ひとりごと(2008年3月分)

2008年3月31日(月)          「喝」

雨の回数が増えてくると、春だなぁと思います。花粉症も相変わらずで、一番ひどいのは顔や首が赤く痒くなる湿疹、そして目の痒み。今年は喉や鼻の症状はそれほどでもないのが助かりますが、顔が痒いからって覆面して外を歩く訳にも行かないし、外に行くのがちょっと憂鬱。お医者さんがおっしゃるには、その人の弱いところに症状が出るとの事。皮膚と目、確かに・・・。

今日は今年度最後の日。というのとあまり関係ないけれど、続けて更新です。

私が講習会で伴奏をしている間、普段家でレッスンしているある生徒さんは(別の)講習会に行き、ある生徒さんは自ら企画したコンサートで弾き、そんな風にそれぞれに自分に向き合っていたようです。皆音大を出て仕事をしながら今も自分の時間を見つけてさらい、目標にむかって進んでいるのですが、その姿勢にこちらも勇気付けられます。

もう今週から学校へ行きます。早いもので学校勤めも7年目。伴奏の仕事を本格的に始めてから12年目。リサイタル始めてから今度で15回目。いつの間にかこんなに時間は経っているのに、ただただせわしない時間を送っている割には進歩が無いのでは?と、我に返ると恐ろしくなります。ん十年前に院を出た時はいきなりぽっと外に放り出されたような思いを味わい、またこの先どんな出来事が待ちうけ、どんな風に音楽と関わっていくのかさえ想像する事はできなかった。それを思えば、いつ消えてしまうか分からないけものみちではない、ちゃんと人の歩ける道がついたという事で、「ま、いっか〜」とも思います。

「ま、いっか〜」とは実は思っていないのですが、やはり発信ばかりしていると自分の中身が枯渇してくるような気がします。春休み中、そんな事を考えていました。ただ、何かを自分の中に採り入れるにしろ、その行動を起こすのにそれ相応のエネルギーが必要。そんな訳で冬眠中の動物のような過ごし方になってしまいました。

卒業生を送り出した後、新しい学生さんが入ってきます。今年はどんな顔ぶれで、そしてどんな授業にしよう?そろそろねじを巻いて自分に喝を入れなければ。

今日たまたま、中学時代にお世話になった先生からお葉書を頂きました。「学生時代から変わらず真面目に人生に取り組んでいるようで嬉しく思いますが、頑張り過ぎないように」と書かれていました。そういえば数年ぶりにゆっくり話が出来た昔の友人も、先日そんな事を言ってくれたっけ。そうやって見ていてくれる人がいるのはありがたい事です・・・。



2008年3月30日(日)          「歌う」

今がいったい「いつ」なのか分からなくなる今日この頃。寒いと思える日もあり、ゴールデンウィーク前のような気持ちいいお天気の日もあり、「あれ?まだ3月だよね?」と思う時もあり・・・。

先日のミニ・ライブにお越し下さった皆様、そしてたまたまそこに居合わせて聴いて下さった方々、ありがとうございました。前回も書きましたが、普通のコンサートと違ってとても心許なく、だからこそお客様がいらして下さってホッとし、またとてもありがたく思ったのでした。

さて、あれから1週間。更新もせずに何をしていたのかと言うと・・・「春休み」を取っていた訳ではありません。例年お手伝いしている弦楽器の講習会があり、ほぼ毎日朝から晩までびっしりのスケジュール、入れ替わり立ち代わり来る受講生の伴奏をひたすらしていました。学校が休みに入ってから、じっくり時間をかけて考えて行動する事に慣れてしまっていた為、初日は気持ちの切り替えに戸惑うばかり。ぼうぼうに生い茂る草原の中、道を切り拓きながら進むかの如く(?)1つ1つ瞬時に答えを出しながらいつしか動けるようになりましたが。そう言えば2月半ばまでそんな風に生活していたんだっけ・・・。

