ひとりごと(2012年3月分)

2012年3月31日(土)             「エイプリル・フール」

今日はすさまじい春の嵐、だったようですね。朝から晩までスタジオにこもりっきりだったので実態を知らないのですが、電車が軒並み止まったとか。でも夜に外に出てみたら、この数日の暖かさで一気にふくらんできた桜のつぼみが、ぽんぽんぽぉんとはじけていました。例年より遅れましたが、やっと桜の季節の到来です。

震災で2年ぶりとなった講習会も、今日をもって何とか無事に終わりました。毎日朝から夜までレッスンが入り、その後は受講生のコンサート。レッスンと受講生コンサートの伴奏をお手伝いしていたのですが、レッスンで初めて楽譜を渡されてその場で対応するやり方で、いつもの事ながらびくびくでした。受講生コンサートの伴奏は本番まで1〜3日の余裕があるので、お初の数曲は帰宅後深夜にさらいましたが、これまた弾きにくい曲で・・・終わってみてどぉっと疲れが出てきたという事は、どれほどプレッシャーを感じていたかという事?会期中は無我夢中なので、自分の心にも自分で気付けず、なのです。

いつもの事ながら自分の楽器以外のレッスンは面白いし、いろいろと参考になります。今回の3人の先生、国籍も年代もタイプも違い、レッスンの仕方もアプローチの仕方も全く違いましたが、ゆきつくところは結果的には同じ。大抵の受講生が言われていた事は割と共通していて、楽譜に書かれている事をちゃんと読む事、体をリラックスさせて決して押し付けずに楽器を鳴らす事、その作品のバックグラウンドや作曲家の生涯を知っている事、曲のイメージを先に掴んで表現する事、いろいろな音色の引き出しを持つ事、などなど。

楽器が違っても参考になる事がたくさんあって、「後は細かい事やるので、休んでいていいよ」と言われても食らい付いて聴いていました。そうやって他の楽器のレッスンを聴講する事は簡単には出来ないので、ありがたい機会です。弓を持つ時の各指の役割とか、楽器を構える時のくせがひびきにどう影響するかとか、正しい音程の取り方とそれについての考え方、適切なテンポを取る事の重要性、舞台に立った時の心構え・・・合わせをする時に知っておいた方がよいのはもちろんの事、全てに共通するんだな、と。ツボにはまって思わずメモってしまった事もいろいろありました。

それにしても毎日、しかも違う先生のレッスンを受けるとなれば、今日やった事を消化してゆくだけでも大変だと思うのですが・・・最初のレッスン、コンサートの直前のレッスン、そしてコンサート本番、皆1回ごとに脱皮してゆくかの如く、演奏がどんどん変わってゆきます。本番の集中力の高さには皆本当に驚かされました。まわりによき仲間(ライバルという言葉は好きでないので)がたくさんいるので、お互いに刺激し合って成長してゆくのでしょう。

機会あれば一緒に合奏する間柄という意識があるからなのか、基本的には伴奏がつくのでソロの曲でも人と一緒に演奏するという意識が働くからなのか、弦楽器同士皆仲が良く、うらやましいと思いました。学生時代を思い起こしてみましたが、ピアノはソロなので、意識は完全に「独り」。なぜそんな風に思っていたか、その理由がやっとわかった気がします。

こうやって学生さん達のお手伝いをしていると、学生時代の事をいろいろ思い出します。あの時のたくさんの「どうして?」の謎が今更ながら一つずつ解けてゆきます・・・無くしたまま気になっていた大事なものを一つ、また一つと見つけています。ま、それはともかくと、皆が成長してゆくのをしっかり見届けられるのは幸せな事です。次に聴かせてもらえるのは夏休みかな。

さて、今日は何の日でしょうか?という事に免じてもらうつもりで今からアップします。神経の疲れが限界まで来ていたとみえて、何とか書き上げようとしたけど無理で寝てしまいました。こんこんと昼まで寝過ごせたのは一体何カ月ぶりでしょうか。と思いきや、もう新学期が始まる・・・。



2012年3月27日(火)             「音楽人」

あれからいつしか10日も経っています・・・。

2日連続のピアノ・デュオ・リサイタルもお陰様で無事に終わりました。サロンいっぱいのお客様にいらして頂け、本当に嬉しく思います。そして17日土曜の方は、チケット完売ゆえ何人もの方々をお断りしてしまい、申し訳なく思います。そんな方々からのお気持ちもありがたく受けとめ、客席のあたたかな雰囲気の中で弾かせて頂けた事、心より感謝しております。ありがとうございました。いくつか頂いた花束、萎れる事もなく今もとても綺麗。お花を見ていると10日も経ったという実感が全くないのですが、リサイタルが終わったのもまた同様です。

