ひとりごと(2005年7月分)

2005年7月27日(水)      「文庫本」

何故だか季節外れの台風。昨年は随分と悩まされました。秋は演奏の機会が多いのですが、台風の通過する最中に演奏した事もあったし、学内の演奏会が直前に中止になったし・・・どうも嫌な事ばかり思い出すものです。昨日も学校で伴奏の本番含めていろいろ予定があったのですが、台風のせいで二転三転。結局午後の内に退去命令(?)が出て、家に早々と帰る事になりました。思いのほか影響が少なかったのは幸いでしたが、それにしても今からこれでは、今年は後いくつ台風が上陸するのだろう・・・?

秋のコンクールに向けて頑張っている学生さんを身近に見ていて、私も学生時代は休みと言えば何か目標を定めていた事を思い出しました。コンクールだったり大学院の入試だったり講習会だったり・・・昔から不器用でとても幾つも掛け持ちできるような感じではなかったのですが、一つに絞っただけあって、「何年生の夏休みには何があった」と今もはっきり思い出せるものです。

先日久々に本屋さん(書店というよりこの呼び名の方がぴったりきます)に寄りました。とても興味深い場所なのに最近は全く行けなかった。この時期、文庫本の棚には「夏向けの帯」にくるまれた本が山と詰まれていて、それを見ると不思議と懐かしい気持ちが呼び覚まされます。「そうだ、昔はこの時期こうやってたくさん読んだっけ・・・」。子供の頃はお小遣いに限りがあるので図書館で、あるいは友達に借りたり、もちろん自分で買ったのも多いけれど、何かを探し求めるようにいろいろ読んでいました。宿題で難しいものが課題になったりもしたけれど、今思えば随分背伸びしたものを好んで読んでいたなぁと苦笑。

今も本と言えば、まず探すのは文庫本。このところは睡眠を補うようになってしまったけど、本を読めるのは主に電車の中なので、バッグの中にはいつも文庫本が1冊入っていました。今はどこかに行った時に読めるように探すのが楽しみ。とは言っても仕事がらみですが、夜ホテルの部屋で、あるいはちょっとした空白の時間に本が読めるのは、ものすごい贅沢。そうやって集めた本が何冊もたまりました。さしあたっては8月に音楽祭で飛騨に行く時。今回はスケジュール的に殆ど空きがなさそうだけど、いい気分転換になりそうなものを。何を持っていこうかな・・・?



2005年7月25日(月)      「追い詰められて」

やっと大学の前期の授業期間が終わりました・・・。

この1週間も非常にきつかった。特に最後の3日間は朝から晩まで学校に居ました。朝から夕方は合わせをし、ゲネプロがあり、そして夜は学生さんのゼミのコンサートで伴奏。一昨日は又特別な1日でした。朝から丸1日かけて副科ピアノ(うちの学校では正式名称「教職ピアノ」)の試験を聴き、試験終わって慌ててその日本番の学生さんの直前通し合わせをし、急いで着替え、そしてトータル小1時間4人の伴奏・・・。その直前の合わせをしている最中にあの大地震があって、一体どこが震源地なのか結構きりきり気をもみました。でも本番控えて何となくぴりぴり、緊張した面持ちでさらっている学生さんの様子を目の当たりにしていると、こちらも相当気がかりだなぁと・・・。やはり舞台から学べる事はとても大きいもの。これまでに何回も一緒に本番を迎えている長いお付き合いの学生さんも多いのですが、少しずつ少しずつ変化し、進歩していくのが分かります。それはなかなか嬉しいものです。

教職ピアノの試験は、簡単なスケールをいくつかと曲を3曲用意するという大変なもの。譜を見てもいいものの、座ってからスケールの調性や弾く曲を指定されるので、かなり心理的に嫌な試験だと思います。でも教育実習に行ったら、ピアノ科でなくともしゃべったり歌ったりしながら、ピアノを伴奏する羽目になるでしょう。これ位はこなせないと実習に差し障りが出てもおかしくないので、今の内にぜひ慣れて欲しいと思います。また試験を聴いていると、いつも伴奏している学生さんのピアノを聴くような場面にも出くわしますが、不思議なもので専攻の楽器であれピアノであれ、音色や音楽の作りは似通うもの。日頃の生活での美意識そのものが出るのでしょうね。

