ひとりごと(2006年11月分)

2006年11月30日(木)       「餅は餅屋」

明日はもう師走。

学校では今紅葉のまっ盛り。赤レンガ造りの建物が多いのですが、その風景に見事にマッチする「紅く染まる樹」が実に多いのです。レッスン室の壁一面の大窓から外を覗くと、学内のあちこちにさまざまな濃淡の紅い樹が見え、ひときわ真っ赤に映えるお気に入りの楓があります。例年見事だなぁと思うけれど、今年は特に色鮮やか。先日の雨続きの時も地面に色とりどりの葉っぱがまき散らされ、しっとりした美しさでした。秋がちょっと好きになれたりするのはこんな時です。

さて、お陰様でパソコンの異常は、モデムを新しくする事ですっかり回復。今となれば大した事でもないのですが、しかし本当に振り回されました(あの数時間を返して)。お騒がせしました。

学校もそろそろ忙しい時期になってきました。さしあたっては年内に室内楽の試験があるので、レッスンは今が佳境。室内楽は、できる事ならそれぞれの専門の先生に聴いて頂きたいけれど、授業のシステム上それは不可能。例えばピアノ・トリオ(ヴァイオリン、チェロ、ピアノ)なら、ヴァイオリンとチェロとピアノの先生それぞれにレッスンして頂くのが理想です。今私が受け持っているのはピアノ混合の編成グループ幾つかなのですが、私が分かるのは室内楽としての音楽の全体的な捉え方、そしてピアノ・パートについてのみ。専門的な事はやはり「餅は餅屋」という訳で、試験間際には別の楽器の先生にレッスンをお願いし(ご協力下さりありがとうございます)、逆に、普段は弦や管の先生にレッスンして頂いているグループから、臨時に聴いて欲しいと頼まれたりもします。

曲が仕上がってくると、気付いた事や試すべき事が不思議と次々と出てくるもので、レッスン時間は以前と変わらないのに全然足りなくなります。私自身今トリオに取り組んでいる為感覚が鋭敏で、いろいろ気付くのかもしれないけれど。後半月でどこまで変われるか、学生さんの頑張りにも期待しましょう。

今日は大した事が書けないけれど、パソコンも病み上がりなのでこの辺で・・・。



2006年11月27日(月)       「雹」

ついこの間、糸のように細い三日月の話を書いたのに、数日前は光るバナナのような美しい三日月が見られました。という事はあれから1ヶ月経った?あっという間に11月も終わる・・・。

伊賀さん青木くんのサン=サーンス静岡公演が終わりましたが、数日しか経っていないのに何故だか随分前の出来事のような気がします。たくさんのお客様がいらして下さいまして、本当にありがとうございました。今週末はその東京公演もある事だし、それが終わってからまとめて書かせて頂こうと思います。日曜夜の公演ですので、お時間おありでしたらぜひお出かけ下さい。

今月は月初めを空白にしないよう頑張って更新していましたが、ここで又もや間が空いてしまいました。静岡公演の前は学校の仕事と合わせがびっしり入り、静岡公演と東京公演の間には大学院の入試の伴奏があり、外国からいらした方の公開レッスンでも伴奏をし・・・という具合。続く時はなぜか結構続くもの。それはともかくと、調子を狂わされたのは「想定外の出来事」。さてそれは・・・?

