのことでしょうか。

合わせに備えて三島公演の録音を聴いていたのですが、それで当日の事をいろいろ思い出してきました。今回はいつも以上にピアノが弾きやすく、モーツァルトを弾くのにもってこいの音色に仕上がっていて、それによって初めて出来た事がたくさんありました(毎回お世話になっている調律師さんのお陰です)。リハーサルで弾いていく内に、1つ1つの音に表情が殊のほかつけられる事に気付き、全ての音を大切にし、音の1つ1つに意味を持たせ、語らせたい、そう思って本番は弾いていました。

ハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンなど古典主義時代の作品は、曲の構造がシンプル、だからと言って変わった事をして表現をオーバーにすることなく、その魅力を描き出すのが本当に難しいです。(今は余裕がなく、言葉を選んで書くことはできないのですが〜)調性やハーモニーから感ずる色あい、適切なアーティキュレーションや音価から生まれる生きのいいリズム、などとても大切で、そこから生き生きとした音楽を表現する事ができます。大人になって、作曲家が楽譜に遺してくれた音楽の素晴らしさ、偉大さに気付き、それをどうにかして素敵に再現したいと思えるようになったからこそ、苦手意識が消えたのでしょう。昔の自分、多分10年前位までだったら、今回のようなオール・モーツァルト・プログラムは怖い、苦手ときっと思っていたはず。でも今回プログラムを聴いた時、できるかな?とか考えもしなかったし、ただ嬉しかったのです。

個人的感想ですが、モーツァルトってピアノ曲よりも人と一緒に演奏出来る曲の方が断然楽しい。室内楽然り、コンチェルト然り。音楽で会話できるからかな。会話と言えば・・・来月のソロ・リサイタル、今回はトーク入れるって宣言しちゃったけどどうしよう?と、ちょうど思っていたところです。ちなみにデュオのトークは打ち合わせもそこそこに成り行き任せですが、相手が居てくれる事によって思いもかけない方向に話が進んでいく事あり、話に詰まれば相手に振って助けてもらう事もあり、とにかく成り行きが読めない分、可能性も(?)広がります。そう思ったら、音楽においても自己完結するソロ曲よりもやっぱりアンサンブルが楽しい。

それにしても今年はモーツァルトにご縁があるようです。今回は弦とのアンサンブル、12月には管と一緒。夏にはコンチェルトを子供さん達と合奏させて頂いたし、先日はピアノ・デュオでも弾いたし、授業ではちょうどリートも弾いたところ・・・だったら来年は改めてモーツァルトのピアノ曲にきっちり向かい合うのもいいかもしれない、なんて考えています。

余裕がないはずなのにここまで書いている自分に唖然・・・。



2013年10月27日(日)            「全うする、そして9周年!」

すみません、ずっと更新できなくて。訳分からない状態の毎日(つまり佳境ですね)を送っています。

コンサート1つを「全うする」。コンサートを「する」でもなく、「開く」でもなく、「弾く」でもなく・・・休憩をはさんで前後で約2時間のコンサート、催し物としてでもなく、ただ楽器を弾く場でもなく、音楽と自分に向き合って、今出来る限り最良の音楽をメッセージとしてお伝えする。それら一連の事を全力でやり遂げる、というニュアンスで「全うする」という言い方を用いました。

もともと不器用なので、要領よくできず一つの事に時間はかかるし、物事を並行してやるのが苦手なタチです。思い起こせば、学校勤めをするようになってから、曲もメンバーも違うコンサートを幾つも同時進行で準備するのは初めてかも。1つのコンサートを全うするだけでも大変なのだから、今いっぱいいっぱいになっているのは当然の事。もちろん好きでやっている事なので苦にはなりませんが、体の疲れさえ気付かない位無我夢中になっている事にふと気付きました。

その反動かいろいろな事をしたくなります。先日のオフ、そもそもは事務仕事を片付け、そしてさらうために強引に1日あけたのでしたが、まずしたのは睡眠。何はともあれ良く寝たら少し元気になり、新たに来てからどうも触る気の起きなかったオーブンレンジの取扱説明書を開き、グリルで簡単な一品を作ってみました。デジタル家電や家電製品は使う気が起きるまでに時間がかかり、また使いこなせるようになるまで時間がかかります・・・。台風のせいで何度も植木たちを中に入れたり外に出したり、ついでに虫取りも。夜は適当に切り上げて睡眠に回せばいいのですが、翌朝早くても時間に追われたくない願望がむくっと起きてしまいます。美味しい紅茶を頂いたので、お湯を沸かして淹れてしばしぼぉっとティータイム。たまった新聞の一気読み・・・。

さっき片付けていたら、お借りしたものの未だ読めていない本を見つけ、ページをめくったら一気に読んでしまいました。読書もそう言えばしばらくしていないなと思ったら、読みたい願望がむくむく頭をもたげてきたのです。とある音楽家の方の半生が書かれたものですが、今している事や考えている事に重なる部分が多く、「全うする」事について勇気づけられた気がしました。

