ひとりごと(2012年11月分) |
2012年11月30日(金) 「天然冷蔵庫」 小さな小さな山の上のコンサートは無事終わりました。 「前日、山の上はマイナス10度だった」と聞いてびくびくしながら昨晩こちらに来ましたが、雪も少し残っているところがある位で、そんなに震え上がる程の寒さではありませんでした。いつもの何日か分もしっかり眠れ、今日はちゃんと練習でき、そして夜に本番。間近にお客様がいらっしゃる環境で、少しトークが緊張しましたが、所沢で弾いたのとは全然違う感じになりました。少しゆとりができていろいろな事に気が回るようになり、違う表現をしてみようとか、この場所ならこのピアノならこんな点に気をつけようとか、集中して弾いているようでいろいろな事も考えていました。こんなに変わるのはなぜだろう?結論は・・・良くわからないです。 演奏に一番必要なものは何か、そういう事を良く考えます。もちろん学校で大学生高校生をお預かりする身として、基礎を始めとして音楽とは何ぞや?とか、その他もろもろ伝えていくべき事はたくさんありますが、それだけが全てではない、と。それが一体何なのか、こういう演奏の場を頂いて教えて頂いている気がします・・・。 演奏後、美味しいご飯を頂きながらたくさんお話を伺う事が出来ました。往年の名演奏家の事、ホールやさまざまな建築の事、話は尽きなかったです。心地よいあたたかな時間が流れました。本当にお世話になりました。ありがとうございました。 また寒気が迫って来てすごい天気に明日はなるそうです。ちなみにストーブをつけないと室内ですら天然冷蔵庫になるような、そんな寒さです・・・。 2012年11月29日(木) 「月」 すっかり秋が深まってきました。勤めている洗足学園は秋の風景がとにかく美しいところです。いろいろな樹や花が植わっていて、季節それぞれにいい雰囲気が醸し出されているのですが、一番美しいのは秋。11月下旬から12月上旬は学園全体が秋色に染まります。お気に入りの色に紅葉する樹があって、その色に出会いたいがためにわざと遠回り(というほどの距離でもないですが)して、その樹の下を歩いたりしています。 先ほど空を見上げたらまん丸な大きなお月さま。冷たくてとても明るい月の光。そう言えば副科の学生さんのレッスン、ドビュッシーの月の光を弾いていて月のイメージについて話していたら、全然逆の事をお互い感じていて可笑しかったです。どう感じていても、その人が感じた事をちゃんと表現してくれていたらそれで万事オーケーなのですが、話してみないとわからない事は多い、と。 そして日に日に日に日に寒くなりますね。秋物のジャケットを出してからさして経っていないのに、昨日はついに冬物のコートを出し、今日からもっともっと寒い氷と雪の世界に出掛けるので、ダウンジャケットも出しました。 週末は関係者さんだけのコンサートで弾かせて頂くので、学校が終わった後に長野に向かいます。先日の所沢のプログラムと同じですが、ちょっと空くだけでこんなに冷静にみられるようになるのかという感じ。どういうシチュエーション、どういうプログラムであれ、1回目の本番までは集中的にがーっと詰めてテンション高く持ってゆき、2回目からなぜだかちょっと距離を置いて冷静に考え、落ち着いて本番に向かえる気がします。問題点は何か、それは単に精神的にどう持っていけるかという事のみ?だからこそ本番前のおさらい会やリハーサルは大切なのかと思うのです。 それはともかくと、都会の人ごみからもさまざまな情報からも離れ、豊かな自然と静けさの中に身を置ける事は大変ぜいたくな事。早くも気持ちは長野へ。しかし山は真冬の寒さだそうです・・・。 2012年11月26日(月) 「蒸しリンゴ」 また新しい週が始まりました。本当に1週間、1カ月、1年が経つのが早くて・・・。 秋も終わり。最後の紅玉を焼きリンゴにしました。正確には電子レンジで作る蒸しリンゴなのですが、だからかどうか加減が難しいです。皮にちゃんと穴を開けて破れないようにしても、中身がしょぼんとしちゃうまで熱を通すとうまみが汁の方に出でしまうかと思い、最近は時間を短め、リンゴがしょぼんとしない程度にしていました。でもイマイチ味がしみ込まない。という訳で今回は、以前のようにしょぼんとするまでしっかり熱を通しました。 リンゴは皮に穴をぷつぷつあけて芯をくり抜き、そこにバターと赤砂糖とシナモンを少しずつ振り入れ、リンゴのお尻がちょっとひたる程度に飲み残しの赤ワインを入れます。いつもと変えたのはリンゴに入れるものを極力減らして素材の味で勝負しようと思った事。