一昨日の晩はパニック!パソコンが全く動かなくなってしまったのでした。最近ウィルスソフトの調子が悪いなぁと感じていたところ、その日は立て続けに何度もエラーが出たので、インストールし直さなきゃと思ったのです。でも何度インストールし直してもエラーが出るので、回線を1度切ってみたら、今度はモデムがうんともすぅとも動かなくなってしまい・・・。ウィルスソフトのせいでモデムに異常が出るのか、回線がつながらなくなったが故にウィルスソフトが機能しないのか、ニワトリと卵の関係みたいで素人には何が何だかわからない。一晩中パソコンと格闘してみましたがどうにもならず、明け方に諦めて寝ました。貴重な時間がもったいなかったけれど、今パソコンが使えないと支障をきたすので・・・。

昨日は朝すぐにサポートダイヤルへ電話したら、恐らくモデムの故障だろうという事で交換してもらえる事になりました。そこでホッとし、夜になって気楽にダメ元でモデムの電源を入れたら、何と!動いたのです???そのままで恐る恐るウィルスソフトを起動したらやはりエラー。何度も再起動している内に今度はアンインストールさえできなくなり、祈るような気持ちであれこれ試していたら、突然動き出しました。

・・・という訳で、かろうじて今使えています。いったい何だったの?1度終了してしまったらどうなるか分からないので、今一気に更新してしまおうという心づもりです。5年間今まで何の問題もなく動いてくれていたけれど、そろそろガタが出てくるのでしょうか。もしかしてこの後動かなくなってしまうかもしれないので、更新が滞っていたらパソコンのせいかな?と思って下さい。

他に想定外の出来事と言えば・・・雹!確か半月ほど前の事、あんなひどい状況は初めてで本当にびっくりしました。ちょうど学校で合わせをしていた時、弾きながら「どうして夜なのにこんなに沢山台車が通るんだろう?」と思った位の大きな音。外を見たら、直径1センチ位の真ん丸い氷の粒が次から次へと降ってきて、ぱこんぱこんと音を立ててコンクリートの上で跳ねていました。天気予報で「雨は降らない」と言っていたのであいにく傘を持っていなかったけれど、このまま外に今出たら頭に傷がつくだろうな、傘をさしても傘に穴があくだろうなと漠然と考えるほど、それは凄まじい降り方でした・・・。

雹と霰(あられ)の区別がつかないので調べてみました。雹は5ミリ以上、霰は5ミリ未満の大きさの氷の粒だそうですね。

寝たいのもやまやまですが、本調子でないこのパソコンをこれからテストしなければ。お願いだから今日はすんなり動いて・・・。



2006年11月14日(火)       「サン=サーンス」

あんなに暖かかったのに、突然の木枯らし1号・・・そろそろ観葉植物たちも家の中へお引越しでしょうか。その時間がなかなか取れないけれど、やはり日々の雑用より自力で歩けない植物を優先させてあげないと。

まずはコンサートのお知らせ、4件追加しました。前回ちょこっと書いたサン=サーンスづくしのコンサート2公演、そしてまだまだ先ですがヴァイオリン・リサイタル2公演。数日前にチラシが届き、もうすぐだから早く更新しなきゃと思いつつ、毎日延び延びとなっていたのです。

実は今、かなり切羽詰っており、「こんな状況は久しぶり」と思っている自分がいます。5分でも空いたらさらおうといつも楽譜を持ち歩いているのに空きがなく、仕方なく電車の中で楽譜を眺めて形式や調性、ハーモニー、各パートの関連などを分析し、帰って夜中にさらうつもりが疲れ果てて寝てしまい、翌朝早起きして練習して出かけていく・・・みたいな日々。私の行動パターンには「朝起きてさらう」というのはないので(「朝までさらう」ならともかく)、かなり珍しい事なのですが、「本番前はばっちり予定を空けてしっかりさらう」ができた遠い昔が懐かしいです・・・。

サン=サーンス、ヴァイオリン・ソナタだけ昔弾いた事がありますが、あとの2曲は今回初めて。どれも素敵な曲です。感覚や感性に訴えてくる音楽、そして長いフレーズが美しく流れるので、何と言うか心の赴くままに弾ける感じがします。そして華麗でドラマチック、昔の私だったら避けていたかもしれないけれど今は少し大人になったので(?)、すんなり受け入れられるようになりました。音楽の好みも変わる事もあれば、キャパシティも幾分広くなるものです。

