ひとりごと(2011年3月分)

2011年3月20日(日)              「決断」

あれから1週間とちょっと、時が流れました。長かったような短かったような、そしていつもと全く違う時間の流れ・・・。

毎日毎日朝早起きして電車に乗り、1日中音楽について考え、ピアノを弾き、夜遅く楽譜でいっぱいの重いバッグに引きずられるようにして帰宅する。そんな過ごし方をしていたのが信じられない位、あれから一度もピアノに触らなかったし、音楽も聴きませんでした。そういう気持ちに全くなれなくて、全部の指の爪の角にあった深いひび割れがいつしか綺麗に治っています。考えた事もたくさんあったし、逆に考えないようにした事もあったし、でも一体いつになったら普段の自分に戻るんだ?と思うもうひとりの自分が、最近頭をもたげていました。ニュースで見る被害の状況にショックを受け、そして余震と放射能の心配でいっぱいいっぱいになっていた時、大阪にいる原田さんと話して初めて本当の気持ちがどこにあるか気付く事ができたのです。そしてなぜこの演奏会を企画したのか、その初心も。

時期を同じくして、卒業式を控えた学生さん数名にメールを書いていました。大学の4年間で学んだ音楽を携えて世の中に出たら、どうやって社会とつながってゆけるか、音楽を通じて何ができるか、いつも考えていてほしい。そう書きながら、今の自分は何をしているんだ?と気付きました。そしてもうひとつひっかかったのは、今現在、世の中のコンサートがことごとく中止になっているらしいと言う事。私自身いろいろ地震の影響を心配して延期公演を決断する事がなかなかできなかったのに、逆にそれを聞いて、音楽が生活の中から消えていいのか?という思いに駆られました。

そう思ったら決断は早い。チャリティー公演としてやらせて頂こうと、気持ちが一気に切り替わりました。いきなりスパートしていますが、そうは言っても今度こそは、本当に何から何まで自分たちで動かねばならなくなりました。と言う訳でピアノに専念する事は無理そうですが、今私たちがやろうとしている事、したい事が何か、はっきり見えているので迷いは全く無し。それでもコンサート自体を安全に終わらせなければ意味がないので、それについてはいろいろ考えています。

このコンサートにつきましては、2月あたりからちょくちょく原田さんがブログに書いてくれています。私が書きたいと思っているのに文章にまとめられなくて困っている事、見事にまとめてくれているので、よろしかったらそちらもご覧下さい(リンクのページからどうぞ)。・・・って逃げてはいけないのですが、とにかく今は眠いっ。今日はこれから原田さんが大阪から戻ってきて、あと数日、息もつけない日々になりそうです。とにかく決断できたので、後はやるのみ。

おやすみなさい・・・。



2011年3月16日(水)              「公演中止その後」

中止のお知らせをしたまま数日が経ちました。このサイトにはあり得ない程アクセス数が増えているので、その後どうなったか気にして下さる方がたくさんいらっしゃるのではないかと思い、中途経過を記そうと思います。

結論から申しますと、まだ延期公演を決断するには至っていません。実は今月末に延期公演をするつもりで日程をあけて頂いてあるのですが、いろいろ不安要素があり、決断はその状況をみてから・・・と思っています。余震はおさまるどころか、震源地が南の方におりて来て、未だ地震は続いています。当初より電車の運行も大分落ち着いたようですが、いらして下さった皆さんにちゃんとお帰り頂く事が可能か、計画停電の予定も直前までわからないのに演奏会の最中に停電になったらどうするのか、そして何よりも気がかりなのは原発・・・この先いったいどうなってしまうのか、心配で仕方ないのです。開演を決断したらその時は、公演に向けてまっしぐらに進んで行かないとならないと思っています。不安要素があるとは言え、音楽に100%、もしくは限りなく100パーセントに近く集中できなければ、お客様に申し訳ないので。音楽で自分の思いを伝える事こそが大切にしている事なのに、自分自身こんな不安な気持ちで音楽にもピアノにも向かえないというのが正直なところです。

被災されたたくさんの方々の事を思えば、こんな小さな事で迷っていていいのか、そんな風に思って全く書けなかったのもあります。被災地にいらっしゃる知人の方々、被災地の出身の学生さん、今一体どうされている事だろう。ご無事でいらっしゃると信じるしかなく、祈るしかありません・・・。

今回なぜこのコンサートを企画したか、その初心を思い出してみました。そしてやはりどうしても弾きたいという気持ちが心の奥底に残っている事を、地震以来初めて思い出しました。気が張っていてそんな事さえ忘れていたし、それなのにピアノの前に座る事さえできない。自分のちっぽけさ、そして無力さを悔しく思います。もっと頑張れるはずなのにどうしたんだか・・・。今初めて自分の心に向かい合ったような気がしました。

本来だったら3月後半、東北で伴奏の仕事があり、それに伴う合わせがあり、また例年お手伝いしている講習会が1週間あり、めいっぱい忙しくしている予定でしたが、全て中止となりました。でも今、ここで出来る事をするしかないのです。そして、これ以上被害が大きくなりませんように、これ以上悪い方に情勢が傾きませんように、ただ祈るのみです。

公演延期の日程、そしてそれに伴う払い戻しにつきましては、改めてお知らせ致します。お待たせして申し訳ありませんが、今しばらくお待ち下さい。

皆様もくれぐれも気をつけてお過ごし下さい・・・。



2011年3月12日(土)              「公演中止」

未曾有の大災害が起きました。ニュースを見て居ても立ってもいられず、今何もできないもどかしさがあり、またどうされているか心配な方々のお顔が浮かびます。どうかご無事でいらっしゃいますように。そしてこれ以上被害がひろがりませんように、被害に遭われた方々へ心よりお見舞いを申し上げます。