しかし前回にも書いた「原稿」、こちらがなかなか書けずに苦しみました。もともと何か一つに集中しないと(切羽詰らないと)できないタチですが、大体家に居る時間が殆どない中、疲れているからとにかく寝たい、ピアノもさらいたい、でも書かなきゃ・・・そんな感じで、本当に今回は書けないかと思いました。結局何とか間に合い、締切日朝方にメールで原稿送れましたが。当たり前ながら言葉扱うより音扱う方が断然楽。ひらめかなければどうにもならない・・・。

この追い詰められる心境、どこかで経験しているようなしていないような・・・子供の時8月31日に宿題が出来てなくて追い詰められた事もないし、舞台に上って「しまった!」と思うような経験もさすがに実体験ではまだ・・・そう、夢の中ででした!そういえば昨日今日は睡眠中に見た夢を思い出せるようになりましたが、さまざまなシチュエーションであっても殆どが「追い詰められている」状況の再現。一体どこのドラマ?という位現実離れした、しかも緊迫したシーンが多い。今回の地震や、又ロンドンやエジプトのテロなど恐ろしい事が最近多いのも反映している気がしますが、眠る時位いい夢が見たいものです・・・。

そんな感じだったので、昨日はさすがに自分の中で「調子」が崩れました。この「ひとりごと」も正直余りひらめかないのですが、前回はまとまった事を書いたので、今回は簡単に思いつくことのみ書いていきますね。

こんなにバタバタしていても、確実に季節は巡っていくんだなぁと思う事しばし。最近気付いた事をいくつか挙げてみます。

朝顔のつるが毎日ぐんぐん伸びている事。とても毎日は無理で、数日放っておいてからツルを巻いていますが、隣の鉢、ひどい時はその又隣の鉢までツルを伸ばし、絡まりあっています。解くのが大変!

いつの間にかコオロギが鳴き始めました。気のせいか例年より微妙に早い気がする。最初は下手な鳴き方をしています。いずれ鳴き方も上達するんだけど。

プランターに埋めておいたホドイモ(アピオス)、なんと今年は初めて蕾がつきました。円錐形(上部の方が細くなるソフトクリーム形)に小さい蕾がまとまってつき、どんな花が見られるのか楽しみにしていたらついに咲きました!花の一つ一つは豆の花のようで、花びらの外側が白っぽく内側はワインレッド、垂れ下がって咲く藤の花をひっくり返して上向きにしたような感じ。花穂は小さく2cm程度ですが綺麗。花がつくこと自体予想していなかったので何だか嬉しいです。

6匹のアゲハが巣立った後、更に1匹そこで育ち、丸裸になった山椒の木に新芽が吹きました。ホッとするのもつかの間、また卵を発見。最近よくクロアゲハが遊びに来ていたので、その子供かも。

相変わらず朝まで起きている事も多いのですが(疲れ果てて帰宅後すぐバタンキューして再度起きるので)、日の出が確実に遅くなり始めています。夏至近くは4時にもう明るかったのに。