しかし「さすが大作曲家!」と思ったのは形式。既存の形式に収まらないよく考えられた独創的な形式なので、大作なのにまとまりが感じられ、自由自在な旋律なのにかっちりと聴ける「妙な安心感」があります。ところで、何かピアノ曲にいいものあったら弾いてみようと思って調べてみました。小品数曲は知っていましたが、大曲がない・・・。こんなに長生きされてこんなに沢山作品を遺しているのに、ソナタなどの大曲が殆どないのです。10月28日「内部奏法」に書いたリヒャルト・シュトラウスもそうですが、ピアノの扱いを熟知していてもピアノの名手であっても、ピアノ・ソロのために何かイメージがわくかどうかは別問題なんでしょうね、きっと(ですか?作曲者の皆様?)。そう考えるとつくづく、室内楽に取り組めるチャンスに恵まれていてよかったなぁと思います。お陰様で世界が広がります。

あ、1つだけ、前回書いた事で訂正。「音楽は鮮度が命なので、右肩上がりの曲線で当日まで持っていけるのが理想」と書きましたが、何でもかんでも短期集中でやってしまうという意味ではないのです(止む無くそうなる場合もありますが)。ただずーっと3ヶ月とか半年とか同じ曲を弾き続けるのが嫌なので、そういう時はある程度できたら寝かせ(=その間全く弾かないで放っておく)、ほとぼり冷めたら再度起こす、そんな風にして気持ちの上での新鮮さだけは腐らせないよう気をつけています。練習であれ本番であれ、今日弾く演奏は今日だけのもの。そう思えれば、自然と一つ一つの音が大事になってくるのです。

こ〜んな生活なのでいっぱい書きたい事はあるのに書けず、結局音楽の話題だけ、それも大した事も書けなくてごめんなさい。でも適度(過度?)な緊張感があるこの生活の方が、断然性に合っています。余分な事は一切考える暇もないから、つまらない事で悩む必要もない。後悔しない為にできる限りの事をするのは苦にならないけれど、これ位なら何とかなるという手抜きは大嫌い。自分の好きな事を仕事にできているのは幸せな事です。さしあたってのサン=サーンス、どんな風に本番まで持って行くか、どんな風に弾きたいかがどことなく見えるので、「あと9日もある」と思えるのです。しかし・・・?



2006年11月7日(火)        「同窓会」

今日は立冬だと言うのに、過ごしやすい気持ちのいいお天気が続いています。夏は暑さが足りなかったのに、今年の冬も寒さが足りなくなる?それでもさすがに体は正直。夏と違って筋肉がこわばりつつあります。

先週は、いつもなかなか時間が取れないプライベートの方のレッスンを週後半にまとめ、そのお陰で家に居られました。同じ慌しさであっても、ちゃんと考えて食事が出来るのは嬉しい。ちょこちょこと何か作る位の時間は取れます。学校ではレッスンや授業がぶっ続け、お昼休みも休憩もまともに取れないので当然食事もおろそか(サンドウィッチ程度は時々作って持って行きますが)。栄養のバランスが悪いと疲れ方が激しいし、どういう訳かお腹がすき、また間食もしたくなる。つまりバランスよく食べられれば、少しであっても結構持つ、という発見をしました。

大きな演奏会が終わったばかりなのに、11月は佳境だと気付かされた今日この頃。オール・サン=サーンス・プログラムの合わせが始まりました。何でも集中して一気に乗り切るのがいつもの私のやり方で、長期計画を立ててコンスタントに仕上げるのは苦手。やっぱり音楽は鮮度が命なので、右肩上がりの曲線で当日まで持っていけるのが理想です(間に合わせる期間の読みを間違えなければ)。とは言うものの、今回ほどの短期決戦で仕上げなくてはならない状況は、最大の難関・・・。

