ひとりごと(2015年2月分)

2015年2月28日(土)             「2015デュオのプログラム」

熊取合宿も終えて、いつしかこんな季節となっています。珍しく体調を崩して寝ていた時もありましたが、かつて大変お世話になった方にお会いしに行けたり、いろいろ充実した1週間でした。

そう言えばアクセスカウンターが消えてしまっています。なんか変だなと思いつつ調べてみたら、サーバのアップデートが数日前に行われたらしく、その影響だそうです。123456番がもうすぐだと思って注視しているというのに、なんというタイミング。サポート情報を頼りにタグをいじって見ましたが直らないようで、しばし様子を見ます。

早くお雛様を出してあげなきゃ・・・と思っていて、やっと出せました。箱の中で「出してぇ」とかたかた音を立てているんではないかと気が気でなくて、本当にごめんなさいです。25センチ四方の立方体ガラスケースに入った5段飾り、小さな小さなお雛様。確か大学生の時、人形問屋街に出向いて求めてきたのでした。あと2つ、ハマグリの貝殻の中に鎮座ましましているお雛様が居ます。やはり1つは自分で見つけて買ったもの、もう1つは友人のお母様に頂いたもの。この大切なお雛様たちとまた別の意味で、3月3日は特別な日なのです。

さて、今年のデュオの選曲について。すさまじく2人して頭をひねった割には、ひょうたんから駒のように一気に決まりました!

フォーレのドリーは絶対に入れようと決めていました。そしてブラームスのワルツを去年初日に弾き、今年も再演する「差し替え曲」と決まっていたので、ブラームスのワルツと同じ位の長さ、そして2年かけて弾く意味がある内容の濃い曲を差し替え曲に選ぼうと考えました。冒頭には、昨秋に松井クラシックのつどいの方々にお披露目したモーツァルトのニ長調ソナタ。というのがプログラム決めの条件です。

という事で演奏時間を考えてみると、モーツァルトのソナタ、ブラームスのワルツ、この2曲だけでは前半はちょっと短い。フォーレのドリーまで入れれば前半少し長め?と思いつつ、メインの曲を何にするかかなり迷いました。後半にどどんと重量級の1曲、中身が濃いだけでなく華やかさもあり、ある程度の長さもある曲を・・・と思い、過去に弾破した曲のメモを見たり、いろいろ調べたりしたのですが、組み合わせ的にも難しく・・・ふっと思いついたのがカプースチンのシンフォニエッタでした。

この曲、数年前、高校音楽科の最後の学年の生徒さんが取り組んでいるのを聴かせて頂いた事がありました。楽しそうな曲なんだけれど、いやはやとにかく弾く事自体大変そう、多分我々デュオが演奏する事はないだろうと即座に思ったのを覚えています。でもどういう訳か、きっと一生ご縁がないだろうなと思った曲ほど、いつかどこかで弾く事になるような気がします。なぜなんだか・・・。

そして差し替え曲もいろいろ考えたのですが、同じブラームスのシューマンの主題による変奏曲で落ち着きました。結局またお国めぐりとなりますね。オーストリア、ドイツ、フランス、そしてロシア・・・そしてどれも内容の濃い曲ばかりです。こんな事を繰り返していたら、来年こそプログラムを思いつかなくなるのではないかと・・・。

カプースチン、我々にとって、もちろん私個人にとってもお初。今もご健在、ピアニスト兼作曲家、ジャズの要素を採り入れた曲を書かれる、とにかく弾くのが大変難しい、しかし大変な人気、というところ位までしか存じず(ごめんなさい・・・)、分かる範囲でいろいろ調べたりしました。でも何よりも、楽譜がそれ以上の事をたくさん物語っていると思わされるほど、とにかく楽譜が緻密。分析にかなり時間がかかり、弾けるようになるのに時間がかかり、合わせにももちろん時間がかかるのですが、先入観がないからかいろいろな事を想像しながら曲を創っていくのが楽しいです。いや、まだまだこれから先、いろいろ分かって行くのだろうなと思います。