育ちの遅かったバジリコが、梅雨が明けた途端みるみる大きくなり始めました。今年の葉は肉厚でいい香りがします(トマトのサラダ、バジリコ添えがもうすぐ食べられる)。

さて、31日にコンサートがある南條さんとの初合わせも数日前でした。初めての曲の合わせは未だにちょっと気重。耳が相手のパートもろとも覚えて、手が勝手に動くようになると大分楽になりますが。今回はイギリスの曲、もしくはイギリスに縁のある曲がテーマです。ディーリアスのヴァイオリン・ソナタ、聴くのでさえ全く初めてでしたが、いい曲でびっくりしました。とても伸びやかで美しいメロディーで、まっすぐに差し込んでくる朝日を見ているような清々しさを思い起こさせます。でも何で知られていないんだろう?楽譜が現在絶版というのも関係あるのでしょうか。他にエルガーの作品も数曲、そして私の好きなクライスラーも数曲、など。クライスラーはエルガーのヴァイオリンコンチェルトの初演をした、というつながりがあるんだそうです。ピアノのソロも1曲お頼まれしたのですが、すぐにはイギリス関連の曲が出て来なくて・・・ショパンのノクターンを弾く事にしました。南條さんは私が芸大で伴奏助手をしていた時は学生さんでしたが、当時は伴奏した事がなく、その後1回何かでお手伝いしたことがあります。久し振りに聴いてとても音色が美しくなったなぁと感じました。考えてみればもうこの本番まで1週間ない・・・。トークもありの楽しいコンサートになると思います。お近くの方がいらっしゃいましたらぜひお出掛け下さい。

7月もいつの間にかもうすぐ終わり。夏休みも始まる前が一番に嬉しい。学校の夏季講習とこのコンサートが終わると、つかの間の「お休み」になります・・・。



2005年7月19日(火)      「室内楽から学んだ事」

やっと梅雨明け。青い空と白い雲、強い日差し、何だかホッとします。暑さなんてなんのその、Tシャツとジーンズで過ごせる待ちに待った季節がやってきました。学校ではそうも行かず、極めて無難な格好をしていますが。

先週の忙しさは半端ではなかった・・・。又もや更新まで時間がかかってしまってごめんなさい。どういう精神状態で動いていたかあまりよく思い出せません。毎日遅刻しないようにいつもの如く目覚ましをいくつもかけて何とか起き、学校に行って時間通りに授業やレッスンをし、試験の採点をし、合わせをし、それらの中で聴いて分かった事や考えた事をコメントし、いろいろな相談事を受け、秋からの予定を考えて宿題の曲を出し・・・夜になって学校を出たら電車の中で爆睡する。そんな1週間でした。

土曜の夜はさすがの私も参って動けなくなり、何も出来なくなりました。1ヶ月前にお頼まれした原稿の締め切りまで数日しかない事も、忘れていたのがショック(思い出せてよかった)。このわずかな休みは、その原稿を書くのが先決。また伴奏を弾いていても自分の音になっていないのが嫌で、それをゆっくりさらいながら指や音を作り直したいとも思ったし、家にいても用事を一切やらずに無為に過ごす事も必要とも思っていました。ところが・・・。

実は幼なじみ(6月24日参照)と会う約束がありました。人と会う約束、そういうのは偶然のようで必然であると思っているので(詳しくはいつか書くので今は省略)、疲れていてもせっかく時間を彼女も取ってくれたことだから、行こうと思ったのです。長い付き合いの中では短い時間だけど、考えてみれば3〜4年会っていなかった訳だし。夕飯のつもりでしたが、展覧会行かない?と提案され・・・行きたいのはやまやまだけど時間が余りない。でも直感で行くべきだと思って。

美術館は昔はよく行っていました。高校生の頃から「○○展」とつくものは全てチェックして足しげく通っていたし、めったに行けない海外でも、ひとたび街に降り立てばまず美術館を探すという感じでした。学校勤めになってからは、駅のポスターで気になる展覧会を見つけても結局行けずじまいで、ちょっと寂しい・・・。