前回の記事を書いたのは、当日の明け方でした。毎日朝早く家を出ていたので、当日は15時からリハーサル、だったら珍しく遅くまで寝ていられると思ったのです。自分のパートの独り練習を最後にしようと思っていたのに、他の準備に時間がかかり、結局自分の練習は明け方となってしまいました。ついつい二度寝して、どうにか起きたのは家を出る1時間前。家を出る時、今日は日射しが妙にまぶしいと思ったのですが、こんな1日になるとは・・・。

会場に入る直前に地震に遭い、街中の広いところに出て揺れがおさまるのを待ちました。建物がゆらゆらガタガタ揺れるのを見て怖かったのですが、とりあえず会場入り。でも結局(中くらいの)揺れがおさまらないのでリハーサルも全くできず、結局ワンセグで情報をずっと見ていました。電車が全てストップしているので中止を決定したのが16時半、それから中止の連絡をし、今後を見越して食料と日用品を調達し、腹ごしらえをし・・・電車も止まり車も動かず、泊めて頂く事にし(ありがとうございます)、夜中も何度も飛び起き、朝早く出発し・・・ひどい渋滞の中どうにか家にたどり着きました。

本番を迎えるその日まで、毎日毎日合わせを重ねていたのが信じられないほど、ピアノが今遠く感じられます。いや、ピアノが決して遠い存在な訳ではないけれど、それ位この大災害が心にもたらす影響が大きくて・・・。いろいろ考える事があり、不安も心配も押さえられないほど大きく大きく膨らんでいます。それでも・・・中止にしてしまう訳にはいかない、そう思う気持ちが大きくて延期公演を検討しています。ただですらこの地震でスケジュールがかなり大きく変更になっているのに、そこに更に付け加えるのは大変ですが・・・でも弾く事でしか伝えられない事もあるのだと思いたい。決まりましたらお知らせ致します。

不安な夜が来ました。被災地の方々のお心を思うと言葉もありません。何も起きない夜でありますように、安全に気をつけてお過ごし下さい・・・。




2011年3月11日(金)              「連弾」

あっという間に3月、そして今日はデュオ・リサイタル当日です。

大阪缶詰生活もついこの間の事のような気がするのに、あれからもう半月弱。その間、生まれて数年の新曲を短期間で譜読みして合わせ、舞台に乗せるという大仕事がありました。それが終わるまではその曲と今日のデュオの合わせを掛け持ちし、スケジュールも気持ちもびっしりでした。その後は連弾だけになりましたが、部屋に1日缶詰めというような合わせの日々。そんなに時間が経った感覚は全くないのに、朝から始めていつしか夜が来ている。帰宅したらしばらくぼぉっとし、お風呂で寝てしまい、その後気を取り直して翌日の準備をし、いつの間にか寝てしまっている・・・という生活でした。とてもひとりごとまで頭が回らず、ごめんなさい。

このデュオ、自主企画で且つマネジメントもお願いしていないので、何から何まで自分たちの仕事なのです。こちらは切羽詰まって本番数日前に曲目解説を書き、校正をしていましたが、それと同時進行で私自身のリサイタルのチラシ作成なども入り、訳分からないどたばた生活でした。チラシもちょうど届いたのですが、とても今情報をアップしている暇がないので、また改めます。

それにしても今回のプログラム、何だか大変・・・。よりどりみどりのお弁当みたいに魅力いろいろ。シンプルでも奥の深いモーツァルトに、音がたくさん詰まって壮大なフンメル、民族的要素の濃いグリーグ、これまた純粋でファンタジーに溢れたラヴェル、そして色彩豊かで楽しいシャブリエ。当然連弾としての難しさもさまざまで、単に合わせる事が難しい曲もあれば、20本の指でバランスよいハーモニーを創り上げる難しさもあり、体がぶつかってしまう姿勢でしなやかに弾くのは困難、二人羽織さながら自分で弾かないのにペダルを駆使するのも複雑。でも何と言っても難しいのは、自分のものでもない慣れていない楽器を扱い、そこから1つの音楽を創り上げる事。

連弾だけのプログラムを組んだのは全く初めてですが、2台ピアノよりずっとずっと奥が深く難しいと今回実感しました。独りでさらっていた時間はむしろ殆どなく、常に一緒に合わせていたのですが、考え方は旋律楽器と一緒。1人当たりの音数はソロよりむしろ少ないので、旋律をどう歌いあげるか突き詰める必要があり、そのラインを4本同時に鳴らしたらどうなるか、そんな事を考えながらいつも弾いています。最終目標はもちろん、そういう難しさ全てを超えたところにありますが・・・。

今回はお陰様で早々とチケットが完売し、今ご案内はできないのですが、「今日初めて生まれた音楽」が出来れば、と思っています。原田さんと私は身長が一緒で椅子の高さも一緒なのですが、腕の長さ自体が違い、前腕と上腕の長さの割合が全く違います。と言う訳で連弾は普通腕同士よくぶつかるのに、意外にも器用によけていたりおさまるところにおさまっていたりして、そんなところも見どころかもしれません(?)。

と言う訳でちょっと今から寝ます。いい天気みたいだけど花粉がすごそう・・・。


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