ひとりごと(2011年9月分)

2011年9月30日(金)             「プロセス」

気がつけば、年度前半も終わるのですね。今日はキンモクセイの香りに1年ぶりに出会えました。

今日は学内の一番大きなホールで学生さんの本番が夜にあり、そのゲネプロは昼にありました。実は朝からはマルティヌーの合わせ、そしてプログラム全曲の通しもしていて、あちこちに移動しながら、次はこの曲を・・・と、スイッチを切り替えていたのです。気を確かに、気を確かに・・・と自分に言い聞かせつつ過ごした1日でしたが、学校を出る時にふわぁっと鼻をくすぐる懐かしい香りに気付いた時、疲れは一瞬消えたような気がしました。

本当にゼロから始めた今回のマルティヌーも、日曜日には三島公演です。弾く事、お互いの音を聴く事、楽譜上の細かな指示を見て表現する事、イメージを持ってそれを音に変えてゆく事、素面状態から抜け出て「音楽」にする事・・・普段何かを演奏する時に当たり前にやっていたプロセスの一つ一つ、改めて探りつつ形にしているという実感があります。だからこそなかなか見えてこないと苦しいし、見つかると嬉しい。そんな風に創り上げています。

それにしてもしかし今回の3曲、独創的で面白い曲揃い。とだけ書いておきます(ゆっくり考えて文章にできないので・・・)。お時間ありましたらぜひ聴きにいらして下さい。

さて、合わせの録音を聴くとしますか。あまり嬉しくないけど・・・。



2011年9月29日(木)             「予測と確認、そして修正」

あっという間に月末。

あんなに暑かったのに台風を境に、いっぺんに秋の様相と相成りました。空気が澄んで乾いて癖っ毛ぼゎぼゎがきれいなストレートになってくると、それと反比例するように指先やかかと、唇が荒れてきます。これが秋を実感する私の目安。そして季節の変わり目、ある日を境に突然体の状態がふっと変わるのを実感するのです。夏の疲れが消えた訳ではないけれど、一時期のどうしようもない疲労感からは一応抜け出せた感じがします。

すさまじい台風が来ました。2回目の連休もありました。予定があれやこれやと変更になり、限りある時間の中にぎゅうぎゅうに予定を詰め・・・さぁ何やってんだか?と思う時がなきにしもあらず。

レッスンしていていろいろ伝えたい事が出てくるのに、練習方法のアイデアが思い浮かぶのに、それを時間内に全て納める事ができずにどうにか強引に終わらせようとするのが、思いのほかストレスとなっている事に気付きました。夢中になっていると時間を忘れる。時間を気にしているとレッスンの中身が薄くなってしまう。スケジュールが決まっているから仕方ないのですが、何かを追求しようとする時に時間制限はいらない・・・。

マルティヌーの室内楽も始めたばかりの頃は本当に大変だったのですが、いつの間に本番は3日後となっています。伊賀さん青木くんのこのシリーズ、その年のテーマとなる作曲家を1人定めて、ヴァイオリン・ソナタとチェロ・ソナタ、ピアノ・トリオを1曲ずつ(場合によってはプラスアルファ)入れるというプログラムで毎年行っています。さすがにその3曲全てを弾いた事があるという年は今までなかったですが、1〜2曲はレパートリーに入っていたので、準備はその分楽でした。が、今年のマルティヌーはどれも弾いた事はおろか、聴いた事もない。そんなゼロの状態からいきなり始めました。その作曲家のスタイルや好んで使う響きを情報として持っているという事が、普段演奏するにあたってどれほど役に立っているか、思い知らされた気がします。初見の授業で、初見は「予測と確認、そして修正」だという事を言うのですが、その作曲家について情報がないまま楽譜を見ると言う事は、あの膨大な音符の一つ一つからさまざまな記号の諸々に目を走らせ、そして考える事。読む方も大変ですが、書く方はもっと大変?なんて事に思いを巡らせました。

あ、先の「予測と確認、そして修正」、これだけではわかりにくいので説明します。「多分次はこんな和音が来るだろう」とか「あ、このメロディーは最初に出てきたテーマと同じだから、その後も同じかな?」とか弾きながら予測し、きっとそうだろうと仮定し、その通りか弾き進めながら確認してゆきます。その予測を裏切る音符が譜面に書かれていたら、慌てて脳味噌の中の情報を修正し、目に入る音符をそのまま受け入れて弾いていく、と。こんな感じです。なので初見(譜読みも同じ)はただ早く楽譜を読めるかどうかだけではなく、和声や形式、果ては音楽史(音楽のスタイルなどもそこから派生してくるので)などいろいろな知識が総動員されているのです。

