ひとりごと(2012年4月分)

2012年4月30日(月)             「ゆきとぴあ」

明日から5月!今日は寒い寒〜い秋田の羽後町でのコンサートについて、思い出しつつ少し書いてみようと思います。

あれは1月の終わりの事。秋田に向かう前日は学生さんの試演会、終わって夜遅く帰宅し、夜な夜な荷物を作ってほぼ徹夜状態で新幹線に乗りました。寝る予定のはずでしたが、気がつけば外が真っ白。いつしか「みえるものはただ雪だけ」という豪雪地帯に入り込んでいて、驚きのあまり寝るのを忘れていました。かつてコンクールの伴奏で、やはり1月に大曲に来た事があります。でもここまですごくなかった。降っても降っても降っても降っても降り積もるという感じで、雪靴も持ってきていないのに大丈夫かなとか、いらぬ心配ばかりしていました。

到着した日の晩にもうコンサートだったので何か落ち着かなかったですが、お昼に連れて行って頂いたお蕎麦屋さんやコンサートでお世話して下さる皆さんから、いろいろ話しかけて頂いたり差し入れ頂いたりし、心が和みました。外は吹雪いて本当に寒いのですが、人々の心が温か。自然に、でも細やかにお気遣い下さるのが本当にありがたく、嬉しく感じました。

羽後町は、日本三大盆踊りの一つ、西馬音内(にしもない、と読む)盆踊りの本拠地。今回のコンサートは西馬音内盆踊り会館で行われ、原田さんと私のデュオだけではなく、ゲストとしてコントラバスの戸嶋さんにも演奏して頂きました。コントラバスは何せ楽器が大きいのであちこちで驚かれます。新幹線でも移動の車でも楽器をどう積もうかと皆で頭をひねり、そこに人の輪が生まれました。本番では普通に演奏した以外にも、舞台から降りての至近距離でのコントラバス生演奏、滅多に聴けないだけに皆さんに喜んで頂けたようでした。私たちはいつもの如くいろいろなお国めぐりのプログラム。楽器としては不思議な組み合わせだったけれど、演奏する立場としても楽しい本番となりました。

次の日は盛りだくさんなスケジュール。でも本番は終わっているので気楽なものです。ご縁あってのとあるお宅で演奏させて頂き、また別の方のお宅では手作り郷土料理をたくさんご馳走になり(本当に美味しく、懐かしいお味でした)、町の福引会やみかん撒きに参加し、夕方は近くの温泉施設にのんびりつかって疲れをとり・・・でもその日のメインはこの後でした。「ゆきとぴあ七曲」って・・・?

それは心がほのぼのとする素敵な花嫁道中でした。馬そりで昼過ぎに町を出た花嫁道中、無数に続くろうそくの灯る雪の回廊を通り、七曲峠を越えて夜に到着というイベントです。町中では家々の玄関先に小さな小さなかまくらがあり、夜にはろうそくを灯します。山道では雪の側壁に小さなショーウィンドーのように穴を掘り、そこにもろうそくを灯します。それはとても美しく、いつまでもそこにたたずんでいたくなるような風情があり、そのやわらかな光に照らし出される中、花嫁花婿をのせた馬そりがゆっくりゆっくり進みます。12キロを5時間ほどかけて進むのですが、何から何まで便利になってしまった現在、忘れかけている何かを思い出させてくれました。しかし!本当に寒かった。その日はよりによってマイナス10度くらいまで下がったとかいう話でした。道理で寒い訳だ・・・。

次の日の朝は雪に埋もれた町や川を探索し、昼に東京に向かいました。やはり雪で途中少しばかり新幹線が止まったりもし、翌日の卒試の伴奏どうするんだろ?とひやひやしながら、何とか東京に帰り着きました。まるで夢をみていたかのような幻想的な光景、心の中に大切に閉じ込めて封をして、翌日から試験体制にスイッチしました。

何か大事な事が抜けているような気がして仕方ないのですが、そろそろまとめを。デュオではなかなか独りで来られないようなところに連れてきて頂け、ありがたく感じています。そして羽後町の皆さんの郷土愛、団結力、そしてお心の温かさにも触れ、とても心地よく3日間を過ごさせて頂きました。忘れられない思い出となりましたし、心の豊かさについて考えさせられるきっかけとなりました。またぜひ花嫁道中は見に行きたいですし、西馬音内の盆踊りもいつかぜひ。皆さん本当にありがとうございました。