この間、卒業演奏会の伴奏や新年度の高校の説明会などで学校に出掛け、また年明けから手をつけられなくなっていた雑務に追われていました。それらも片付くまでにはまだまだまだまだ程遠いのですが、「6月のリサイタルまで2か月半しかないのに全然弾いていない??」。ふと我に返ったら恐ろしくなり、そんな訳でこの3日間は、時間が許す限りひたすら弾いていました。

まだ練習初期段階なのですが、何と言ってもバッハの平均律、おまけに1巻よりはるかに成熟度の高い2巻とあらば、フーガ1曲ざっとさらってみても1時間とかかかる。奥が深くいろいろ発見があり、大好きな曲だからこそ毎日朝から晩まで弾けたとしたら極楽。でも本番の日までどこまで突き詰める事が出来るだろう?プレリュード24曲とフーガ24曲、これを全部さらおうと思ったら時間は・・・?あれもこれもやらなきゃならないのに。と考え始めたら、どぉんと落ち込みました。

これをぼやいていたらある人に、「音楽人なんだから何より音で語らなきゃ。他の事はこの際気にしないでいいから。弾けるなら結構結構。」と言われました。それも確かにそうだな、と。気になる事を全て片づけてからでないとピアノに集中できないこの性格、一番大事なはずのピアノが優先順位最後になってしまうので、そう割り切る事も必要なのかもしれない。そう思ってあれもこれも振り切ってピアノに向かいました。一旦弾き始めたら音楽に惹きこまれてしまい、気付いたら何時間?反面、雑務を放棄している事には自己嫌悪・・・。

言い訳と前置きが長くなりましたが、そんな訳ですみませんがデュオ・リサイタルのご報告はまた後日。改めて書くつもりにしている事が積もってきていますが、6月に間に合わなくなっては本末転倒なので、ごめんなさい。

今日から約1週間、例年お手伝いしている弦の講習会。機転をきかせててきぱきと動ける、また弾ける事も、伴奏者として必須な能力です。伴奏者七つ道具(って何だ?)を忘れずに持って行かなきゃ・・・。



2012年3月15日(木)             「玉のれん」

あっという間に明日となりました。

・・・。

この10日間ほど毎日のようにしていた合わせも、今日で終わり。なかなかこれだけに絞れなかったので、最後10日間のスパートは我々ながらすごいものがありました。

1日中合わせて疲れてきたら、飲み物を買うついでにちょこっとお散歩。春になって様相の変わってきた草や木を毎日観察するのが楽しみになりました。今月頭のまだ寒かった頃からしだれ柳が芽吹いているのに気付き、この寒いのに・・・と驚きました。今、近づいてよくよく見てみれば、1つ1つの芽の中には小さな小さなつぼみが房になっている。それが遠目には玉のれんのようで、風情があります。こんな風に心のゆとりが持てたのも久しぶりです。

明日16日のチケット、少しですが当日券はお出し出来る事となりました。詳細はコンサート情報の欄をご覧下さい。どうぞよろしくお願い致します。

明日は、出来るだけの事を精一杯やらせて頂くしかしかないと思っています。昨日の地震の事もあり、あの震災とその後の日々を思い出しても怖くはない、とは言えませんが。会場で皆さまにお会い出来ます事を楽しみに・・・。




2012年3月14日(水)             「2日前の心境」

あれよあれよという間に明後日となっています。

・・・。

毎日毎日「今日やらなくてはならない事は・・・」と頭に最重要課題を幾つか思い浮かべ、それを確実に忘れずにこなしていくように気をつけています。そうでもしないと何もかもが抜け落ちてしまう。それほど、この10日程は集中して合わせをし、また事務的な仕事もてきぱきと進め、そんな毎日を過ごしています。