そう言えば!いつの間にかこのサイトも9周年も過ぎていました。

と、つらつら久々に書いてみたら又もや朝です。本来書きたかった事が書けなかったので又次に。やはり深夜にはえもいわれぬ魔力があるというか・・・。



2013年10月13日(日)            「聴き比べ200年の旅」

台風の襲来の影響だか何だか、真夏のように暑いのにすっきりとした秋晴れが続いています。昨日は強い風に乗ってキンモクセイの香りが漂い、また晩秋に咲くツワブキの蕾がたくさん首をもたげているのも見つけました。季節感が全くないって・・・。

またもや書くのが遅れましたが、お陰様で「聴き比べ200年の旅」のピアノ・デュオ・リサイタルも無事終わりました。いらして下さったお客様、フォルテピアノをはるばる富山から運んで当日レクチャーもして下さった竹田さん、お世話になった演奏部のスタッフの皆様はもちろんですが、たくさんの方々のご協力と想いが結集して成り立ったコンサートでした。心より感謝申し上げます。今思い起こしても何とも言えぬ不思議な時間、空間だったと思えます・・・。

勝手知ったる勤め先の大学でのコンサート、のはずですが、会場は竣工してわずか1カ月のシルバーマウンテン。入口の真前に立っている事務棟も同じく竣工1ヶ月で、その2つの建物に居る間は異空間に身を置いているような地に足がついていないような気持ちになります。コンサートに関しては建物が完成しない内からいろいろ考えねばならず、どこにどのように何を置けばよいのか、人の動線はどうなるのか、とにかく全く分からない状態から始まりました。その上、いきなりの3ヶ月間毎日3会場同時開催の300公演・・・ちょっと想像しただけでその大変さに卒倒しそうになるような、おそるべく壮大な企画。演奏部の方々のお仕事の多さはいかばかりか、想像を絶します・・・。

まず私たちが出会った問題。フォルテピアノは学内にないので、竹田楽器さんにお願いしてこのコンサートのために運び込んで頂く事になったのですが、コンサートが始まるまでどこに置くか?ということ。500キロに渡って遠路はるばる車で運ばれたフォルテピアノは、いきなりコンサートという訳にはいかず、まず落ち着ける場所に置いて休ませてあげなければなりません。という訳でコンサートは日曜の晩でしたが、金曜の昼にご到着。本来でしたらコンサート会場に本番まで置けるのが理想ですが、会場の銀のタマゴ(シルバーマウンテンの事です)では毎日3会場ともコンサートなので置けず、無理をお願いして2日間レッスン室をお借りしました。金曜の昼は私たちと学生さん2人で学園の正門の前でお出迎え。いろいろな人に「何してるの?」と声をかけられました。長距離をおひとりで運転された竹田さんとフォルテピアノ、ようこそ!という気持ちでした。

レッスン室のある建物の入口に車をつけ、フォルテピアノは台車に載せて部屋まで移動。今まで何度もお手伝いしているはずですが、いつも当たり前に通っている廊下やエレベーターのサイズがどうなのか、意外に分かっていないなと思い知らされました。3人いれば運べる重さですし、61鍵しかないので鍵盤の横幅もスリムですが、さすがに廊下から部屋に運び込む直角の曲がり角は無理でした。足を外してある楽器をいっぺん横倒しにしてから直角に曲がり、それから再度戻して足をねじ込みます。傷をつけないように大事に大事に運び込んでやっとホッと一息。ここで調律して頂いてから練習ですが、富山で演奏してから数日しか経っていないので、鍵盤のタッチの感覚は覚えていました。何よりも、いつも使っているこの場所にグランドピアノとフォルテピアノが並んでいる光景が不思議。廊下で向かいのお部屋のレッスンが始まるまで待っている学生さんも、珍しがってちらちら覗きこんでいたようです。

さてその翌日土曜日はなんと雨でした。前日は曇りながらもどうにかお天気が持っていたのに・・・。湿気は悪影響を及ぼすので、窓も開けず気をつけていました。しかし日曜日はこの建物全体が閉まってしまうため、今日中に銀のタマゴに移動せねばならず、雨やめ〜と思っていました。何と土曜日は3会場同時公演に加えて14時と18時半のダブルヘッダー。つまりお客様のいない時間は限られているので、必然的に移動の時間の決まってしまうのです。ここで再度移動を手伝って下さる学生さん3名、午前中から声掛けをして集まって頂きました。今度は銀のタマゴ裏の搬入口から。どこに置くのか一体安全なのか、下見もして考えに考え抜いた場所、それは地下の1階からつながる階段の真下です。お客様の通る場所は危険、ある程度の広さがあってしかし湿気がこもらないところ・・・地下の階段の前には大きな大きな(もしかしたら実物大よりも大きい?)白クマくんのぬいぐるみが置かれています。その白クマくんに守ってもらうべく後ろに衝立を置き、その後ろにフォルテピアノにはひっそりと隠れてもらいました。と言う訳でフォルテピアノは翌日本番直前までもう触る事は出来ません。よってこの後はモダンピアノの方の合わせをしました。

コンサート前々日と前日について書いたところで、続きはまた次回に。それにしても長い2日間・・・。


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