ひとりごと(2013年4月分)

2013年4月30日(火)             「ミステリー」

そろそろ曲目解説の締め切りが迫ってきました。今までご案内書きを含む事務的な作業が大変だったので、毎度のごとくこれから猛スパートをかけます。

そういえば、展覧会の絵をさらっている時に妙な事に気付きました。「なんかこの音、耳慣れたあの音と違う」。有名な曲は、聴き覚えた音を追いかけてしまうのが怖いのですが、そういう怪しいところが数カ所。リズムが違うところも見つけました。ミスプリントなのか、それとも自分の耳の記憶が間違っているのか、作曲者本人がうっかりミスしたとか(疑ってごめんなさい)・・・?

こうなった場合気になって弾けなくなってしまうのが常なので、そこで楽譜を探しました。元々昔から持っていた版を使わず、新たに原典版を買って弾いていたのですが、別の原典版とも見比べてみました。更に情報を求むべく探したら、なんと自筆譜のファクシミリが!思いがけずいろいろ資料が見つかり、手がかりも増えてきています。

とは言っても今はこんな有様、全ての資料を見比べるのは曲目解説を書き終えてからになるかと思います。巻頭(巻末)の注釈も読みたいし(日本語に訳されていない物も有り)、一体どれが正しいか、どれが正しいと言えないとしたらどれを選ぶか、そういう事を決めるまでの過程もなかなか面白いものです。ラヴェルのオーケストラ用編曲のスコアを見てみるのも面白そう。あ、あくまでもオリジナルはピアノ曲なので、参考程度ですが。

ちなみに先に書いた音やリズムの違う個所以外にも、びっくりする事を見つけました。いざ、自筆譜を譜面台に置いて弾こうとしたら・・・ん??

なんと冒頭の音からして両手とも長2度、つまり全音低い・・・。という事は右手がト音記号でなくアルト記号、左手がヘ音記号でなくメゾソプラノ記号で読めば納得がいくのですが、書かれている記号はト音記号とヘ音記号。なぜなのか理由が分かりません。でも音をずっと追っていくと、ところどころ本来の音(つまりト音記号とヘ音記号で読んだ場合の音)も出てきます。自筆譜も2ページ目に行くと、音の高さは本来のト音記号とヘ音記号読みが出来るように直っています。あまりにもびっくりしたので、連弾の相棒(作曲家の)原田さんに意見を求めましたが、2人で???最後のページまできちんと全てを検証(?)した訳でないのでまだまだ解決(?)しませんが、まるで音符を書いた後に五線を引き直したのではないかと思える位ずれていて、まるでミステリーです。

筆跡自体は、理路整然と音符が並ぶが如く、とても綺麗なのですが、これは一体どういう事なのか?目下のところこの音ずれが頭に引っかかっていて、それに関する情報はないかどうか早く探したい気分。とりあえず現段階で分かった事だけ書きましたが、実は「なんてことない」という核心をつく情報が棚から牡丹餅のように出てくるのではないかと、戦々恐々としています。あんなに大騒ぎして・・・なんて言われそうで・・・。



2013年4月29日(月)             「バジル」

毎度おなじみの月末駆け込み更新。今日は何を書こう・・・?

たまには音楽から離れた事を、ちょっとだけ。

この連休はお天気もよかったので、久々に土いじりをする心の余裕が生まれました。大体何月頃に何をするというスケジュールは頭に入っていたはずなのに、昨年出来なかった事が結構たくさんあるのです。例えば椿の剪定。やはり樹形が崩れてきていました。今年は寒さのせいかどの品種も開花が非常に遅れており、花が終わった今、やっと剪定に着手できたのです。上に向かうにつれて繁々していたのを、病虫害対策も兼ねてすっきりさせてみました。

バラの見回りも今年はリキを入れています。バラはちょっと目を離した隙に虫がついて、気付いたら葉っぱが穴だらけ、事もあろうかつぼみが食われている事も。そんな悔しい思いをよくしています。殺虫剤を使いたくないので捕まえるしかないのですが〜今年も葉に小さな穴を開けられたので、その時から鉢を持ちあげて葉っぱの裏から探しています。案の定どこからわくのか、取っても取っても別の虫がつくのですが、見回りの甲斐あってどうにか穴を開けられずに済んでいます。

そしてバジル。毎年春にバジルを植え、秋に収穫してジェノベーゼソースを作るのが楽しみなのですが、昨年は作っていません。あのすさまじい暑さのせいか、なかなかつぼみが付かなかったのです。つぼみが見えたのはいつだったか、秋、多分10月頃の涼しくなった時。その後寒くなって葉も落ちて来たし、そろそろ収穫どきかな、でもまだたくさんつぼみが付いているし、種もまだ出来ていない。種を残す為に葉っぱは落としても花は頑張っているのかな、切ったらかわいそうだなと思い、収穫をちょいと遅らせるつもりで冬越し観葉植物たちと一緒に屋内に置きました。さて、そのバジルは一体どうなったと思いますか?