という訳でミニ・ライブの事は遠い彼方の出来事になってしまったので、思い起こしてから改めて書く事にします。

気がつけば桜がとっくに満開になっている。あれだけ冬が寒かったからこそ、そして毎日スタジオにお籠りしていたからこそ、何か幻を見ているような妙な感覚に襲われます。もっとゆっくり咲いてくれたら、「春が来た」という嬉しさを少しずつ実感できるのに。通り道に桜並木があって、行きは朝日を浴びる優しげな花を、帰りはライトアップされて妖しげな光を放つ花を、毎日眺めていました。

他の楽器のレッスンからいろいろなヒントを得られる、これは伴奏者ならではの特権でしょう。レッスンで先生のおっしゃる何を聞いても、結局は自分の事につなげてしまう。私だったらどうする?ピアノだったらどう置き換える?と。忘れてしまってはあまりにももったいないと思い、そんな先生の何気ない一言をたくさんメモしました。

そんな中で最も強く印象に残ったのは、「ヴァイオリンは歌う楽器だから」という先生のお言葉でした。いや、正にそれには同感なのですが、そういえば「ピアノは歌う楽器だから」なんて言われるのを聞いた事がないな、と。それが何というか、チクンと胸にささったのでした。いつも私の心の中にあるのは「ピアノでもっと歌いたい」という事、そして「ピアノだって歌える楽器」だと強く言いたいのです。

ピアノの場合、いろいろな先生のレッスンを見学させて頂く事も、長時間にわたってたくさんの受講生のレッスンを続けて聴かせて頂く事も、公開レッスンでない限りはあまり無い気がします(独りで弾く孤独な楽器だから?)。伴奏であれ、すばらしい先生方のレッスンに携われる機会がこんなにあるのは、本当にありがたい事。自分のレッスンにはなかなか自信が持てないのですが、これでいいんだとちょっと思えた事もあり、ヒントもいっぱい頂けました。

毎日大体7時間ほど伴奏しながらも、そうやっていろいろ音楽について思いをめぐらせていたのでした。そして気持ちも新たに新年度を迎えます。それにしても有意義な時間でした・・・。



2008年3月21日(金)          「銀河」

いつしか季節もすっかり春の装いとなりました。桜の開花予想では明後日頃もう咲くとか・・・。秋に植えつけたヒヤシンスやチューリップやフリージアなど、蕾をつけた茎を日々にょきにょき伸ばしています。

すっかりご無沙汰してしまいました。タワーレコードでのミニ・ライブ(&サイン会)ももう明日となりましたが、非常に気重です。なぜって、未だ何をしゃべるか決めていないので。

明日弾く曲も今月に入ってから決定しました。さすがにこれは練習をしなければならないので、「では前日に」という訳にはいかないのです。話す事が決まるのはぎりぎり。トーク付きコンサートもここ数回は、前日もしくはその日楽屋に入ってぶつぶつつぶやきながら予行練習?をしている有様です。割と何でも用意周到に準備するタチなのですが、原稿を読み上げる訳ではないので、その日の気分で出てこない事は準備していても多分しゃべれない。従って1週間も前から考えてもきっと気分が変わるだろうと、もう独りの自分がタカをくくっているような気がするのです。

ま、ともかく明日までには何をお話しするか考えます(が期待しないでほしい・・・)。明日は晴れて暖かくなるそうですね。お時間がおありでしたら、CDのお買い物ついでにふらっとタワーレコード渋谷店までいらして下さい。よろしくお願い致します。

気がつけば春休みも残りわずか。学校のスケジュールでは、夏休みよりも冬休みよりも(洗足では秋休みがもとより無い)春休みが一番長いのですが、ここ数年は録音や演奏会で春はいつも追われがち。そんな訳で、ためにためた雑用を一つずつ片付け、まともな睡眠時間を確保できたのはこの休みの収穫でした。