合わせの時間が経つのがなんと早い事か。あっという間に1日、2日・・・と過ぎてゆきます。

という訳でこの辺で。花粉症の皆様、大量の花粉が舞っていますがくれぐれもお気をつけて・・・。



2015年2月11日(水)             「秋田弁」

立春も過ぎ、暦の上では春がやってきました。実技試験期間もいつしか終わっているのですが、あぁ終わった~という感覚を味わわないまま今に至ります。ま、それもそうですよね。この曲を仕上げる、つまり本番の直前に「やっと仕上がった!」と思う事なんて絶対にあり得ない訳で。「演奏は生モノだから」とも言えるし、「ロボットでない生身の人間が弾いているのだから」とも言えるし、でも何よりも「音楽の世界に終わり(=完成形)はないから」。

ピアノを弾き続けてん十年。ふと気付けば「四半世紀も弾いてる!?」とびっくりしたのがついこの間の事のようです。今でこそ、「こんな風に弾きたい」とか「あんな音を出したい」という事にそんなに(どんなに?)困らなくなりましたが~。今思えば学生の時は本当に思うように弾けなくて、悔しい思いをした事も多々ありました。院生の頃からデビュー後数年あたりは、一つずつ一つずつ小さな発見を積み重ね、思いついた事をその発端から克明に楽譜にメモしていた時代でした。いつしか練習大嫌いだったはずが、めざすべく演奏をイメージしてから練習方法を工夫するようになり、考えては試す行程が面白くて仕方なくて・・・となっていました。テクニック面のみならず、解釈なども含めての話です。

「完成形はない」と書いたところで思い出したのですが、いまどきの学生さんは結果はすぐに出るもの、出そうとする傾向があるような気がします。その気持ちだけはわからなくもないですが、でもその気持ちにしたがって要領よく早道を通るがごとき練習(と言える・・・?)をしてきた場合、音を聴いて一発で分かってしまいます。こちらだって10年20年かかっているのに・・・。

時間は残酷、でも正直。

誰にも24時間しか与えられていないし、さかのぼる事もできない。今から昔に戻ってきちんと1歩ずつ積み重ねたいと思ってもできないし、その結果は今に反映されています。だから「残酷」だと。でも今からとにかくきちんと1歩ずつ積み重ねてゆくのなら、どれ位先になるかわからないけれど、その成果は未来に反映されるはず。だから「正直」だと。

・・・なぁんて話を、最近偉そうにレッスンでしています。まぁ自分がそのような思いをしていなければ、こんな事は今話せもしない訳で。人間って自分が経験していない事は本当の意味では理解できないから、多分今学生さんに話しているような事は、かつて自分があぁしておけばよかったと思って(後悔して?)いる事の可能性が大です。

と、話が飛びまくっていますが、3月のデュオ・リサイタルに向けて今からそれ1色の生活になる予定。この項の前回に書いた「いつの間にか」でもないですが、あと1ヶ月!?!? 何故かあと2ヶ月位あるような気分だったので、今文字にしてみて泡吹きそうになりました(本当です)。

この1週間は6月のリサイタルの曲決めのためにあれこれ調べ物をし、弾いてみて聴いてみてやっと決まったところです。加えて、昨秋に撮って頂いた膨大な写真を全部見て、そこから選ばせて頂くという作業もしておりました。果たして今月中にプログラムを決められないのではないかと思う位、何も思いつかない状態だったので、決まって安堵しすぎたのかも。珍しく、ソロの曲を早めに譜読みして指使い決めておこうなんて気を起こし、何分の一かできたところだったのです。道理で原田さんのしゃべる事ひとつひとつが何となく焦って聞こえた訳だ・・・。