蒸し上げるためのワインに少し水を加える時もあるのですが、それも無し。後は作ってからすぐ食べずに焼汁に浸しておいた事。りんごも届いてからなかなか使う事ができず、恐らくいい熟し加減だったと思われる事。という訳で、今回は崩れるちょっと手前のやわらかさ、リンゴの果肉もワイン色に染まって汁もしみ込み、久しぶりに美味しく食べられました。 なぜだかリンゴは紅玉と昔から決まっているのです。紅玉の生のしゃりしゃり感と酸っぱさも大好きですが、熱を通した時の甘酸っぱさは特別。でもなぜこんなに焼きリンゴが好きなのか、そのルーツが自分でもわからない。いつどこで食べたんだか・・・。 ところで、この頃は気持ちが落ち着かない日々を過ごしています。というのはプログラムがなかなか決まらないので。今年同様、来年も3月に原田さんとのピアノ・デュオをする事に最近決め、そのプログラムをどうしようかと、先々週から2人で弾破を続けています。ちなみに弾破というのは読破同様、「ひたすらいろいろな曲を弾き続ける」という意味の、私が勝手に作った単語。よろしければ2009年11月23日「弾破?」もご覧下さい。 いろいろな楽譜を借りて来ては、初見でイン・テンポ(本来のテンポ)で全曲カットなしで弾いて所要時間を計る、これを何時間も続けました。今回どうしても弾きたい曲の候補が多過ぎて、それ故に組み合わせの可能性もたくさんあって、組み合わせる候補曲全てを弾いても弾いても弾いても弾いても・・・終わらない。これもあり?あれもあり?という感じなのでスパッと決まらず、一晩寝るとどれがいいと話し合ったかさえ忘れてしまう始末(一部始終きちんとメモってはいますが)。 それらしきプログラムが先週やっと決まったはずなのに、イマイチこれでいいのか確信が持てない。本当にこれでいいのだろうか・・・?結局のところは、ある程度弾けるようにならないとそう思えないものなのかもしれません。弾く前にこれだ!って思える事も稀にありますが、それは本当に幸せなケースでしょう。でもまぁ印刷に回す頃に腹をくくると思うので、年内にはお知らせできると思います。しばしお待ちを。 実はもう一つ、来年のソロのリサイタルのプログラムも全く!決まっていません。今、過去の「弾破?」↑を読んでぎっくりしたのですが、あの時以上に迷い中。こちらも実は弾きたいと思っている作曲家1人は決めてあって、今年に入った頃から(平均律を弾き終わる前から)漠然と考えていたのですが、どうも組み合わせる曲にピンとくるものが思い浮かばないのです。一旦決まりかけたものの、あまりにもありきたりのプログラムなので反故にし、ゼロから考え直し。意味のあるつながりを感じさせ、且つ時間的に過不足のないプログラム、そしてどれもこれも自分にとって初めてでなく、最低でも2曲位は既に弾いた事のあるものを。と考えると本当に本当に難しい。こちらは迷宮入りしております。試験シーズンに突入したらソロは全く弾けなくなるので、決めるのは今の内。何故かプレッシャーを感じる・・・。 と思いつつ今日はピアノにまだ向かえずに、さまざまな事務作業に明け暮れています。こういう時に音楽聴きながらできたら、日頃聴けないものをたくさん聴けるのに。と思って気になる事を調べるために「ながら聴き」をしてみたら、手も脳味噌も完全に止まってしまいました。聴きたい音源はたまる一方。全く不利な性分です。 昔のアナログ時代にはこんなにやる事があったかな。今はすごく便利になったように思えて、でも逆にしばられてすごく忙しくなったような気がするのです。文字と数字が目の前にちらつきます。先月まで全く手がつけられなかったものがこんなにあったとは・・・。いろいろひっくり返しては、忘れられていたものを多々発見。という雨の月曜日です・・・。 2012年11月24日(土) 「3大B」 あっという間に月末になりました。先日のコンサートで頂いたお花たちがまだ綺麗に咲いていて実感がないのですが、あれからちょうど2週間が経ってしまいました。何度も覗きにいらして下さった方へ、お待たせしてごめんなさい。最近は夜中に何かする事が出来ず、すぐに寝てしまっています。寒くなって冬眠モードになったというか・・・いやいや、夏頃の生活があまりにも無茶苦茶過ぎてツケが回ってきただけかと思います。 さて、ちょうど2週間前となりましたが、所沢の「松井クラシックのつどい」さん主催のリサイタルもお陰様で無事終わりました。当日はいいお天気となりましたが、そんな貴重な週末の昼下がり、たくさんのお客様がいらして下さいました。