その中で結構手間がかかったのはパソコン。この半年ほどは、起動して迷惑メールを全て処理して、時には固まってしまうので再起動し、まともに仕事できるようになるまでのその時間が半端ではありませんでした。時間がなくてパソコンを開けるのを諦めるのも度々。という訳でいろいろと整理し、設定を変え、その結果おかしくなったところを元に戻し・・・これで少し軽くなりました。こういうまとまった時間が無かったら絶対できないもので、今とりかかれて助かりました。

リサイタル関連の事務的な事も動き始めています。チケットも発売され、チラシもとっくに出来てきていますが未だアップできず、もう少しお待ち下さい。

少し前の事になりますが、ブルートレイン「銀河」の廃止、新聞でもニュースでも見かけました。何回か乗った事があったっけ。どんなシチュエーションだったか思い出せないのですが、長い休みごとにどこかにふらっとでかけていた学生時代の事かと思います。深夜バスは窮屈で首が痛くなるので(1度だけ乗ってみた)駄目なのですが、寝台列車にがたんごとんと揺られながら低い天井(?)を見上げて考え事をしたり、枕もとの電気をつけて頬杖をつきながら文庫本を読んだりするのが好きだったのです。どっちにしろいつしかその気持ちのいい揺れの中、眠ってしまったりするのですが。今は東京−大阪間といえば絶対新幹線・・・と思ってしまうので、時間が過ぎてゆく事自体をゆったり味わえた学生時代の懐かしい思い出なのです。でももう乗れないなんて寂しい。

決して鉄道マニアではないのですが、そういえば時刻表を見るのも好きでした。ヨーロッパに行った時はレッスンを受け、友人を訪ね・・・という感じなので、観光地よりはいくらか小さい街に寄る事の方が多く、移動は全て鉄道。予定もキツキツではなかったので、トーマスクックの時刻表を眺めてどこで乗り換え?どこで降りる?といつも考えていました。到着や出発も決して時刻通りには行かず、また切符を買うのにとんでもない時間待たされたりするので、読みを外すと1日の予定がぱぁになってしまう恐れもあり、スーツケース(20キロ弱あったはず)を持ったままホームを本気で走って何とか列車に飛び乗れた事もありました。

芋づる式に思い出されてきましたが、学生時代はいろいろなところによく行きました。どれもが結構不便な思いをしながらでしたが、それも今となれば笑い話・・・。



2008年3月4日(火)          「2008年のプログラム」

早いもので3月、もうお雛様もしまいました。今年は少し早めに、リサイタルのプログラムについて書く事にします。

今回の選曲は結構頭を悩ませました。いつもはリサイタルが終わる前から、その次の回で弾きたいものが見えているものですが・・・今回はてんでばらばらに弾きたいものが浮かんで来ました。弾きたいものがばらばらに浮かんだところで、つながりのあるプログラムにならないとどうしようもない訳で・・・。

そのばらばらの願望はこんな感じでした。

モーツァルトは久しぶりだから弾きたい。
ショパンもとんとご無沙汰だから入れようかな。
フォーレは昨年秋の室内楽で突然見えてきた気がするからやってみたい。
メインはブラームスの3番のソナタで決まり。

確かに頭に浮かんだ時はばらばらでしたが、モーツァルトもショパンもフォーレも時代と国こそ違え、3人とも「歌う」事が特徴の、繊細な書法の作曲家です。ここまで作曲家が決まればどうにかなりそうな気もするのですが、何せショパンとフォーレといえばピース(小曲)ばかり。それをどう選んでどう組み合わせてどういう順番にするか。それを考えるだけで頭がどうにかしそうでした。

メインに考えたのはブラームスの3番のソナタ、これは1曲で35分はかかるので後半はこれだけ。というところで前半の所要時間が割り出せます。プログラムはトータル75〜80分くらい(これでも長い)、従って前半に45分詰めてしまったら長すぎるので、せめて40分で収めよう。後半と対比させて小曲を並べてみるつもりですが、曲が多いだけでもかなり重いイメージになるので、最初に弾くものをモーツァルトのKv.330のソナタと仮に決めました。雰囲気的にも規模でも小さめのソナタです。