今回行ったのは近代日本画の方の個展。美術の方は全くの素人で、そういう視点でしか感想は言えないのですが、繊細で涼しげ、又色使いが独特で、清楚な美しさの漂うようなところに惹かれました。数点は、作品の元となった下絵も並べて展示されていたのですが、その線の一本一本の緻密な事・・・。又平面上でありながら、空間の広がりが見事に表現されているのに驚かされました。ご本人のお言葉、確か「下絵を描いても感じが掴めていなくては意味がない」というような事でしたが(違っていたらごめんなさい)、音楽でも正にそうだな・・・と。どの作品も落ち着いたたたずまいの中、そのものの本質をずばり表現しているような一面が感じられました。1時間余り、雑事を忘れてすっかり満喫しました。いつも音に囲まれている生活なので、このような静けさの中視覚を働かせたのも久し振りかも。いいものを見せて頂いて、ちょっと感性が蘇った感じでした。

その後彼女お勧めのフレンチを食べに行って、それも非常に美味しかったです。驚きがあったし、且つ押し付けがましくなく物足りなくも無い、ちょうどいいお味でした。いろいろおしゃべりしながら・・・積もり積もる程ではなくとも、やはりいろいろ話す事もありました。彼女は美大を出た後、今は着付けを仕事にしていますが、着物を着た事のない私には全く新しい世界の話で興味深かったし、同年代で通じる話もいろいろあるものです。「疲れている時は家で体を休めなきゃと思っても、それは休んだ事にならないって、ある時私も分かったから」と言って、こうやって連れ出してくれた彼女には感謝です。

さて本題。「枕」が長過ぎました。前々回から持ち越していた「音楽について書きたい事」を。ちょうどあの時は大学院時代の室内楽の恩師の弦楽四重奏の演奏会を聴きに行き、そして最近は、授業で教えている室内楽を通じていろいろ思い出した事もあり、それらをまとめてみようと思います。

私が室内楽を通じて学んだ事は、それはもう本当にたくさんあります。一番大きな事は、ピアノ・ソロと全く違う世界、音で語り合いながら皆で一つの音楽を創りあげる事、つまり「室内楽」の本質を、そして音楽全体をどう捉え、どう創りあげるか、つまり「構成力」・・・などなど。

音楽高校に入った時分から人と合わせる事が好きで、いつも試験の時には何人も伴奏を掛け持ちし、室内楽と言えばぜひ!とあちこちに首を突っ込んでいましたが、本当の意味で室内楽を学んだのは大学院での授業でした。1年でトリオを組み、モーツァルトのハ長調とシューベルトの1番を、2年では更に一人誘ってカルテットにして、モーツァルトの2番とブラームスの1番を勉強しました。今改めて、楽譜の当時の書き込みを見ながら思います。何も分かっていなかったんだなぁと苦笑すると共に、ソロだけでは決して学べなかった事を随分教えて頂いたと。

今手元にあるシューベルトのトリオの楽譜。目に付く書き込みを拾っていくと・・・「付点の後打ち丁寧に」「刻みはテンポを締めて」「ここはピアノがメイン」「時間一杯使って、そのあとここから元の勢いに戻す」「流れ→」・・・。歌うべき音にはマーク、音符と音符との間に「間を考えて」の○印があちこちに書いてありますし、各々の主題を表す鍵括弧、ブレスマーク・・・。最初の出方や終わりの決め方、全員で絶対揃わないと格好悪いところなども当然書き込みされています。今これを見て思い出しましたが、特にテーマに於いては一音一音の「選び方」に先生は全く妥協されませんでした。ここまで完成された作品なら、フレーズとして完璧に整った「必然的な弾き方」がある筈です。楽譜の裏を読むところから始まり、全員揃って一つの流れにまとまる演奏が出来るまで、何度も何度も繰り返したようなそんなレッスンを、懐かしく思い出しています。