・・・なんと、今も花をつけています。種ができたら取ろうと思いつつ、いつ見ても次々と花が咲き続けるので、気が付いたらもう次の種まきの時期になっていました。葉っぱはかなり落ちているのですが、それでもわずかに残った葉っぱや花穂(随分長くなりました)に触れると、寒さに耐えて凝縮したような強い香りが立つのです。種が取れない時に備えて、熊取合宿で種を見つけて買っておいたのですが、どうやらそれを蒔く事になりそう。

それにしても一年草のバジルを越冬させる羽目になるとは・・・。と思ってネットで検索。それによると日本では一年草扱いでも、原産国インドでは多年草。そして同じ事を考えて越冬させた人もいらっしゃるようです。そう言えば!先日輸入食料品店でバジルの種を見つけました。植えるのではなく、種を食べるって??ゴマ粒より小さいのに?

と思って又もや調べてみると、種の周りの物質が水を吸って種の30倍ほどに膨らむとか。そう言えばそんな話聞いた事ありましたが、タピオカみたいにぷるぷるに膨れるとは予想外でした。もちろん世間でバジルの種が話題になっていたとも知らず・・・。例年植えきれないほど種が大量に取れるのですが、いつも多めに蒔いては間引き、その苗をトマトにのっけて食べたりしていました。種の新しい食べ方は秋に試してみようっと。

えぇと何の話でしたっけ?あ、土いじりの話でしたね。という訳で連休明けの予定はバジルと朝顔の種まき。来月半ばには屋内の観葉植物も一斉に外に出す、と。すると、リサイタルも近い・・・?




2013年4月28日(日)             「2013年のプログラム」

連休に入り、やっと心地よい季節になりました。羽衣ジャスミンが昨日ぽつぽつと咲きだしたと思ったら、今日はふわぁっと香り出しています。全体としては1分か2分咲きというところですが、連休終わる頃位まではきっと大丈夫。この香りで少し気分も上向きになるでしょう。

実は前回書いた翌日、3月のデュオ・リサイタルについて書き始めてみたのですが、殆ど手が進まずに断念しました。6月のリサイタルの準備諸々、あれもこれも出来ていないという事に押しつぶされそうになっていたので、他の事にとても頭が回る状態ではなかったのです。お陰様でご案内等の事務作業はこの数日間でいくらか目処が立ち、あとは連休明けに締め切りを迎える曲目解説に着手するのみ。

今、一気に書き上げられそうな話題と言えば今年の選曲でしょうか。という訳でこれらを選んだ経緯を。

昨年の「平均律2巻」はともかくと、近年は毎度のごとくプログラムが決まらないと書いていますが、今回もご多分に洩れず。昨年の今頃は、精神的に内面へ内面へと向かう深遠な曲を弾いていたので、その反動か色彩豊かな曲を弾きたいという衝動に駆られておりました。真っ先に思い浮かんだのは、ドビュッシーの「映像1集」。しかしその後がなかなかなかなか決まりませんでした。

昨年秋から「映像1集」プラス何か、といつも考えていたのですが、あれこれ浮かぶものの決定打と言えるようなプログラムが浮かばず・・・。今年1月半ばの締め切りで切羽詰まり、ひょうたんから駒状態で突然降って湧いたのが今回のプログラム。数ヶ月も悩んでいたのは無駄だったかと思ってしまうほど、決めるべき時に決まるべくして決まるものなのですね。

「映像1集」はメインに据えられる曲ではないので、ドビュッシーと組ませても違和感のない作曲家でメインの曲をいろいろ考えていました。ドビュッシーに大きな影響を及ぼした作曲家にムソルグスキーがいる事から、「展覧会の絵」もいったん浮上しましたが、いやいや間に合わないだろうという思いもあり、その2曲以外に組み合わせるものが全く思い浮かばなかった事から、ケロッと忘れておりました。

メインを決められないのなら、プログラム冒頭から。そう思って考えていたのは、バッハの「パルティータ1番」かモーツァルトの何か。久々にモーツァルトを弾いてみたい気持ちもむくむく湧きおこっていたのですが、パルティータ1番パルティータ1番・・・と考えている内に、これとドビュッシーの「ピアノのために」を組曲形式の新旧対決、あるいはドイツの組曲対フランスの組曲、と対比させたら面白いかも?とひらめきました。

と思ったら、「映像1集」の繊細な表現と「展覧会の絵」の大胆な絵画的表現、あるいはフランスもの対ロシアもの、という図式が頭の中にぱっとひらめいたのです。2組の対比をつなげるものはドビュッシー。同じ作曲家の作品でも、「ピアノのために」と「映像1集」の音の扱いは、自分の表現を確立する前の過渡期のものと、正に今確立したその時のもの、という位に違うのです。という訳で、何となく浮かびつ消えつしていた候補の曲が、締め切りに追われた事で突然頭の中で確信をもってつなげることができました。

