ひとりごと(2011年2月分)

2011年2月27日(日)              「春を探しに」

大阪缶詰生活も今日で終わり。こういう過ごし方が日頃できたらどんなにいいかと思いつつ、現実にはそうはありえない話。

前夜羽田最終便で大阪入りし、初日は個人練習をちょっとと合わせをがっつり。2日目は合わせをしっかり、でも前日の「貯金」が有ったのと、あまりにも良いお天気で外が暖かかったのとで、春を探しにお散歩へ。遠くに真っ白な梅の霞が見えて気になって仕方なかったので、そこへ行ってみました。土手に上ると稲の刈られた後の田んぼとあぜ道があり、梅林は更にその上。春の野の草ぼうぼうの土手を上ったらそこに梅林が広がっていました。梅の甘酸っぱい香りに、土や草やお日様の香り。振り返れば町が見渡せ、そこに花粉いっぱいの(!)さわやかな風が吹き、こんなのんびり気分も久しぶり。ちょっと息抜きしたら戻りました。花粉がなければゆっくり日向ぼっこするのに・・・。

昔むかし、今は亡き祖母と春のお彼岸にお墓参りに行った時の事を思い出しました。川べりの土手を歩くとそこにタンポポやオオイヌノフグリ、ナズナやハコベ、ホトケノザなど春の野の草がいっぱいで、川の水面も日射しを反射してキラキラ眩しい。そんなところから春を感じとっていた時がありました。

夕日は初日も見られましたが、後わずかというところで雲隠れ。昨日は本当によく晴れていて、地平線まで沈むところを、そして沈んだ後の夕暮れの移り変わりもずっと眺めていました。あまりにも美しくて、そんな晴れた時にめぐり合う事も滅多にないのなら見るしかない、と。ちょっとだけ家の前のあぜ道に出てみたら、この暖かさで鶯が早々と鳴いているのが何度も何度も聞こえました。夜は夜で、東京ではあり得ない位星がくっきりとたくさん見え、しばし寒い中、夜空を眺めておりました。

自然を感じる事もゆったり過ごす事も、音楽を育てるには大切な事。睡眠も、普段ではありえないほどきちんと取れました。

さて肝心要の連弾。今回のプログラムには元々連弾曲として書かれたもの、オリジナルがオーケストラ曲、後からオーケストラに直したものの3種類が存在します。モーツァルトとフンメルはある意味とてもピアニスティック、弾く事そのものに神経を払う事も結構多いです。グリーグ、ラヴェル、シャブリエはオーケストラからイメージをもらっているので、どんな楽器とかどの奏法かというあたりから響きを創っていく感じ。相手の原田さんからは、自分の中にないいろいろなアイデアを教えてもらっています。合わせが一筋縄でいかないからこそ面白いのですが、やはりこれ位集中して合わせをしないと、1つのプログラムとして演奏を考えるのは大変だと実感します。

最終日の今日は合わせはこれから。荷物をまとめて夜に関西空港から東京へ帰る事を思えば時間がないっ。明日から別の本番に備えて怒涛の日々。数日連弾はお預けですが、そんな事より早く合わせをしないと・・・。



2011年2月26日(土)              「缶詰日記」

東京は春一番が吹いたらしいと聞きましたが・・・今は大阪に居ます。こっちは今日はぽかぽか。春の日射しの降り注ぐ中で更新しています。ここで何をしているかと言えば、もちろん連弾の合わせ。前回やっと試験が終わって・・・という事を書きましたが、それでも試験期間に目をつぶっていた事も含めていろいろ降ってきているので、なかなか集中できずじまい。なのでリサイタル前に缶詰になって合わせをしようと、大分前から企てていたのです。

今は情報も遮断した異空間住まい。新聞やらテレビやら(普段も天気予報とニュース位しか見ないけど)見ていないので、世の中の事が全然分かりませんが、その代わり音楽には集中できています。ピアノ1台、合わせをメインに、でも2人とも個人練習をちょっとするので、丸1日フルに音が鳴っているような状態。そんな中、頭の中でもやもやしていた音が少しずつ少しずつ音楽として形づくられていくような、そんな感じがしています。

それにしてもやらねばならぬちょこまかとした事、意外に多くて〜。この1週間ほどは指が本当によく割れる。先日は合わせ中に爪の際がパカンと割れる流血事件がありました。そんな訳でまず弾き始める前に、丁寧に各指のひび割れに水絆創膏を2度塗り(それでもはがれるので日に2回位塗り直す)。連弾は2人で楽譜1冊なので、実際に使っている楽譜の横に使っていない楽譜を広げておいて、同じ書き込みを2冊分してゆく(それをしないと独りでさらう時に不便)。この書く分量が結構多いのです。指使いも手がぶつかる事を踏まえると、変更に次ぐまた変更。楽譜も、右側がプリモ(第一奏者)で左側がセコンド(第二奏者)と分けて書いてあるので、スコアを見慣れている身には不便。常に両側見比べ、鳴る音を想像しなければならない。等々。

