ひとりごと(2009年4月分)

2009年4月30日(木)           「解禁」

昭和の日も通常授業だったので、今週もばっちり仕事をしていました。すさまじい寝不足続きで、前回書いた「続き」がいったい何の事だったか思い出せなくて・・・。

かつてコンクールや入試で弾いた曲、私の場合なぜかあまり生徒に弾かせる事はありませんでした。いやな思い出があるという訳でもないけれど、何というかどこか「くすぐったい」ような気がして・・・でももう解禁していいような気がして、最近は弾いてもらっています。

それは例えば、中学生の時のコンクールの課題曲。コンクールに出る為にどこまで仕上げなければならないか、自分の甘さを戒められた懐かしい曲です。ん十年ぶりに弾いてみましたが、今はいろいろな事がみえてくるもの。なぜこの曲が課題曲に選ばれたのか、どういう風に弾くべきか、本当によく分かります。そして当時なかなかできなかった事がすんなりできるようになり、また面白く(ありきたりではなく、の意味)聴かせるにはどうしたらよいかアイデアもいろいろ湧き、我ながら成長を実感。中学生当時から比べたらそれはそうかもしれないけれど、ま、自分がどう変わったかを大きく実感できる事ってあまりないから、ちょっとばかり嬉しかったりします。

いつもお手伝いしている講習会で伴奏をする顔なじみの学生さん、あるいは年1〜2回伴奏をお引き受けする学内の学生さん、たまに聴かせてもらうからこそその変化がよく分かります。毎週しているピアノのレッスン、更に良くすべき点がどうしても真っ先に耳に入ってくるのですが、前回から変わった点、よくなった点にも注目してあげたいと思いました。きっと本人は気付けない部分だと思うので。

いいお天気が続き、月も毎晩綺麗に見えます。一昨日の糸のように細い三日月は金色に光っていて、昨夜西の空に沈む直前の三日月(四日月?)は赤銅色で大きくて、今日の月は普通に白く輝き・・・こんなに月もいろいろな表情があったんだと、発見がありました。

時間は無情に過ぎ去り、あと1ヵ月・・・。




2009年4月28日(火)           「音符中毒」

お天気が良くなったと思ったら、ヒノキ花粉の襲来が・・・。ピークは過ぎたはずなのに、私の体は少し遅れてピークがくるようです。今年はマスクをするようになったので覆われた部分は助かっていますが、耳の中が痒いし、うっかり忘れようものなら喉がガラガラ。昨年の今頃とまったく同じ症状です。

この時期本当にいろいろな事が起こる。信じられない事がまたありました。それは例えば・・・

いろいろな出来事一つ一つに時間軸が設定されていて、それはあるところからあるところへまっすぐに伸びている。その直線、何本も何十本もあればあちこちで交わります。それぞれの時間軸の中で大きな出来事が起こる点があり、なぜかそれは他の時間軸と交わるところにとても近い。ここ2〜3ヵ月はその直線が何本も交差し、大きな出来事がたまたまいくつも重なっているゾーン・・・そんな風に思えてきます。「本当にこういう時期ってあるんだ」というのが実感です・・・。

リサイタルまで1ヵ月だというのに、それどころだか何だかいっぱいいっぱいです。ご案内状を今必死で書いているのですが、そんな訳で曲目解説の締め切りを何とか延ばして頂きました。練習に集中できるのはその後の話。学校の仕事も待ったなし。火曜は全く内容の違う初見の授業が3つあるので、その曲探しに頭を悩ませます。高校の2つのクラス、内1つは鍵盤楽器系のクラスなのでピアノ曲を、もう1つは鍵盤楽器系プラス声楽系のクラスなので声楽曲を。ただ高校の方は初見のみならず、簡単なスコア・リーディングとかなり複雑なリズムも扱います。今年から受け持つようになった大学のクラスではピアノ科対象なので全てピアノ曲。という訳で3つのクラス分の曲を毎週探す事になるのですが、いろいろな曲に出会える初見の面白さを知ってほしくて必死に(?)なっています。

さて、今回のリサイタルで弾く「平均律」。中学校はキリスト教だったので毎朝礼拝があり、生徒が当番で礼拝の始まる前と後の奏楽を受け持つ事になっていました。当然穏やかで心鎮まる曲を選ぶ事になるのですが、そんな時いつでも平均律の中から弾く事に決めていました。もともと何でもゆっくりの深い曲が好きだったので、お気に入りの曲を神様の前で弾かせて頂く機会を頂けた訳ですが、得難い経験だったとつくづく思います・・・。

私は活字中毒で何か読むものがないと落ち着かないのですが、同様に音符中毒かもしれません。さっきの初見の話とも通じるのですが、そこに楽譜があれば兎にも角にも弾いてみようと思えるタチ。平均律も宿題に出ていない曲までずんずん勝手に弾き進めていったのですが、それ位その音楽の美しさに惹かれるものが子供心にあったのだと思います。そしてそのフーガの構造の巧みさにも・・・弾いていて面白くて仕方がなかったのを覚えています。

今日も朝早いのにまだやる事が残っているので、続きは次回に・・・。



2009年4月26日(日)           「コンサートを創る」

いつしか、もう大型連休なのですね・・・。長らくお待たせ致しました。何度もいらして下さった方へ、ごめんなさい。

新学期が始まったら予想以上に、すさまじい忙しさになりました。学校に行く日が続くと殆ど寝られなかったりするので、時間の概念が崩れています。数日前の事だと思っていたらそれは昨日だったり・・・とにかく1日が長いです。