院生ともなれば皆それぞれが忙しくなり、合わせの時間を確保するのもままならない感じでしたが、とにかく全員の予定の合うところは全て空けて合わせにあてました。レッスンが週1だったかもう少し間が開いたかちょっと覚えていませんが、指導して下さった岡山先生のレッスンはとにかく緻密で、その時間が貴重でした。レッスンでご指摘頂いた事を次回までに確実に直してゆくのはもちろんの事、自分達で直せるような事でレッスン時間を無駄にしたくはないと、合わせも皆で意見を出し合い、録音を聴き、思いつくアイデアは全て試してみる、そんな試行錯誤の繰り返しでした。各々の技術は当然学生だから未熟ではあったと思いますが、納得いくまで合わせて息の合うアンサンブルを目指せたのも、時間に余裕のある学生だったからこそ。当時組んでいたメンバーは今思えば絶妙なバランスが取れていて、音楽的感性は割合似ていたものの性格は全く違うし、グループ内での役割分担も不思議と出来ていました。

ソロのピアノのレッスンも大変充実していましたが(これは別の機会に)、それだけでは恐らく学べなかった事は「ピアノをピアノらしく弾かない事」。ちょっと誤解を招きそうなので説明しますが、ピアノは音域は広いもののそれを演奏するのは一人だし、所詮「打楽器」、演奏が平面的になりがちです。他の楽器を凌駕しない為に音量と音色の工夫が必要で、限界ぎりぎりの柔らかい音色や弱い音量で弾く事もありますし、又同時に鳴っている他の楽器と音域の重なるところは音量を減らすとか、バスの倍音は充分に響かせるなど、バランスに気を配る事でも随分印象を変える事ができます。もちろんその為にはスコアの全ての音を目で追い、同時に聴いていなくてはならないのですが、そういう意味ではピアノの存在は要だという自覚も生まれました。

もう一つ気付かされた大事な事。ピアノみたいにたくさんの音を同時に扱っていると配慮出来なくなってしまうのですが、旋律楽器の奏者は1本の旋律が全てで、どれだけ気を配って演奏しているかという事。ブラームスのピアノ・カルテット1番の冒頭に、ピアノが一人で4小節弾くところがあります。その初め3小節は、シンプルにユニゾンのみ(ユニゾンとは、「ドと1オクターブ上のド」のように同時に同じ音が鳴る事)、何のハーモニーを表す和音もついていません。同時に3つ鳴る3オクターブのユニゾンで、それを純粋にレガート(滑らかにつなげる)するだけでも難しいのですが、それだけでは音楽的に何の意味も感じられない。冒頭に出てくる大事なところをピアノ一人で背負っているのです。先生も(もちろんメンバーも)「弦だったらこんなニュアンスなんだけど」と言って下さいますが、それをピアノでどのテクニックで表現するかを考えるのは自分。随分悩んだ記憶があります。その時ハタと気付いたのですが、「1本の旋律をどう弾くか」イコール「音程は元より音の長さ、強さ、音色などを駆使して、ハーモニー感やフレーズ感を表現しなくてはならない」・・・と。たくさんの音を扱っているからといってそれをないがしろにしてはいけない、と気付けた事で、又ソロのピアノが少し変わった気がしました。

また音の長さや音色についてはかなり敏感になりました。ピアノだと切るかつなげる、それも長めか短めか、位の発想しかなかったのですが、弦の音をいつも耳にしていて、またレッスンでの先生のご注意を聞いていて、ピアノを弾く上でヒントになる事はたくさんありました。ペダル次第で弦のさまざまなボウイングを模倣する響き(切り方)が作れると発見した時の嬉しさは、良く覚えています。音と音の間の「空間」を意識するようになったし、音の切り方自体に運動を思わせるリズムがある。弦楽器のボウイングが、ピアノを弾く時の腕の上げ下げにもかなり応用できるものです。

室内楽は1楽章ごとが割合長く、そして全体で4楽章を構成している事が多いのです。それをまとまりのある一つの作品として聴けるようにするには、当然演奏する本人が「この曲長い・・・」と思うようでは終わり!最初の合わせで、この曲は何形式?第1テーマは?第2テーマは?に始まり、ここでメロディーを弾いているのは誰?とか、このフレーズはどこに向かう?というような事の分析も、皆でしていたような気がします。当然疑問がわけば形式学の本を探す事になったり・・・と、又勉強の対象が広がってゆきました。そうやって話し合っているので、全員の音楽に関する考えはある程度弾けるようになる前から大体揃っている訳で、その基本の上に新しいアイデアが浮かぶ事があっても、根本的なところで音楽観やテンポの相違が出てくる事はありませんでした。譜読みの段階から構成を考えるようになったのは、この時からです。