書きたい事も本当にたくさんあるけれど、合わせの開始時間をもう過ぎてしまったのでここまで。文章としてひどい状態なのは承知の上ですが、キリがないので更新してしまいます。後でちょこっと直したり手を加えたりするかもしれませんが、いい音楽のためにお許しを。後13日。

しかしここは空が広く、稲の刈り取られた田んぼが広がる良いところ。花粉もいっぱい飛んでいるけれど、あとで鳥の鳴き声と春の風を感じにお散歩に行こう・・・。




2011年2月22日(火)              「掛け持ち」

先週末でやっと一連の実技試験が終わりました。今だから言えるのですが、本当に毎日毎日いろいろな意味で大変で・・・。終わるまでは、終わった瞬間を楽しみに想像していました。ホッとするのか、嬉しくなるのか、達成感があるのか、どれかだろうと思っていましたが、実際は終わったという実感を持てないままいつしか終わっていたという感じ。最終日が一番人数が多く、そして大変な曲揃いなのに、なんとある会場での試験は午前の部開始が20分?遅れたのに何故か午後の部が15分早く始まり・・・もう1つの会場との時間の兼ね合いがぎりぎりだったもので、弾き終わるや否や次の事を考えている内に終わりました。

そこで思い出した出来事。学生時代の話なのでちょっとうろ覚えですが。

学生の頃から人と一緒に弾くのが好きで、試験の伴奏もたくさんお手伝い。ある年の事、いつも伴奏をしていた友人の試験がよりによって同じ日に。だからと言って降りる訳はなく、試験の順番を確認したら、自分のピアノの試験は朝(石田の「い」は高校から学部、院に入ってもピアノ科の中で出席番号1番でした)、間違いなく間に合うだろうと踏んでお引き受けしたのでした。ところがなんと、その年に限ってだか初めてだか、演奏は出席番号後ろからになったのです。これはもしかしたらぶつかるかも?自分の演奏を待つ間も気が気でない。自分の心配ではなく、友人の順番が来た時に伴奏者不在だったら迷惑かけてしまいます。という訳で弾き終わったら即、直線距離30メートル(位?)の廊下を猛ダッシュ、何とかぎりぎり間に合ってホッとしました。今思えば、あの時からこんな事していたんだな・・・当時の伴奏にまつわるエピソード、いろいろ思い出しました。

さて、今回の実技試験を振り返る間もなく、次の事が降ってきています。とある経緯で、生まれてわずか数年の新曲を短期間で舞台に乗せる事になりました。即刻譜読みし、出来る限りの回数の合わせをセッティングし、必死で形にしてゆく。各々が弾けるようにするのはもちろんの事、合わせを重ねて一緒に音楽する事に少しずつ慣れ、一緒に楽譜を読みながら、作曲者が何を考えていたかを必死に探り、そこから想像した事や演奏上のアイデアを話し合う。そうやって一緒に音楽を創っていっても、本番では何が起こるか分からない。となると最終的な心のよりどころとなるのは相手への信頼だけ。でもこれさえあれば何とかなる、そんな風に思えます。本番まであとわずか・・・後はやるだけ。

そして連弾のリサイタル、こちらも気付けば残り半月ちょい。正気に戻れば恐るべき事・・・。これはさすがに去年から決まっていたものの、2人して今まで同じような怒涛の生活を送っていたので、肝心要の合わせはこれから。独りでないし楽譜を見られるし、プログラムの半分は昨秋の大阪での再演なので(と言ってももちろんちゃんと創り直します)、ソロのリサイタルより断然気持ちが楽ですが、音楽に、相手に、そして自分にどう向き合うか、これからが正念場です。あ、そうそう、事務的な事も今回全て自分達できりもりしているので、そっちの方も忘れずにやらなくては・・・。

・・・というどさくさで殆ど忘れかけていましたが、恒例のリサイタルの方も始動しています。やらなくてはならない事が多すぎる。とりあえずは上記のいろいろが終わるまでお預けです。不器用者にはいっぱいいっぱい・・・。

・・・なんて最中にも、なぜか考え事をしています。教える仕事に携わっていて思うのですが、教える内容は一体何を?。ピアノを教えると一口に言っても、弾く事にまつわる諸々のみならず、実際は解釈や練習の仕方や楽譜の読みこなし方、本番に対する向かい合い方、演奏の意義、音楽のさまざまな側面、舞台マナー、美意識、などなど。自ら考えるきっかけを提供する事が、演奏そのものについて教える内容より断然多いのかもしれません。どんな信念を持って生きていくか、それを見せる事と結局同じなのかも。