自主企画のリサイタルを開くという事。改めて考えさせられました。大学でリサイタルに関連した4年生対象の授業があって、ゲストとして呼んで頂き、お話プラス演奏も・・・というのが数日前の出来事。

リサイタルも毎年続けて16回目となれば、大体どの時期に何をどのようにすればよいか、そのサイクル自体が生活に組み込まれていて、迷う事も深く考える事ももうなくなっています。それについて話をするとなれば、もう一度初心に帰ったつもりでいろいろ思い起こし、何をどう伝えたいのかいろいろ考えました。伝えたい事はとにかく「山ほど」。

若い方からリサイタルの伴奏をお頼まれする事もままありますが、そんな時、まずは「リサイタルを今度する事になりまして・・・伴奏お願いできますか?」。そこでOKすると「ところで、一体何から始めればいいんですか?」と尋ねられ(泣きつかれ?)、結局は一緒に考えていく事がよくありました。直接関わらないまでも、「教えて下さい」と来られたり・・・。「そうそう、私自身も最初はこんな感じだったっけ」と思えばこそ、あれもこれもと伝えたいものが出てくるものです。

デビュー・リサイタルの前年、大学院時代に一緒に組んでいたピアノ・カルテットの演奏会を京都と東京で行いました。マネジメントをお願いせず何から何までを自分たちで準備したので(もちろん友人知人や家族にはたくさんお世話になりました)、今から考えれば相当大変だったのですが、初めてだったのでそれが大変なのか普通なのかもわからない。4人寄れば誰かがいいアイデアを出してくれるし、どこからか情報を調達してくる。正に怖いもの知らずというべきか、若さゆえの行動力で乗り切れたというべきか・・・。それは思い出深い演奏会となりました。

当時、「(ソロ)リサイタルはまだ?」という声が周りから聞こえていたのに、行動を起こせず仕舞い。この時の経験がそんな私の背中を押してくれました。さすがに今度は独りなのでいろいろ考えてマネジメントを紹介して頂き、今に至ります。初めて伺った時、リサイタルを開くまでにするべき事や手順を事細かに教えて頂いたのですが、不安や期待、決意などと共に、その時の様子は今も鮮やかに思い出せます。

授業で話す内容を簡単にプリント1枚に起こしてみましたが、それをどうまとめようか苦労しました。頭で分かっている事でも人に分かるように伝える、紙面に起こすのは(プリント1枚に収まるものでないのは分かり切っているけれど)、本当に難しい〜。結局は、普段授業を担当なさっている先生がいろいろ話を引き出して下さったので、心配するほどでもなく滞りなく進んでゆきました・・・。

20分ほど演奏もしましたが、弾き始めたらもう何も考えずに曲の中に入っていました。弾く前は、授業の中で弾くというイメージが全然持てなかったのですが、不思議な時間というか空間の中に居たような感じ。

授業の最後に学生さんが書いてくれたコメント用紙には、感想や質問がいろいろ書いてありました。それを読みながら、やっぱりやらせて頂いてよかった・・・と。終わってみて、相当プレッシャーがかかっていた事に気付いたにも関わらず。卒業してからコンサートを企画し、演奏してゆく学生さんもたくさんいる事でしょう。1回のコンサートを「創る」って大変な事だけれど、それを超えて「やってよかった」と思えるような幸せな経験が、数多くできますように。そう願っています。

29日、世の中はお休みかもしれないけれど、なんと洗足では大学は普通授業です(回数確保のため?)。という訳で今週も全くいつも通り・・・。



2009年4月9日(木)            「桜」

新学期、始まっています。ついに今年は出講日全て朝9時から。6時過ぎに起きるにしても、寝る時刻はいつもと変わらず・・・という訳で、我ながら「おぃおぃ大丈夫かい?」という睡眠時間で頑張っています。そのせいで、座れたら車内で爆睡。しばらく忘れていた肩と首のコリが即、再発しました。

新学期のキャンパスは活気に満ちています。ここに勤め始めた時は、「こんなに緑が豊かなのにどうして桜がないの?」と残念に思っていましたが、数年前、まだ若い桜の樹が精いっぱい花を咲かせているのを見つけて嬉しくなりました(植えたばかりだったのでしょう)。その桜、今年は立派に育って見事な花をつけています。学校生活、しばらくぶりに思いだす事もいろいろ。クラスに新しい学生さん、数人迎えました。レッスンで最初に話す事はまず「姿勢」。ピアノを弾く時の姿勢はもちろん、ピアノに向かう姿勢、すなわち心持ちも含めて。

今日は素晴らしくいいお天気でした。こんな穏やかな気持ちで空を眺められたのはいったいいつ以来か・・・空のず〜っと遠くの向こうに会いたい人がいます。頑張らなければ・・・。そして夜、ふと空を見上げたら素晴らしく真ん丸な満月でした。

普段の生活で周りの方々からたくさんの優しさを頂いている事、いつも実感しています。最近は、それ以上の「きっと一生忘れない」と思えるような温かな想い、いろいろ分けて頂きました。つくづく幸せ者だと思います・・・。

桜もあんなにゆっくり見る事ができたのは何年ぶり?やはり思い入れがあるので、何かの用事にかこつけては遠回りして桜の下を歩いたりもしています。以前、直感でもしや?と思って調べました。私が生まれた年の、東京の桜の開花した日と満開になった日。

・・・その年の満開になった日に私は生まれた事を知りました。実際は見ていないはずなのに、何だか不思議・・・。


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