冬は決して好きでないですが、冬も悪くないなと思うようになったかも・・・。




2012年4月29日(日)             「2012年のプログラム」

さて、今更ですが今回のプログラムについて書いてみようと思います。

今これを書くにあたって、3年前の平均律1巻を弾いた時のひとりごとを読み返していました。いろいろ考えていて、またそれをちゃんと文章にしていて、人ごとのように「あぁよくやっていたな」と思ってしまいました。なぜあそこまでできたのか、昔は昔で精一杯で時間がないと思っていましたが、今より心も時間も余裕があったという事でしょうか・・・。

今回の平均律2巻、選曲の理由も何もないのですが、1巻を弾く事に決めた時に「近い内に2巻を弾く!」と決めていました。ただ2年続けては無理なので時期を伺っていましたが、それが3年経った今となった訳です。第2巻のみで1晩のプログラムなので、弾いてみて組み合わせを確かめる必要もありません。ただ通常の80分プログラムにおさまらないのは自明の事で、それが自分のテンポや繰り返しの有無によって変わってくるので、早い内に通してみなきゃと思いつつ・・・これまた今となりました。

通してみての感想。あまりにも1巻と違ってびっくりでした。1巻の方はプレリュード(前奏曲)が、正にフーガの前に弾かれる「前奏」曲という感じの軽いものが多いのです。ハーモニーの連結(それを装飾したものも含む)から成るものも多く、また長さとしても殆どの曲が短めです。それに対してフーガは2声から5声までバラエティに富んでいて、プレリュードとフーガの1対というものを強く感じつつ、24対の大きなまとまりとして演奏していた感じでした。

これに対して2巻はどうかと言いますと、成立年代が1巻よりはるかに遅く、正にバッハの円熟期のもの。という訳でプレリュード、フーガ共に単独でも充実した内容を持つものばかりです。特にプレリュード、単なる「前奏」曲の枠を超え、バロック時代のさまざまな様式が採り入れられており、プレリュードだけで当時の音楽スタイルを一望できそう。2巻のフーガは3声と4声しかないのですが、これまた複雑な構造をもつものも多く、指10本では足りない動きをしますし、謎解きの面白さもあります。なのでまだきちんと弾けていない身としては、まず(プレリュードとフーガ別々に考えての)1曲1曲の特徴をつかまえて表現する事が第一で、それからプレリュードとフーガの1対として感じられるようにし、そしてそれを24曲続けたらどうなるか?という風に持って行く予定。

とはいうものの、どこまで持って行けるのか未知数です。1巻の方は小学生の内に3分の2弾き、中学生の時に学校の礼拝でもよく弾いていたので、音が殆ど頭に入っていました。2巻は中学生の内に弾いたのが数曲、残りは高校大学の時に弾いたものなので、レッスンの時にいったん暗譜はしたものの、頭の中に音が残っている確率が低くなっています。1巻の方はそんな訳で、最初からどんな風に弾きたいかが明確に見えていて、それで果たして良いのか検証しつつ、そこにひたすら近づいて行くだけでした。2巻の方は内容も構造も複雑になっている分、本来なら音が完璧に入っている状態でさまざまな解釈やアーティキュレーションを、弾きながら頭の中で音を鳴らして組み立ててゆくのが理想なのですが・・・まだ見えていない曲の方が断然多いです。ましてや楽譜に全て書きこまれている訳ではなく、こちらに解釈を委ねられている曲だからこそ、試しては決めて行くプロセスの時間が圧倒的に必要で、それを考え始めると果たして本番までに間に合うのか、えらく不安になります・・・。

ちょっと専門的な話になってしまいましたが、そんな事を考えながら練習している訳でもあり、ただただ愉しみや心の安定の為に弾いているのもあり・・・バッハの曲は私にとってまさにそんな存在になっています。とは言うものの、難しい事抜きに聴く方が断然心地よい、今の時代に必要な「心に効く音楽」です。ぜひ聴きにいらして下さい。

最近千葉の方でなまずが動き始めたようですね。地震には要注意・・・。




2012年4月28日(土)             「決め手」

またまた月末となりました。

前回更新したその日、アクセス数が目を疑うほどば〜んと上がっておりました。あそこまで如実に数字に反映するとは・・・。よく言えば一つの事に集中できる、悪く言えば同時進行できないこの性格、そう簡単に直るものではないのです。例年4月後半から連休終わるあたりまでが第一の山場。学校が始まったばかりで軌道に乗るまでちょっとかかり、リサイタルに関してはご案内状書きを始めとする諸々の事務仕事があり、曲目解説は連休後が締め切り。ここを越さないとピアノに集中できないので、今お店を広げに広げた状態の中で書いています。