今更ですがやっとお雛様を出しました。お雛様に「早く出して〜」と言われているような気がして。ぼちぼち春ですね・・・。



2011年2月15日(火)              「ある雪の夜」

とんとご無沙汰しております・・・。

試験習慣、じゃなかった、試験週間もそろそろ終盤。補講や合わせ、おさらい会、果ては試験の審査などてんこ盛りで、朝9時前に学校に来て夜9時頃までびっしりという毎日ですが、今週は帰れる時間が毎日少〜しずつ早まってゆくのです。いろいろな事が既にぐちゃぐちゃになっていて、いつもは極力きちんきちんとこなしているこの性格でも無理が出てきていて・・・まずは明日の事をぬかりなくやり遂げる事に精一杯の日々です。という訳でメールを始め、いろいろな事に関してそのままにしてしまっている方へ、ごめんなさい。

とりあえず体調は不思議な位どうにかもっています。例年思うのですが、これ位神経が張り詰めていると逆に体が素直に言う事を聞いてくれるようです。こんなに無茶をしているのに体の疲れはむしろ全く感じず、あれもこれもやれていない〜という事に対して心の負担が大きくなってきているだけ。それに加え、先週は今までに感じた事のないような不思議な眠気を催す事が多く、泥の中にひきずりこまれるように電車の中でもお風呂の中でも寝入ってしまっていました。当然家での作業効率もガタ落ちで、どうしてこんなんだか・・・と思っていたらあぁ薬のせいか、と思い当たった訳です。今月に入ってから花粉症がひどくなり、薬を飲み始めているのですが、まだ2月なのに・・・これがゴールデンウィーク後まで続くかと思うと相当に憂鬱です。

学生さんも試験が近づくにつれ、演奏も心境も変わってゆきます。もともと1人1人曲が違うし、性格も違う。仕上がってゆく時の上行ラインの描き方も違う。当然私自身の向き合い方もそれぞれ変えているつもりですが、それぞれの合わせの間に休憩を取っている余裕もないので、レッスン室のドアをあければ次の学生さんが待っています。実は次の曲、まだ弾けていないところがあるから5分ばかりさらわせて〜と心の中で思っている事なきにしもあらず。でもそんな暇はないので目をしばたたかせながら楽譜に集中、耳は常に何か変化をとらえなければと120%開放、頭では限りある合わせの残り時間をカチャカチャと計算しつつ、順番に何をしてゆくべきか冷静に考え・・・頭と心の切り替えは素早く、感性のアンテナを常に尖らせておかなくてはと思いつつ、ピアノに向かっています。

なぜこんな状況なのに今日これを書く気になったか。それは雪だったから。

昨日はちょっと早く帰れたものの、どっと疲れが出て寝ていました。気がつけばこんこんこんこんと(あ、雪ではないですよ)眠り続け、メールも電話もいろいろ来ていたのにも気付かず。日付が変わる頃にガバと起きて外を見たら、なんと雪が積もっている!寝入った頃は雨だったのに。寝ぼけながらも雪の中にぶかぶかと足を踏みいれ、頑張って花をつけているパンジーとクリスマスローズを屋内に取り込みました。それからお風呂に入って頭が冴えてくるにつれ、いろいろ面倒な事が浮かび上がってきたのです。

今日はキチキチで予定を入れていた日。学内の別々の会場でサックスの卒業試験とクラリネットの試験があり、その伴奏を数名掛け持ちしています。全員分、試験直前にざっと通す程度の合わせを入れているのですが、午前に高校の授業があるため、ひとりだけ止む無く朝一にお願いしました。しかし、もし雪で電車が止まったり遅れたりしたら?大事な試験の直前の合わせがつぶれるような事があったら一大事!そしてこの試験週間のどたばたに紛れて、高校の授業の曲を昨日図書館で探すはずだったのをすっかり忘れていました。来週初見の試験なので、弦楽器のための何か面白そうな曲を数曲ピックアップしようと思っていたのです・・・。でも雪で授業は休講になる?でもならない事を見越して、今から家の中をひっくり返して楽譜を探さなきゃ。と思いつつ、試験の開始時間がそれぞれ変わったら・・・?ちゃんと余裕を見込んで試験会場をはしごする予定が、両方の会場で出番がかちあったらどうしよう?そんな風に頭の中でいろいろなシチュエーションが思い浮かんできて、一体何をどうしたらいいのかパニックになりかけています。いつもは冷静なのに、人間が勝手に動かせない気候が相手だとどうにもならない・・・?

その前にもっと大事な事。今日の曲は今さらわなければ。かくして夜な夜なこれからピアノにむかうのであります。変な時間に熟睡しちゃったから仕方ない。何はともあれ、今日という日が無事に進んでゆく事を祈るばかりです。

でも雪が更に積もったら?朝、道が凍っていたら?何を着て何を履いていけばいいんだか。替えを持って行ったら荷物重いだろうな。楽譜も今日はめちゃくちゃ重いし。ブツブツブツ・・・。


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