あ、本人の名誉のためにいっておきますと、決してあくせくした人ではなく、私と真逆の非常におおらか(?)な人なのですが、時々すごくまともな事をずばっと言ってのけるところがあります。これが私一人のソロだったら危機感ゼロの危ない状態だったりするのですが、こういう時に真逆の性格でデュオを組んでいて良かったぁと思えたりするのです。自分にないものを持っていてくれるというのは本当にありがたいものです。

前置きが長くなりましたが、今月初めに秋田県羽後町にまたもや呼んで頂き、演奏してまいりました。今回は久しぶりに花嫁道中を見学させて頂けるのも楽しみだったのですが、なんと昨年の同時期と比べて積雪が半分との事。人を何人も載せた馬車をヒトリで引っ張るお馬さんがかわいそう、と思ったら、びっくりするほど元気な若いお馬さんで、雪が少ないのもなんのその。すんごい馬力で引っ張って行きました。それにしてもこうやって脈々と行事が継承されているのはすごい事で、たくさんの町の方々がおひとりおひとりに与えられたお役目を全うし、それが町の伝統を築きあげていることに感銘を受けました。花嫁花婿さんたちをのせた馬車は雪の回廊を走り、小さな小さなかまくらや洞穴(?)にろうそくが灯され、それは本当に幻想的な美しさで、ぜひ一度見て頂きたいです。

さて、今回のコンサート、ソプラノ江口さんとテノール竹内くんをお迎えしました。オペラ「愛の妙薬」の一場面、お二人とも歌唱がすばらしいのはもちろんですが、演技がリアルでお見事、お人柄もあいまってなごやかで楽しいひとときとなりました。歌詞もセリフも原語でしたが、ある部分だけ秋田弁にチャレンジ、その部分が客席で非常にうけていた模様。ゲネプロで初めてアドリブで入れていたと思うのですが、私たちも伴奏していたにも関わらずあまりにも可笑しくて、おなか抱えて笑い転げました。

羽後町も昨年夏を入れると5度目、しかし正直なところ、秋田弁は早口になると分かる事より分からない方がまだまだ多い。ちなみに江口さんは山形県新庄のご出身。ちょっと違いますが、秋田弁になんとなく似ているところも多いとかで、通訳可能な程だそうです。

その「愛の妙薬」秋田弁バージョンの舞台監督を急遽して下さったのが、羽後町出身の指揮者、阿部未来さん。カプースチンの譜めくりをして下さる方を慌てて探している時、びっくりのつながりでお願いできた方です。本当にご縁というのは不思議だと思わざるを得ないのですが・・・。なんと譜めくりのみならず、愛の妙薬の秋田弁バージョンのセリフも、客席後ろで聴いて下さってご指導して下さいました。伝わらなければ意味がないので、これで通じると言って頂けたことで歌手のお二人も自信を持って歌われた事と思います。もちろん譜めくりも完璧なタイミングでした。すばらしい伝統のあるところから、ジャンルは少し違っても、文化や伝統を大切に守り発展させていく職につく方が生まれるんですね。今後のご活躍を心よりお祈り致します。

実質丸2日間の滞在でしたが、とても中身が濃い時間でした。どうしてあんなにも皆さんあたたかくおもてなしして下さるのだろうと、毎回訪れる度に思います。人の心の優しさあたたかさに触れさせて頂き、それに心から感謝し、ぜひ皆さんにお会いしたくて又羽後町を訪ねようと思うのです。お世話になった皆様、いらして下さった皆様、本当にありがとうございました。

久しぶりに書き始めたらあれもこれもと長くなってしまいましたが、肝心要のデュオのプログラムについては又次回以降に回します。明日は某入試の伴奏に行かなくてはならず、またピンチヒッターで急遽お引き受けした伴奏の初合わせがあり、その曲をさらわねばならぬ事を思い出しました。

入試の季節ですね。東京ではしばらく大丈夫そうですが、大雪などで予定が狂いませんように。受験生の皆さん風邪やインフルエンザにお気をつけて・・・。


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