デュオの時みたいに合宿出来たらいいのに。なぁんて思ったりもしますが、大体そもそもの音楽の意義からして全く違います。片や2人で1つの音楽を創り上げるためにあぁでもないこぅでもないと協力体制を取り、片や1人で自分の音楽を極めるために自分の中にこもって奥へ奥へと穴を掘り続ける。わざわざ合宿しなくても自分の今いるところが合宿所、みたいなもの。

さて、平均律2巻ですが、いつものごとく楽譜を新しくしてさらい直しています。全く初めての曲と違って昔弾いた曲は、いつの間にか記憶がすり変わっている事もあれば、悪い癖がそっくり戻ってきていたりする事も多いので、新鮮な気持ちでゼロから曲を創り上げるつもりで楽譜を見直します。ただ、学生時代にいっぺん暗譜はしているので、指使いを変に変えてしまうと逆に思い出せなくなったりする可能性もあり、指使いは一応昔のものもチェックしています。

学生時代から使っている渋い青い表紙の某原典版、同じものを新たに買いましたが、今出ている物は校訂者も変わり、指使いもまた新しくなっています。それらを見比べていたら大発見!音の変わっているところがちょこちょこあるのです。装飾音やタイの変更は更に多い???

他社の原典版も引っぱり出して来て見比べ、校訂ノートを読んでみました。非常に簡単にまとめると、平均律2巻の方はバッハの不完全な自筆譜、そしてとある弟子の写本の2つの有力な資料があり、更に幾つか別の資料もあり、でも今もってこれこそが決め手といえるものがない状況だそうです。各社から原典版と銘打った楽譜が出版されていても、どれもが微妙に違うのもそういう理由から。ま、なぜなのかがわかったのですっきりしましたが、はて、どれを選ぶか?また悩みが増えました・・・。

学生時代はそんな事全く考えもせず、楽譜(版)を選んだ段階で安心していました。だからここまで違う諸資料が存在する事も知らぬままに弾いていて、お気楽なものでした。少しはオトナになれたと言ってよいものか・・・?



2012年4月23日(月)             「タイム・アウト」

すっかりご無沙汰しております。あっという間にゴールデン・ウィークが迫ってきています・・・。

学校が始まったらとにかく1日1日が早い。2、3日位に感じていたのに1週間経っていたという事はざらです。毎日毎日めいっぱいにがんばっているつもりなのに、やるべき事が全然はかどっていなくて焦っています。焦りは確かにありますが、でも練習がきつくて嫌と思う訳はなく、1日中毎日弾いていられたらいいのに。それ位バッハの音楽は心の平安のために必要不可欠で、またそれ以上に幸せな気分をもたらしてくれています。ま、それはともかくと、リサイタルのご案内も全く手をつけられず、なかなか来ないと思っていらっしゃる方も多いかと思います。ごめんなさい。今しばらくお待ち下さい。

運転免許の書き替えもし、教員免許更新講習の申し込みもリサーチにリサーチを重ねて早々と済ませ・・・何故だか重なる時は重なるものです。

ピアノにかじりつくだけでなく、楽譜眺めてじ〜っと考えていたり、音源聴いたり、そういうのもひっくるめて練習と呼んでいますが、いつしか昼になり、夕暮れになり、夜になり・・・本当に太陽の動きが早い!さすがに48曲(プレリュードとフーガを別個の曲と考えて)もあると何を練習したかを忘れてしまうので、珍しくちゃんとメモっています。全曲をどんな手順で仕上げてゆくかは企業秘密(!)ですが、1曲ずつ仕上げてゆくやり方ではなく、横並びにどの曲も同じような順に、最終的に同時に仕上がるのをイメージしています。でも各曲を今思いつく限りの方法でさらっていくとしたら、多分6月10日の時点でチーンとタイム・アウト。そこまでやりたいのにそこまでできないかも?と思うのが、悔しいというか残念というか悲しいというか・・・。という訳で毎日必死です。

あれもできずこれもできず、的な事しか今書けないと思うので、この辺で止めます。

それにしても春が不発ですね。桜の時だけ妙に暖かくてあんなに早く満開になってあんなに早く散っちゃって・・・もっともっと桜の季節を楽しみたかったな、という思いがあります。ウチの山吹は例年より遅れていましたがやっと満開になり、夜な夜な外に出ては眺めておりました。山吹のあの目に眩しい黄色(そう、正に山吹色)は夜中でもぼぉっと浮かび上がって見えるのです。風に枝がゆらゆら揺れて、控え目ながら清楚な香りがあたりに漂って、それは春の夜、年に数日しか味わえない貴重な時間なのです。でも今日の雨でかなり散ってしまっただろうな・・・。

明日は何と25度になるとか!?これから明日の授業の準備を慌ててします。楽しい楽しい初見の授業と感じてもらえるためには、何のその・・・。


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