そしてショパンとフォーレの小品、とにかく1つずつ決めていかないと組み合わせようもないという事で、フォーレよりはよく分かっているショパンから考えました。弾きたいものはたくさんあっても今まで自主企画でとり上げたものは除くとなると、候補はかなり絞られます。そこから即興曲の第3番をまず選びました。それに組み合わせるものは、あまり華やか過ぎないもの、主張しすぎないもの。なぜかというと、順番としては時代的に新しいフォーレを後に弾きたいので。ショパンで華やかなものをもってきてしまうと、前半をフォーレでしめるに当たって収まりが悪くなってしまうから。という訳で、消去法で残ったのがノクターンでした。かつて弾いたもの以外で幾つかを考えましたが、フォーレをまず決めてから組み合わせ的にいいものを選ぼうと、ちょっとここでは置いておきます。

一番悩んだのはフォーレ。いろいろなピアニストのフォーレ全集を、それも全曲を聴きましたが、ふとショパンとフォーレの同じ曲を比較するプログラムも面白いかも、と思いつきました。フォーレで特に弾いてみたい曲はノクターンとバルカローレでしたが、ショパンに即興曲を入れたのでフォーレの即興曲からも1曲ピックアップ。ショパンのバルカローレは既に弾いてしまったので、フォーレのバルカローレを真ん中にして即興曲とノクターンをはさみ、前後対称のプログラムにしようかと考えました。

フォーレのノクターンはすてきなものばかりで、初期にも中期にも弾きたい曲はありましたが、秋に室内楽の後期作品ばかり取り組んだので今がチャンスと、ノクターンは思い切って全て後期作品に。全ピアノ曲最後の作品のノクターン13番は、即興曲2番から続けると唐突かと思い、ワンクッションも兼ねて(もちろん曲自体もとても気に入っていますが)ノクターンの11番を入れてみました。と、ここで所要時間を考えたらとてもバルカローレが入る余地はないと気付き、バルカローレは今回は無し。そして保留にしておいたショパンのノクターンを何にするか。ここで今まで決まった曲の調性を考えました。候補が幾つかあったのですが、並べてみた時の調性の関連からノクターンの4番。

という訳で前半はモーツァルトのソナタKv.330 ハ長調、ショパンのノクターン4番 ヘ長調、ショパンの即興曲3番 変ト長調、フォーレの即興曲2番 ヘ短調、フォーレのノクターン11番 嬰へ短調、フォーレのノクターン13番 ロ短調、とあいなりました。後半のブラームスのソナタ3番 ヘ短調も含めると、何だか数字は3や1が多いし、調性も何かと関連があったりします。最初と最後がソナタ、その内側にノクターン、真ん中に即興曲、3重構造の入れ子みたいなプログラムです。考えてみれば(組曲や曲集ではない)ピースをたくさん集めたプログラムは恐らく初めて。やはりつながりの意味を考えるのは難しく、何だか語呂合わせみたいな遊びをしているような妙な感覚にもなります・・・。

個々の曲については改めて書くつもりです。

先日片づけをしていたら書きなぐりのメモが出てきました。今と全く違う、ショパンとフォーレの選曲でのプログラム。自分でも「そうだっけ?」と思う位だから、かなり前のものです。一体いつから考えていたのか・・・今からみれば未熟なプログラムです。モーツァルトにもっと長いソナタを持ってきてショパンをなしにする案も考えたし、逆にショパンに華やかな曲を持ってきてフォーレを諦める事も考えたのを思い出しました。もちろんプログラム順に何度も続けてCDを聴き、自分でも弾いてみて納得できたから決めたのですが、やはり頭の中で寝かす時間は必要なようです・・・。


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