演奏は自分一人でどうにかできることでもなく、皆の力がいい状態で一つになれば(1+1+1=5?)思いもかけないようないい演奏ができる事もある。これもこのメンバーから教わった事でした。それは皆の「気合」かもしれないし、いいテンポやいいリズム、絶妙な掛け合いから生まれる「流れ」のよさかもしれないし、又偶然から生まれた「何か」かもしれない。音楽にはライヴでしか伝えられない事があり、又「合わせ物」は何が起こるか分からぬ「素晴らしき偶然」を求めて演奏していると言ってもいいかもしれない。私自身にとってソロは、昔も今も楽しさより重さ深さを感じるものですが、誰かと一緒に、それも音楽的にも人間的にも合う人と演奏できる事はとても楽しい。それは音楽を続けていて幸せと思える事の一つです。

なんて書くと真面目なことばかりですが、先生の「寝食を共にするほど合わせるように」のお言葉通り、車を出して自主スキー合宿に行ったり(指導員の資格を持っている友人がいたお陰)、1度京都と東京で自主公演をした時も若葉の薫る季節に車1台、楽器も何もかもを詰め込んで旅行気分で京都まで行ったりしました。本当に楽しかったし、あの時あのメンバーでしかできない演奏になったと思っています(今聴いたらどう思うだろう?)。メンバーの留学などにより第2回目の公演を予定していながら無期延期になり、それっきりになってしまいましたが、いつかできるものなら又演奏したいものです。

その時の恩師の演奏される弦楽四重奏を先日聴きにお伺いした訳ですが、あれだけのベテランの域に達せられた先生方が真摯に情熱的に音楽を創りあげられているお姿に、非常に感動しました。そして今(まだまだ未熟ですが)私自身が室内楽を指導する立場となって、先生が当時教えて下さった事の意味や大切さが音楽を聴きながら蘇って来て・・・感無量でした。そしてそのようなメンバーに恵まれて室内楽ができた事も。今の私の音楽観の礎となっています。

ちょっと長くなり過ぎ・・・でもこういう事は頭の中で考えのまとまった時に一気にいかないと、とても書けないのです。てな訳で締め切りの迫った原稿は又書けなかった。今日は学校、あと1週間です。こっちも又気合でこれから書くしかないか・・・。



2005年7月12日(火)      「小豆アイス・・・の訂正」

今週は思いっきり「佳境」。なかなか更新できずにごめんなさい。自分でも訳分からなくなっています。

まずは7月3日の小豆アイスのレシピの訂正です。食べたくなって作ってみたのですが、その前に「もしや?」と思って探してみたら、昔の新聞の切り抜きが出てきました。3日↓の項では「泡立てなくて作れる」と書いてしまいましたが(記憶が薄れ・・・)、「生クリームは半立て状態にしてからゆで小豆と混ぜる」でした。すみません。後分量に関してですが、生クリームとゆで小豆をほぼ同量で作ってみたら、いわゆる生クリームを冷凍した状態に近く、出来上がりはちょっと固めでした。ゆで小豆の分量がもっと多い方が「まったり」とできるかと思われます。このレシピを元に既に作ってしまった方がいらしたら、ごめんなさい。

しかし昨日は蒸し暑かった!先週でしたっけ、35度位になった日、あれ位の湿気でしたら「何だか凄い熱気!」と思うだけで耐えられるのですが、昨日はちょっときつかった。汗腺が開いたり閉じたり、というのが夏バテの原因になるような気がします。いよいよ夏到来でしょうか。