というところでそろそろ出勤の準備を。続き(?)はまた明日に。今日も朝一からです・・・。



2011年9月20日(火)             「2011大阪クラシック」

今月1回目の連休が終わりました。ゆったりと過ごせた大阪から東京に戻ってから、いつも以上に追われた生活が続いています。大阪も暑いと思ったけれど、東京の方が湿気が多い・・・夏好きを返上しようかと思う今年の暑さでしたが、やっと涼しくなりそう?今空気はひんやりしています。

さて、遅くなりましたが大阪クラシックのご報告を。お陰様で今回も楽しく弾かせて頂く事ができました。前回はたくさんのお客様がいらして下さいましたが、だからと言って今回も同じようにたくさんの方がいらして下さる保証はない訳で、ちょっと心配でした。当日は今一つアドレナリンが出きらぬままに、一番暑〜い時間帯にゆるゆると出掛けましたが、なんば駅に着いて地下鉄構内から続いているビルの地下入り口から入ろうとしたら、なんと開場約2時間前にして既に並んで下さっているお客様が・・・!そこで一気にスイッチが入りました。

着いて約30分はリハーサルの予定でしたが、その最中にスタッフの方からびっくりする情報が入りました。お客様が既に駅の改札まで並んでいらっしゃるので、開場を早めたいとの事。という訳で少し早めにリハーサルを終わらせたのですが、開演までまだ時間があります。どうも落ち着かないものの、何をしたら良いのか・・・。実はトーク、何を話すのか今回も殆ど決めていませんでした。どうにかつなげれば2人いるんだから何とかなるだろうという感じで、結局決められず。それにしても去年よりピアノがいい音を出してくれている・・・ここのピアノは年代物のベーゼンドルファー。会場のつくりもあってよく響くのですが、前回より味わい深い響きがするなぁと思ったのです。昨年もお世話になった調律師さんのお陰です。

という訳で、何だか心の準備もしっかりできぬままに舞台に出て行きましたが、昨年にも増してたくさんの方がいらして下さったように見えました。昨年聴いて下さった方もかなりいらっしゃるのではないかと、何の確証もないのにそんな風に思え、会場の雰囲気はあたたかかったです。小さなお子さんもたくさん、そして立ち見の方や通路の床に座っていらっしゃる方、弾いている私たちの背中側にも、そして目の前の楽譜からちょっと視線を外すとその後ろにもたくさんのお客様がいらっしゃいました。トークで昨年も確か話しましたが、チャキの江戸っ子が大阪で弾かせて頂くのは大変勇気が要ります。それでも受け入れて下さる温かさを感じました。

今回のために新たに準備したのは、バーンスタインのキャンディード序曲とアルベニスのアラゴンの2曲。グリーグのノルウェー舞曲は3月の東京のリサイタルを含め、ちょこちょことあちこちで弾かせて頂いています。今回の演奏が決定したのはいつだったか、夏休みも近い頃だったかと思います。時間も無い中、すぐプログラムを決めてお知らせしなければならず、慌てふためきつつもかなり考えました。いろいろな候補がいくつも挙がっては消えていったのですが、初見で弾いてみたたくさんの曲の中でぴんときたのがバーンスタインのキャンディード序曲。古典の曲でおちついて始める事を当初は想定していたのですが、それを覆せるほどのインパクトがあり、また「序曲」だからプログラムの最初にぴったりかと思って決めました。全部で30分(といいつつ実際はアンコールで延びた)のプログラムなので、2曲目はもうメインの曲。20分弱の曲もいろいろ探したのですが、バーンスタインに見事につながる曲が見つからず、去年大阪の皆様にお聴かせしていないグリーグが時間的にもぴったりで、また曲も大好きなのでこれに。最後に弾いたアルベニスのアラゴン、実はアンコール用に考えていました。昨年のシャブリエのエスパーニャに味を占め、スペインものを探していたら発見!楽譜に特に書いていないので、アルベニス本人がソロ曲から連弾用に編曲したものと思われますが、これもある時は心地よく、ある時は鮮やか、スペインの魅力満載の曲です。弾いている内にアンコールにするのはもったいなく、本プログラムに入れようという事になり、アンコールは結局昨年演奏したエスパーニャをもう一度、という事にしました。