連続2日の2公演、それも全く違うプログラム、しかも連弾、というのはやっぱり半端ないっ。数日前少し広い場所をお借りし、2公演分の通し練習をしました。時間を無駄にできないので殆ど休憩も入れずぶっ続けで通したら、さすがに2つ目のプログラムに入って集中力が切れてきました。本番とかそれに準ずるリハーサルで集中力が切れる事はまずないので、我ながら「なんだろこの感じ・・・?」と思いつつ、でもよくよく考えたら2公演分通す事なんて実際ないし、そもそも本番は前後半に分けて休憩入るし、今回は1曲ずつトーク入れるんだっけ、あ、まだ何にも話す事考えていない・・・。と、安心しながら同時に不安も生まれ、でも考えても仕方ないし、ま、2人いるから何とかなるだろう、と思う。そう思える信頼できる人と一緒に演奏出来るのは、本当にありがたく嬉しい事です。

さて、先にお知らせ。17日(土)の公演の方はお陰様で完売し、当日券も出せませんが、16日(金)19時の公演は現在10席ちょっとまだ余裕があります。今後の経過次第では当日券もお出しできるかもしれません。当日券の有無は16日朝、このサイトの「コンサート情報」のページに掲載する予定。原田さんのブログにも載せると書いてあったので、仮にどちらか忘れても2人の片方のブログもしくはサイトに情報を載せられるかと思います。当日になったら予定がはっきりするという方がいらっしゃいましたら、ご確認の上(当日券が出ましたら)、ぜひいらして下さい。楽しい曲、ほんわかできる曲、元気の出る曲、いろいろ揃えてお待ちしております。

毎日朝から晩まで、あれやこれやと合わせをしたり、打ち合わせをしたり、作業をしたり、話しあったり・・・時計も殆どみていないのですが、ふと時計を見れば数時間経っているとか、あるいは窓の外に目をやったらいつの間にか暗くなっていたとか、びっくりする事がよくあります。こんな演奏をしたいという理想を突き詰めてゆく事、全体像から入ってゆく事もあれば、ある1音をどんな風に弾くかで時間をかける事もある。以前に決めた事なども日に日に変化するし、何かが変わればそれを元に他の事も変わる。今はいろいろな事が固まりつつあり、でもその中から新たなアイデアも出てきているので、それをどうしてゆくか、いろいろ試しています。でも自分たちの気分や集中力、また会場の響き具合やピアノの状態次第で変わるので、慎重に、しかし成り行き任せで行こう、とも思っています。

ま、こう書くと何だか心境は複雑、みたいですが、実際は一言でまとめると「一緒に演奏していて楽しい」です。音楽でも人生でも経験の深い人なので、弾いていても話していてもいろいろ出てきます。あれ?随分違う・・・と思う事もたまにありますが、さんざん議論した挙句行き着いた音楽は、後々振り返ってみて(あ、根っこはおんなじだ・・・)と思わされる事も多いです。たった一言で、イメージしている事がすぅっと理解し合えたという事もよくあります。不思議なものです・・・。

3月初めには富山での震災復興支援コンサートに出演させて頂きました。原田さんと連弾でちょこっとお手伝いさせて頂いたのですが、地域の方々皆さんで創り上げられたコンサート、熱い想いが感じられたすばらしいものでした。お世話になった皆様、またいらして下さったたくさんの方々、ありがとうございました。こちらも改めて後日に書かせて下さい。

震災から1年が経ちました。3月11日が来るのが何だか怖かったです。その前日だったか、震災当日に決断の末コンサートを決行したあるオーケストラのドキュメントが放送され、それを見ていました。あの日あの時、私たちも自分たちのコンサートを決行するか中止にするかで迷い、考えた事や行動した事があります。そのドキュメントを見ながら、ひとつひとつリアルに思い出し、そして胸が苦しくなりました。そして震災から2週間後に延期して演奏した時に感じた事、それらもはっきりと思い出しました。考えられないほどの甚大な被害、たくさんの方々が亡くなり、津波で何もかも流され、またいつおさまるか先の見えない原発事故も起こり、今なお大変な思いをされている方も多くいらっしゃいます。亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、1日も早い復興を心より願い、何か自分にお手伝い出来る事がないか、どんな風に生きていけばよいか問いかけ、この日の事を決して忘れずこれからも記憶にとどめてゆきます。

花粉症の薬が効いていたのもありますが、毎日書きたい、書かなければ、と思いながら疲れて寝てしまっていました。それが積もり積もって取りとめなく書いてしまいましたが、まとまりがなくてごめんなさい。いつしか朝となりました・・・。

6月のリサイタルのチラシも届きました。こちらは後3ヶ月弱。果たして間に合うのか、今から胃が痛くなっています・・・。


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