「パルティータ1番」は、今は亡き師匠の井上直幸先生にみて頂いた思い出の曲です。思い起こせば、平均律と並行してバッハの組曲作品も良く弾かせて頂きました。小学生の時分、アルマンドだのサラバンドだの、そういう舞曲がどういうテンポをとってどういう特徴を持っているか、まだまだ確証をもてない頃の話です。バッハは、「イギリス組曲」で組曲の典型とも言うべき形式を確立し、「フランス組曲」で装飾に彩られた舞曲を集めた規模の小さい組曲を書き、「パルティータ」では本来の舞曲や組曲から幾分脱却して、バッハ自身の思うところの芸術的組曲に作り替えた、と言っていいと思います。「パルティータ1番」は他の5曲の「パルティータ」に比べれば断然規模は小さいのですが、各舞曲とも音の並べ方やリズムの扱い、旋律の装飾の仕方などに独創的な工夫が見られ、やはり「イギリス組曲」や「フランス組曲」とは違う、さすが・・・と思わされています。

「ピアノのために」、これも思い出深い作品です。プレリュードは小学生の時のコンクールで、サラバンドとトッカータは高校生の時に試験で弾きました。プレリュードは課題曲だったので好き嫌い関係なく弾く事になったのですが、どうしてこれがドビュッシーの作品なのかどうも理解できぬまま。全体的には水彩画のような輪郭がはっきりしない淡い色合い、もしくはさまざまなタッチやトーンが1つの曲の中に共存して1つの世界を描き出している、というのがドビュッシーのイメージだったので、このプレリュードのように強烈なタッチが最初から最後まで貫かれているのがどうしてもわからなかったのです。それに対してサラバンドとトッカータは古き良き時代のフランス、というイメージが勝手にあり、どうしてこの異質な3曲が組曲としてまとまっているのかが不思議な気がしていました。プレリュードからサラバンドへ移る時が未だにしっくりこないのです。

以上の2曲を弾くのはあの時以来。これ位間が空くと、いろいろな事が逆に見えて来てとても面白いです。特にパルティータはあまりにもたくさんの事に気付け、曲がどんなに豊かな内容を備えているか、それに唖然としてしまいました。だから世界遺産級の曲は何度弾いても飽きる事は無いのですね・・・。




2013年4月20日(土)             「勇気」

前回から20日が経ちました。長らくお待たせしてごめんなさい。

新学期が始まったら今日までがあっという間にでした。例年、3月のピアノ・デュオが終わったら、気持ちの整理も事務的な作業も決着をつける間もなく6月のソロ・リサイタルになだれ込む、という悪しきパターン。今年は全く休めないまま新学期に入ったのですが、気合を入れていろいろな作業を片付けてみたら、もうこんな時期となっています。

いろいろ片付けていて思ったのは、昨年は本当に時間的に追われた年だったという事。ご縁あっていろいろなところに行かせて頂き、心あたたかな方々に出会わせて頂き、豊かな自然の中で過ごす事も出来、大切な音楽をお届けする事が出来、それは本当に幸せな事でありがたく思っています。ただ、家にいる時間が全然なかった故、出来なかった事もたくさんありました。パソコン仕事(次の買い替えはB5にしよう)、読書、土いじり(つまり植木たちの世話)、料理、片付けなどなど。期限を設けて何が何でも(!)終わらせる、というのが殊の外苦手。時間がないと思えば余裕のある日に回すので、まとまった時間がないとできない事がどんどん増えて行きます。

4月に入ってからは時間の進め方を遅くしました。ある方がおっしゃっていたのですが、勇気を持って「やらない」。それに共感して私も、自分で自分を焚きつけて頑張る事は止めにしようと思った訳です。気分が乗るのならいつもの如くぶっちぎりでやってしまいますが、疲れたと思ったらあっさりと寝ています。実際は何もせずに寝る事に罪悪感があるのですが、体が優先と自分に言い聞かせています。

実はこれ、学生さんにはいつも言っている事なのです。疲れて集中できないなら、あるいはどこか痛くしたなら、その日の練習は無理せず休む事、と。言うは簡単、行うは難し、でしょうか。

今年度から新しい授業のお手伝いをさせて頂く事となりました。ドイツ・リート(歌曲)。久々にドイツ語の辞書を開きました。学生の頃、声楽の友人のレッスンのお伴でドイツ・リートは随分勉強させて頂きましたが、あの頃はまさにドイツ語をabcから始めたばかりの頃。意味も全く分からず、聞こえる言葉を追うだけでも必死でした。それが今、音も意味もすっと入ってくる事に気付いて嬉しくなりました。新しい世界が開けるのはワクワクするものです。詩の韻の踏み方について丁寧に教えて下さった、ドイツ語学校の先生の授業も思い出しました。今どうされているかな・・・。

先日書店を通りかかり、吸い寄せられるようにふらふらっと入りました。気になっている事について書かれている本を見つけ、結局購入。1冊はあっという間に読破。後のは、リサイタルが終わるまで敢えて封印する事にしました。世の中で今、いろいろな事が起きています。ちゃんと知らなくてはいけないという思いに突き動かされたまでで、でも自分が出来る事は限られている、だからそれを全うしないと。というところで落ち着きました。

寒くて長い冬が終わったと思ったら、その後の春は迷走状態。今日はとても寒い一日でした。皆様も体調管理にお気をつけて・・・。


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