ひとりごと(2009年10月分)

2009年10月31日(土)           「体調管理」

さわやかな秋空が戻ってきました。それと同時に気になり始めたのは乾燥・・・。

もともと子供の頃から手荒れがひどい方でした。冬場になると手の甲が魚の鱗1枚1枚に見えるほど(でお分かりでしょうか?)、表皮にひびが入ってがさがさになっていました。それこそ幼稚園に入る前の話です。とにかくいつもヒリヒリ痛くて、寝る前にお湯で手を温めてからクリームを塗っていた事、思い出します。なぜあんなにひどかったのかが分からないのですが、いつしか大人になり、手の甲が荒れる事はなくなりました。体質が変わったのか、栄養状態が良くなったか、ハンドクリームの質が断然良くなったか・・・?

今、手荒れと言えば指先の割れ。例年10月頃から始まります。幸い爪はかなり厚いので割れた事はありませんが、爪の角があたるところから角質にひびが入ります。それでもピアノを弾く時に鍵盤がつるつるしたり、楽譜をめくったりする時に油じみがつくのが嫌で、日中はハンドクリームを塗る事はまずなく、そのためかひどい時は水絆創膏が指6〜7本程。それではあまりにも手に対して怠慢だなと思って、今は毎晩寝る前に必ずハンドクリームを塗っています。シンプルだけどそれだけ(うっかり1日抜いてしまうと今までの努力が水の泡)。今のところはそれでどうにかキープできています。ごくごく浅い指割れはできているけれど、それはピアノを弾いている証しだから・・・。

ハンドクリームやリップクリームは効きそうなものを見つけたら、とにかく買って試してみます。頂く事もあって、ハンドクリームは「こんなにあったっけ?」という位よりどりみどり。状況や症状で使い分けています。これから暖房が入り始めたらどうなるか、ちょっと心配ではありますが。

風邪やインフルエンザが流行ってきて、学生さんのお休みも最近増えています。そんな中、気をつけているのはやはり体調管理。ハチャメチャな生活をしている自覚があるからこそ、「人百倍」気をつけています。それにはいろいろ訳があって、その内の1つ、学生の頃、友人たちに心配と迷惑をかけてしまった出来事があり、それには自分自身かなり堪えました。体調管理に気をつけ、絶対に休まないようになったのはそれからの事。人間、失敗からたくさんの事を学ぶものです。

・・・な〜んて偉そうに書くとその後が心配。久しぶりの1日オフはとにかく良く寝て寝尽くしたら終わり(なぜか異常に眠かった)、練習はおろか、積まれた書類や楽譜の整理、来年の手帳レフィルの入れ替えもできませんでした。もちろん体調優先だけど、こうなると心の負担が増えてゆく〜。先週本番が終わった途端元気になって寝ないでも頑張れていたのに、休みとなるとくたっとなります。頑張り時を分かっていて、それに対して気持ちが切り替わり、その時に合わせて体が動く。驚くほど物分かりの良すぎる身体です(大事にしよう)。

私が体調管理にそこまでこだわるのは、集中力が全てのおおもとだと思っているから。演奏でもレッスンでも準備した事を繰り返すのではなく、演奏には聴衆の方々や共演者、レッスンは学生さんという相手がいて、今出ている音や話す事を元に瞬時に判断して流れを変えてゆく。それに反応し、またベストを尽くすには何はともあれ集中力だと実感しています。レッスンも何でこんなに集中できるのだろう?と思う位集中できています。だから1日終わるのが早い早い〜。ま、人にはいろいろな考え方があるので、これはあくまでも私のやり方でしかないのですが・・・。

目まぐるしかった今月に比べ、11月は少し時間的ゆとりがある予定。師走に入ったら実技試験の終わる2月半ばまで休めないので、早い内に来年のリサイタルのプログラムを決める予定です。って、決めるだけにならないように・・・。



2009年10月27日(火)           「長丁場」

また台風が近くを通り過ぎようとしています・・・全くもぉ。

お陰様で伊賀さんと青木くんとのショスタコーヴィチも全3公演無事終える事ができました。それぞれの会場にいらして下さった皆様、本当にありがとうございました。同じ曲で3公演というのは初めてで、今思えば結構長丁場だったような気がします。でもそれだけの事はあって、謎解きに苦労する程だったのにこれだけ曲とお近づきになれました。

ショスタコーヴィチの作品の場合、音楽する事=必ずしも「歓び」とは言い切れず、苦悩や悲嘆、狂気、皮肉、諦観など、言葉で簡単に言い尽くせないものも作品から感じとれます。伊賀さんと青木くんは毎年1人作曲家を決め、ヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタ、ピアノ三重奏曲というプログラムを組んでいます。今回で9回目、つまり9人の作曲家の室内楽に一緒に取り組んできた訳ですが、ショスタコーヴィチは室内楽の形態(というかパート同士の音の絡ませ方というか)としても特異な気がします。それでも音楽にれっきとした必然性が感じられるところが、大作曲家としての証しかと思うのです。オール・ショスタコーヴィチというのは今思えば結構重かったのかもしれませんが、作曲年代や作風が3曲全く違うところが興味深く、もともと重い曲が大好きなので心から共感して演奏できました。そして1年に1回であれ9回も続けていると、アンサンブルとしていろいろな事が出来るようになります。3回の本番全てが違い、また合わせと当日ゲネプロと本番、どれも違い・・・それでもハラハラドキドキする訳ではなく、アンサンブルとしてそれを楽しめるようになったのは年月のお陰でしょうか。楽しかったです。