普通のホールよりも客席が近く、またマイクを持ってトークしながらの演奏なので、いつもより一層お客様が間近に座っていらっしゃるような印象がありましたが〜それにしてもほぼ満席。いらして下さった皆様、本当にありがとうございました! さて、今回のコンサートはほんのちょっとだけ変わった試みをしてみました。昔からいつかやってみたいと思っていたのですが、通称「平均律」を少しばかり解体してお聞かせするという事。「バッハは苦手」という話もたまに聞きますが、よくよく聞いてみると「弾くのが難しくて」と但し書き(但し言い?)が大抵付くみたいで、聴くもの苦手という方に今までお目にかかった事がないのが救い。練習していても本当に見事に組み立ててあるのに驚かされるばかりで、どうにかこの驚きをお伝えしたいと思ったまで。楽譜上の音符の模様を見て頂くのが一番分かるかと思うのですが、演奏を聴きながら、それもその曲を初めて聴くとしたらどこまでお伝えする事が出来るだろう?何の曲を演奏するにしても、本番でいつも考えてしまう事です。とは言っても今回はレクチャー・コンサートではないし、プログラムを組んだ段階で演奏時間がかなりぎちぎちだったので、結局は簡単に説明するにとどめました。 フーガの主題が拡大、あるいは縮小されたり、裏返して反行形になるのは、専門的に音楽を勉強されている方ならご存じでしょう。でもそこまで詳しくない方にもバッハを更に身近に感じて頂きたい、そういう思いがありました。という訳で、今回選んだ平均律4曲それぞれにどんなキャラクターがあるかとか、どんなイメージを持って弾いているとか、そういう事を簡単にお話ししました。その上で、フーガの主題はどのようなものなのかをまず弾いてみて、それがどのように重なるか、2声分同時に鳴ったらこんな響きとか、1拍ずれて重なるとこうなるとか、反行形だとこうなるとか、先に取り出してわかりやすくして聴いて頂きました。それが曲の中でどんな風に聴こえるかは演奏中に探して頂こうという、お宝探しのような試みでしたが、どんな風に聴いて頂けたかなとちょっと気になっています・・・。 続くベートーヴェンとブラームスは至って普通にお話しし、その後演奏しました。とは言え今回、実は練習にいっぱいで気が回らず、何を話そうか考え始めたのは前日。トークも最近は少し慣れてきましたが、今回は久しぶりに一人でしゃべるので何だか心許なく、また平均律の事を分かりやすく、しかしできるだけ簡潔にするにはどうしたらよいかと思い、結局前日の練習後、明け方までかかってしゃべる事を考えていました。しかし当日、配られたプログラムの曲目解説を見て、正に話そうと考えた事とかぶると気付き(何を書いたか忘れていたのです)、全部新たに思いつきでしゃべりました・・・。何をしゃべったか実はあまり覚えていませんが、昔よりはすらすらと口が動いてくれるようにもなったし、息もあがらなくなったし、少しは進歩したかも(?)。 そうそう、アンコールの準備も全く忘れていました。全くどうした事だか。楽譜を引っ張り出して暗譜の確認をしたのも当日の明け方。何かと演奏の機会の多い曲だったので暗譜は大丈夫でしたが、もし記憶があやふやだったら一体何を弾いたんだか・・・。でもまぁつつがなくアンコールまでは無事進みましたが、その後の懇親会!今回もやはり、通りいっぺんでは済まされない質問が飛んできました。もちろんあらかじめ質問を知らされていたわけではなく、「バッハの場合のペダルの使い方」とか専門的な事にも話が及び、一生懸命、時にはしどろもどろしながら頑張って答えました。 何か書き忘れている事があるような気がしてならないのですが・・・そんなところでお陰様で無事に終わりました。「松井クラシックのつどい」さんで弾かせて頂いて思うのは、ボランティアでやって下さっているスタッフさんが心底から音楽を愛していらっしゃり、何に於いてもひとつひとつに優しいお気持ちが込められているという事。その結果温かな空気が会場に流れ、私たち演奏者も気持ち良く弾かせて頂く事が可能だと思うのです。集中して聴いて下さったお客様ももちろん、そして丁寧なお仕事で支えて下さった調律師さん、皆で創り上げたコンサート。皆で音楽を共有する事で何かが生まれる、それをいつも感じながら演奏させて頂けるのはとても幸せな事です。いつもありがとうございます。 しばらく文章を書かない内に書き方を忘れてしまったような変な気分です。とりあえずはこんなところで、また明日か明後日に書きます。いつも月末連続更新でごめんなさい・・・。 |
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