弾いている最中に頭をよぎった事があります。連弾デビューが昨年の大阪クラシック、つまりこれで1年経ったんだなぁという事。そして東京でもお披露目と思って楽しみに準備していた連弾リサイタル、よりによって3月11日に震災に遭い、紆余曲折を経て2週間後に延期公演を果たした事。その間いろいろな事を考えましたし、25日の演奏に際して感じた事は一生忘れないでしょう。そんな風に1年の間に2つの出発点があり、今につながっている・・・1年前には想像しなかった事でした。アンコール2曲目に演奏するかどうか迷っていた、フォーレのレクイエムから「ピエ・イエズス」。大阪の皆様にも聴いて頂けて、貴重なひとときを一緒に過ごせた事に感謝しています。

今回も演奏の機会を頂けた事は本当に嬉しく、お客様の皆様と楽しい時間が過ごせました。連弾はやはり大ホールよりもこじんまりとした空間で、お客様が近くにいらして一緒に楽しんで頂く、そんな風に演奏する方がいい、と確信も持てました。弾き終わってからも自分自身では本番の事がよく分かっていないような不思議な精神状態でしたが、お帰りになる皆様にご挨拶でき、直接お話も出来、少しずつ現実に返っていった感じでした。トークも実はよく覚えていませんが、アンコールのエスパーニャで「この1年で私たちがちゃんと成長したかどうか聴いて頂きたいです」みたいな事を話したような覚えがあります。そのお答え、帰り際のお客様から「ずっと進歩したよ」と言って頂けました。昨年に引き続き、長い時間並んで聴きに来て下さっているんだと思うと、本当に嬉しいです。

今回いらして下さったたくさんのお客様、お暑い中並んで頂き、そして聴いて下さり、ありがとうございました。大阪クラシックのスタッフの皆様、カフェ・ド・ラペの皆様、調律師さん・・・大変お世話になりました。本当にありがとうございました。ぜひまた聴いて頂きたく、また皆様にお会いしたいです。

原田さんのブログには写真付きでいろいろ書いてありますので、よろしかったらリンクのページからそちらもご覧下さい。

ところで、コンサート情報に新たな情報を書きました。来月早々にある毎年恒例の伊賀さん青木くんの室内楽のコンサート、今年はオール・マルティヌー・プログラムです。これについては改めて書くつもりですが、今その合わせがびっしりで、またまたいっぱいいっぱいの毎日です。

学校へ行く時間が迫ってきました。・・・あぁ時間がない・・・。




2011年9月10日(土)             「ゆったり」

早い・・・!と書いてから、もう10日経ってしまいました。今日が本番です。

木曜に学校が終わってから最終便で大阪に直行。それまでは本当にゆとりがない生活でした。新学期の最初の週というのはいろいろする事があるもの。レッスンでは、夏休みの宿題をとりあえず全部聴くのはもちろん、夏休みをどんな風に過ごしたか話を聞かせてもらい、年度末の試験に何を弾くか、また後期の半年間でどんな曲を勉強するか、全員と話をします。講習会でレッスンを受けたりコンサートを聴いたり音楽に浸かっていた人あれば、オペラやブラスなどでひたすら練習をしていた人もあり、コンクールにひと夏を費やした人もあり、旅をしていた人もあり・・・話を聞いていてなんだかうらやましくなってしまいました。そんな過ごし方が出来るのは学生の特権だから。

さて。大阪に来てからはゆったりゆったりとした時間の中で過ごしています。普段の3倍位寝たらいっぺんに体の調子も精神状態もよくなりました。窓を開けて、風に吹かれ、空を眺め、日射しをあび、ツクツクボウシの声を聞き、草の香りを嗅ぎ、時計は見ず、久しぶりにCDをかけ、ゆったりとした気持ちで美味しく食事をし、ペースを落として合わせの確認をし・・・こういう時間の使い方ができるのは贅沢だとつくづく思います。

黄金色に今まさに色づこうとする田んぼが目の前に広がり、遠くに山並みが広がり・・・こういうところに今いるからこそ、今日が本番だという実感が未だわきません。大阪市内に入ればアドレナリンが出て気持ちが一気に切り替わるかと思いますが。

今日もこちらは暑く、市内は33度になるそうです。そんな炎天下、お客様に並んで頂くのは大変心苦しいですが、もしお時間がありましたらなんばのカフェ・ド・ラペにお越し下さい。楽しい時間を皆様と分かち合えますように。

後ほど向かいます。しかし暑い・・・。


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