話を冒頭に戻して、何が「佳境」かと言うと、今週は大学でおさらい会や試演会のラッシュなのです。前期の学期末(洗足では9月からが後期)は大学生の専攻楽器や室内楽の実技試験は無く、従ってお勉強の為のそういう会が必然的に増えます。私のクラスもご多分に漏れず、ピアノと室内楽で今週中に3回に分けて試演会をします。副科ピアノの学生さんに専攻の楽器も演奏してもらうのでその伴奏をしたり、手を傷めてしまって弾けない学生さんの代わりに室内楽に参加したり・・・。又それと別に、いつもお手伝いしているサックスのおさらい会も今週に集中、あちこちのクラスに顔を出しています。通常の授業・レッスンをした後におさらい会の掛け持ちをするので、「何時にどこで何を弾く」みたいな頭の切り替えが上手く出来るかどうか・・・なかなか難しいものです。

昨日もサックスのおさらい会でした。広めの学内のスタジオで演奏前には客席側に座って少し聴き、そのまま演奏するこの方法、正直結構苦手です。誰しも舞台袖で落ち着く時間がある方が断然うまく本番モードに入れると思いますが、人前で演奏するには「何があっても平気」という心臓の強さが必要だと感じる事も多かったので、うちのクラスの試演会もそのやり方にしています。人の演奏を聴いてそこから学べる材料もたくさんあるし。でもこういう学生さんは恵まれていると思います。私自身の学生時代を振り返ってみて、クラス内のおさらい会みたいなものも特になかったので、人前で演奏するのは大切と分かっていながら、その機会は試験やコンクール、コンサートに限られていたような気がします。精神状態をどうコントロールするかという問題もさておき、広いところ(=響くところ)で響きや音のない間をどう扱うかで、その演奏が大きくも小さくも、また玄人っぽくも素人っぽくもなると思うのです。特にピアノは楽器が大きいからどう鳴らすか、又如何に弱い音量且つ遠くまで通る音にするか、そして初めてのピアノにナーバスにならずに弾けるか・・・。やはり人前で演奏する経験は大切(但しちゃんと準備ができている時に限ります)。

一昨日は歌の伴奏でした。都合30曲を一人で伴奏したのですが、その時に一番気を遣うのはテンポ。私は舞台のピアノの前に座りっぱなしで、歌う方が入れ替わり立ち代わり・・・という形式なのですが、舞台袖で出番の前に「テンポはどれ位ですか?」と確認する事ができないのです。ソロの方にも、そういう意味では要らぬ神経を遣わせてしまっているようで申し訳ないのですが。舞台で一人歌い終わって拍手があり、次の方が出てきて再度拍手があるその間にする事は、次の曲の楽譜を開いて譜めくりの確認。歌は1曲が短いので通常譜めくりはたてず、楽譜はコピーして屏風状に製本し、音符の少ないところで上手にめくれるように楽譜の折り方(たたみ方)を前もって考えておきます。それと次の曲の拍子感を頭の中で作り、テンポの予測をして弾き始めます。この一連の作業(思考?)が大体何秒くらい?計った事もないですがそれが30曲分。そんな訳で相当集中します。

しばらく前にコンサート情報にいくつか追加しましたが、それについても全く触れられなくて気になっていました。一番近くの南條由起ちゃんのコンサート、この楽譜一式は一昨日届きました。彼女はロンドンで勉強していたので、今回プログラムにイギリスの作曲家エルガーやディーリアスの珍しい作品が入っています。それゆえ楽譜がもう出版されていなくて、探し出すのに苦労したとか。それを共演するのは楽しみなのですが、数曲は全く初めてなのでこれから譜読みをしなければならず・・・。合わせてみた感想などはまた後日にご報告します。

夏になるとゴーヤーチャンプルーも良く作りますが、「チャンプルの素」という便利な調味料があるのです。塩コショウはもとより、ニンニクやしょうが、ゴマ、他に月桃、レモングラス、島唐辛子など石垣島の野草やハーブがたくさんブレンドされているそうで、私が作っても少しはそれらしい味に近づきます。しかし!それを切らしてしまったのに、なかなか買いに行く暇がなくて・・・。