正直今回は本当にいっぱいいっぱいでした。普段通りの仕事、ショスタコーヴィチ、プラス学生さんの出ている演奏会を幾つか聴きに行き、他の楽器の学生さんのコンクールなど伴奏にお付き合いし、またピアノの学生さんのコンクールや本番に備えてレッスン追加し・・・毎日フル稼働していました。幸い風邪もひかずインフルエンザもとりあえず大丈夫でしたが、まずは年に2〜3度出るひどい目眩に襲われました。もともと胃腸が弱くて腹6分目位に抑えていれば調子がいいのですが、胃が食べ物を受け付けなくなり、また1日これ位音を聴いている生活は当たり前だったはずなのに、無音状態を耳が欲していたり・・・今思えば身体より、本番モード張りに冴えていた神経がまいった感じでした。結局取った対策は、今すぐすべき事以外切り捨てて、ぼぉっとする間も削ってとにかく寝る。電車でも爆睡。帰宅してもまず寝て、改めてのこのこ起きだして次の日の準備をする。数回前に「限界」の話を書きましたが、今自分のキャパシティの限界をとっくに超えている事は自覚していました。でも大人になれば責任があるから休む訳にはいかず、どうにか切り抜けなければならない・・・それでも気持ちは何とか持続し、無事に公演を終えられてホッとしています。いろいろと支えて下さった方々のお陰です。ありがとうございます。

いろいろ書けそうな事はあったのですが、文章が全く考えられなくなっていました。まだ尾を引いています。やらなくてはならぬ事が山積していて、いつになったらきちんとこの生活をリセットできるのか心許ないのです。という訳でしばらくはイマイチまとまらぬ事ばかり書くと思いますが、ごめんなさい。

朝、警報が出ていたら授業は休講?でもまずはレッスンだからどちらにしろ行かなきゃ。とか考える今の時間帯の「心・宙ぶらりん状態」が嫌。台風一過のすかっとしたら秋空が見られたら、きっと気分も晴れるでしょう・・・。



2009年10月15日(木)           「5周年!」

あっという間に10月も半分過ぎ・・・1日1日が長いんだか短いんだかよくわかりません。

さて、先日の「あやせ芸術さいえん」の公演も無事終了しました。当日初めて伺った場所でもあり、不安もちょこっとありましたが、お客様がたくさんいらして下さり、また実に熱心に聴いて下さりました。ありがとうございました。嬉しい限りです。20世紀の大作曲家ショスタコーヴィチの世界、どんな風に受けとめて下さったのでしょうか・・・。

室内楽と言えばセッティングがとにかく大事なのですが、当日は場所決めに際してホールのスタッフの方々に本当にお世話になりました。今回のショスタコーヴィチ、音の重ね方が今まで弾いてきたいろいろな作曲家の室内楽とまた全然違います。皆で一つの響きにまとめるというのではなく、そもそも各パートが線的に扱われ、個々の響きを際立たせるような書き方をしているところも多く、またリズムが大きな意味合いを持っています。だからこそとてもよく響くここのホールではどう響きをつくりあげればよいか、ベストな位置はどこか試行錯誤してかなり時間がかかりましたが、日夜ホールでの響きをお聴きになっていらっしゃるからこそのご意見、教えて頂く事がたくさんあり、また助けて頂いたお陰で本番は気持ちよく演奏できました。ありがとうございました。

詳しい事はあと2公演終えてから総括して書きたいと思っています。少々お待ちを。

ところで本日10月15日をもって、このホームページもお陰様で開設5周年を迎えました。ここまで続く自信が・・・なかった訳ではないけれど、今ほどいろいろな方が見て下さるようになるとは正直思ってもみなかったです。本当にありがとうございます。以前に比べて最近は仕事が忙しくなり、長々と書くのが難しくなりましたが、これからもどうにかこうにか続けて行く所存ですので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

日常の諸々より音楽の事が断然多く、また写真もなく細かい字でいっぱいのこのひとりごとですが、ありがたい事に時々ご感想のメールを頂きます。音楽に関して考えている事、こういう事を書いても面白くないかな?と思う事がよくありましたが、ご興味を持って下さる方もいらっしゃると分かってホッとしています。ご感想お寄せ頂けましたら嬉しく思います。