サン=サーンスについて発見もありました。譜読みそのものは全然大変でないのに、実は弾くのが難しい。テクニック的に、スケール(音階)やアルペジオ(分散和音)など基礎能力を要求され、細かに動く音が多いので筋肉をかなり使う。曲の規模が大きく、構造をしっかり把握していないと意味が通らなくなる可能性あり。「フランスの作曲家なのに音の積み重ね方はドイツもの」という印象を昔から持っていたけれど(形式的にがっちり構築されているという意味)、やはりフランスと思わされたのはハーモニーの連結や転調の美しさ。その色合いを音色のみでさりげなく表現しなくては。今回演奏するヴァイオリン・ソナタ1番、チェロ・ソナタ2番、トリオ1番は、それぞれ作曲の時期が違います。作曲者は同じでも初期、中期、後期とで曲の充実度も違えば、もちろん各曲の持ち味も違う。それにもかかわらず、全部に共通する作曲家の個性ははっきりと分かる。比較できるから面白いのです。

それと全く別にお引き受けしている伴奏、今月はいくつもあり、こんなにたくさんの曲を同時に持っているって?と考えると、一瞬不安の崖っぷちに立たされます。差し当たって今晩も本番で3曲。朝一の授業から始まり、今日は長丁場(早く寝たい)・・・。

話変わってピアノ科のお話。ピアノは一人で弾くものなので、一匹狼的性格の人が実は多いのでは?と思われるでしょう。こぞって伴奏を引き受けたがる人がたまに居ますが、でもそういう人が必ずしも群れるの大好きな羊の性格をしている訳ではないのです(かくいう私が正に違います・・・)。

さて、何故そんな話を今書いているかというと、実は今ピアノ科同窓会の幹事を引き受けているので。大学の時の同期30名、私たちの学年は先輩後輩から「相当変わっている」とよく言われますが、それは未だに年1回同窓会(と言っても小規模なのでお食事会という様相)を開いているから。つまりそれだけ仲がいい。ピアノ科なのに恐るべき(?)事です。

それ以外に続いているのが近況報告集。同窓会に出席する人も欠席する人も含め、皆が書いた近況を集めて冊子を作るのですが、これは発行が遅れるとクレームが来る程、皆楽しみにしています。便箋数枚にびっしりと書いてくれる人あり、楽しいイラスト入りの人あり、この頃は写真を取り込んでパソコンでカラー印刷する人もあり。そんな感じで卒業後10ん年経った今も続いていて、全然会っていなくてもなぜかお互いの近況は知っているという、不思議な関係なのです。

卒業後すぐの頃は30人中半分以上が留学していて、海外の面白い話がよりどりみどりでした。幹事は今回で数回目だけれど、当時航空便で送った記憶があります(よろしければ2004年12月16日「サンドウィッチ」をご覧下さい)。皆が離れていたそんな時期も続いていました。皆が忙しくなった昨今は多少集まりが悪くなってきたけれど、誰かしら音頭をとる人が必ず現れます。そうやって今も続いているのは凄い事だと、密かに思うのです。

時代は変わり、今は「原稿は郵送でもファクスでもメールでも」とお願いできるようになりました。でも便利になったんだか煩雑になってきたんだか、実は良く分からない。締切日を過ぎたところでまだ数名届かない人がいるけれど、これ読んでいたら送って〜。

ちなみに今一緒に幹事をやってくれている友人は、子供の頃はよくコンクールで一緒になり、そして高校、大学、大学院と同期、そして洗足学園にも同期で入った長い長〜いつきあいとなる、言わば幼なじみ。もう1つ付け加えれば、こんなにたくさん先生のいる学校なのに、レッスン室は同じ曜日に隣同士、びっくりするようなご縁です(いつも助けてくれてありがとう)。

バジリコを収穫してジェノベーゼ・ソースを作りました。たくさん咲いていた白い花を食べるのには忍びなくて活けてみたら、さわやかな香りがふんわり漂っています・・・。


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