今日の朝一は高校の副科ピアノの試験。昨日の帰り道、友人(子供の頃から知っていて、高校から院まで一緒、尚且つ今同じ職場で働いているという、幼なじみともいうべき同僚)とメールのやり取りをしていて、「そうだっけ」と気付きました。寝る前に手帳を見れば分かる事ですが、それにしても今週はスケジュールが慌しい。受け持ちの学生さんがちゃんと弾いてくれる事をただただ祈るのみ・・・。



2005年7月3日(日)      「小豆アイス」

あっという間に7月になりました・・・。

更新するまで1週間以上も要してしまいました。ごめんなさい。「全然更新してないけど忙しい?」なんて尋ねられた時には、本当に申し訳ないなぁと思います。実際かなりメチャクチャな生活になってはいますが、そんな事をここで書いても面白くないので、一体何を書こう?と迷ったのも遅れた理由。

ただ何故こんなに時間がないのだろう?と考えて思い当たったのは、家に居る時間が全然ないせい。家にいなければ練習が出来ないし、外に持ち出しては出来ない仕事が手付かずで山積み。又学校に行くとなれば朝早くから夜遅くまで居る事が多いので(通常のレッスンと授業の後に「合わせ」をしてきてしまうので)、まず銀行や郵便局になかなか行けない。期日の迫った振り込みなどがあると大変。また帰りにどこかに寄って買い物をする訳にもいかず、かと言って別の日にわざわざ行く事も出来ず・・・必需品もしばらく切らす羽目になるのは嫌なものです。今更ながら、お勤めされている方のご苦労が分かるようになりました。自由業(フリーランス!)は平日に動けるのがいいところでしたが、今思えば昔は如何に時間を自由に使っていたか・・・。

猛暑の次は毎日雨、そして晴れるのか雨が降るのかはっきりしない蒸し暑さ。これなら猛暑の方がマシ。カーッと照りつける太陽の方がまだ性に合っています。こんな時、昔はキンキンに冷やした飲み物が飲みたくなったものですが、今は温かいものの方が好み。

・・・と言いつつ、美味しいアイスが食べたいと思ってふと思い出した事。新聞の切り抜きを頼りに、遠い昔作った小豆アイス。ゆで小豆の缶と生クリーム(乳脂肪分45%の本物を使うのが秘訣)を混ぜて、アルミのお弁当箱みたいな良く冷える器に入れて冷凍する、ただそれだけです。生クリームも泡立てないまま使うというお手軽さなのに、ゆで小豆缶の汁のとろみのお陰かちょうどよく「まったり」とした食感に仕上がります。カロリーは相当高そうだけど、良かったらお試しあれ。昔の記憶なので確証もありませんが、でも美味しかった・・・。久し振りに今度作ろうかな。
(レシピに訂正あり。お手数ですが↑の7月12日欄をご覧下さい。)

真面目に音楽について書きたい事もあるのですが、それを文にまとめられるまで待っていると更新が又遅れるので、それは次回に。しかし今日は強引に文をまとめているので、いつもに比べて何だか文章が冴えていない気がする・・・ごめんなさい。

リンクに1件追加しました。チェリスト富田牧子さんのサイトです。今年1月にリサイタルで共演させて頂きましたが、今度共演できるのはいつの事でしょうか・・・楽しみにしています。コンサート情報等掲載されていますので、よろしかったらご覧下さい。

今日は久し振りに家に居られます(都議選に行かなきゃ)。ゆっくり寝てぼぉっとして、いつの間にか夕方になったら美しい夕暮れを眺め、そしておもむろに何か食べたいと思うものを気ままに作る、或いは気の向くままピアノを弾いていたら1日が終わっていた・・・みたいな、そんな過ごし方が出来たらいいのに・・・。


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