数日前、ある用事が思いがけずも早々と終わり、空いたこの1時間どう過ごそう?と思った時がありました。学校にいれば間違いなく練習しているのですが、外に居たのでどこかでゆっくりお茶しようか、それとも・・・?そこは学生時代よく歩いた街でした。今はめったに来る事は無くなってしまったけれど、折しも夕暮れ時、雲ひとつない気持ちのいいお天気。という訳で1時間歩きました。お散歩というよりは割とすたすたと、だけどいろいろな事を思い出し、考えながら、ひたすら西へ西へ夕焼け空を見ながら歩くのは気持ちよかったです(もちろん暗くなってから方向転換して戻ってきましたが)。本当に久しぶりで幸せな時間でした・・・。



2009年10月7日(水)            「仮説」

台風が近づいてきています。今年一体何回目だか・・・今までは上陸しそうでしない分良かったのですが、今度こそ危なさそうです。

雨が良く降りますが、最近は毎日重い荷物を持って学校へ行っています。先日は雨の中、午前中都内某ホールにてリハーサル。室内楽の全プログラムを一気に通し、午後は学校へ。合わせとレッスンをし、夜に向かったのは都内かなり奥にある某ホール。コンクールの伴奏でした。スーツで雨の中、びしゃびしゃとよく歩き、移動距離と移動時間もさることながら、その日乗った電車がどれも混み混みで・・・つり革につかまらずに重い荷物を持って立っているって結構筋肉使うんだ、と改めて意識しました。楽譜の数が増えたせいです。ピアノの楽譜はページ数が多いので、とにかく重いっ。

そんな日々の中、昨日の嬉しかった事。まだかまだかと待っていたキンモクセイが咲きだしました。学校には大きな大きなキンモクセイがあり、雨にも関わらず甘い香りを漂わせています。朝学校に着いた時、「これはもしかして?」と気付き、その樹の前まで歩いて行きました。キンモクセイは、咲き始めたその日の香りが一番好きです。甘酸っぱい香りが日が経つにつれて甘い香りに変化していきます。好きでない秋の、唯一?好きなもの。

今週から連続3週、週末はコンサートが続きます。もちろん学校は休まず、それ以外の日は合わせ、またコンクールの伴奏もあり、オーディションやコンクールを受ける学生さんのレッスンもし、一体いつ家にいるんだかさらうんだか寝るんだか、という感じです。そこまで来ると逆に開き直って肝が据わるので、するべき事をわずかな時間を見つけて的確にこなしていくという感じでしょうか。不思議とそれでも元気でいられます。

自分の本番が近い時は神経が本番モードになっているせいか、レッスンで話す事も普段と全然違う気がします。きっと、突然スイッチが入ったと思われているでしょう。それについて書きたい材料、実は幾つもあるのですが、それを今書いてしまうと徹夜になってしまうので省略(後日思い出せたら書くかもしれませんが)。

室内楽のレッスンをしていると、今、正に自分たちがしている事とシンクロしてきて、妙な感覚にとらわれます。全ての元はやはり楽譜。常に皆で合わせていられないからこそ、それぞれが楽譜を読み込み謎解きをし、合わせる時はアンテナを張り巡らせて気付いた事について話し合い、仮説を立てていろいろな事を試し、良ければ採用、だめなら別のアイデアを見つけ、そうやって少しずつ少しずつ形にしていく。仮説を立てて試すという事はかなりの時間を要するけれど、第三者(レッスンの場合は先生)からの意見をもらう前に、まずお互いでしておかなければならない大切な事だと思うのです。それは、個々の人、個々の音楽の集まりでなく、「室内楽」「アンサンブル」している事そのものであり、またいい(音楽的)人間関係を築くのに必要な事で・・・なんて「言うは易し、行うは難し」。偉そうな事を毎度言わせて頂いています。

ショスタコーヴィチ、今年いろいろ取り組んできた他のどの作曲家とも全然違います。ショスタコーヴィチは今まで自ら進んで演奏する事もなく(弾きたい曲は実はあったのですが、なかなか確信が持てなくて〜)、今回も同様なのですが、お近づきになれる機会を頂けてよかったです。でも何が魅力か、言葉にするのが難しい。自分なりに分かろうとし、少しは分かってきたつもりですが、生涯あれだけたくさんの作品を書き、曲によって、また作曲年代によってもさまざまな面を見せていて・・・ロシアに行った事もなければロシア語も知らず、また歴史、社会的背景、文化なども含めて、まだほんの一部分しか知らないと自覚しているからこそ、何も言えないのです。今はその状態が苦しくもありますが、最初は何でも「知らないところから始まる」と思う事にして、その分誠実に精一杯音楽で表現しようと思っています。

という訳で今回はイマイチ説得力に欠けるのですが、今月3公演続くショスタコーヴィチの室内楽、作曲家のいろいろな面(個人的には強さ、深さ、鋭さなどにピンときています)が覗けると思います。20世紀の大作曲家の世界をぜひ尋ねていらして下さい。

今日も雨、すごそう。さすがにこれだけ続くと憂鬱になるけど、頑張って起きよう・・・。


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