ひとりごと(2007年6月分)

2007年6月30日(土)       「転機」

今年も半分終わります・・・何だか複雑。

今日は学校でオーディションの伴奏がありました。ピアノ・コンチェルトの伴奏、それもうちのクラスの学生さんだったので、通常の伴奏と全く感覚が違いました。もちろん他の楽器の伴奏でも一応私も当事者、本当のところは「今の演奏」がどうだったのか冷静に判断は下せないのですが、ピアノ2台だと音がかぶってどっちがどっちだかわかりにくい時もあり、どういう音で学生さんが弾いていたか100パーセントの確信は持てないのです。試験やコンクールを客席で聴く時、自分が教えている学生さんが出てくるとどきどき。ましてや隣りで弾いているとなると・・・?

この半月は休みがなく、夜遅く帰ってきたらバタンキュー、それでも丑三つ時に起き出して翌日の準備をし、ちょっと仮眠して朝出て行くような日がちょくちょくありました。という訳で疲れがたまっていて、今日は帰ってきてからこんこんと熟睡・・・。本当に疲れたら眠る事も出来なくなるので、ま、これはまともな反応かなと納得し、ひたすら眠り続けました。ちょっとすっきり、というこの状態は久しぶりの事。

今の時期はコンクールやオーディションがあり、試験を控えた時期でもあり、また外国の先生のレッスンを受けてきた学生さんの話を聞いたというのもあり、いい音、そしていいテクニックって一体何なんだろう?と考える事が多くなりました。そしてそれがいい音楽の中に占める割合はどれ位なのだろう、と。私が学生の頃から考えに考え、そして未だに答えが出ていないのですが。

確実に言えるのは、テクニックは進化するという事。その人の中でテクニックは成長し続けるという意味です。そして進化するために、どこかで思い切ってテクニックの根本から変えなければならない時期が、誰でも恐らくあるだろうという事。ピアノの場合、多くの人が幼少の頃から学び、体も手もどんどん成長するにもかかわらず楽器の大きさはそのまま。だからこそ子供の頃は多少なりとも無理のあるテクニックで弾いているのが普通だと思うし、初心者の頃から完璧なテクニックをマスターできる訳はなく、長年続けていく内にそれぞれの人にふさわしいテクニックを見つけてゆくべきだと思うので。

ちなみに私の場合、2度の転機がありました。1度目は、本格的なレッスンを受けるようになった中学生の頃。あいまいなタッチを廃して音全てをきちんと聴き、無駄のない体や腕、指の動きで弾くという事を、練習曲と古典派以前の作品で徹底的に教えて頂きました。2度目は、院に入ってすぐ、指のトレーニングのアシスタントを務めさせて頂いた時。ちょうどこの頃から勉強が猛烈に面白くなり、どんな風に弾きたいかどんな音を出したいか、明確にイメージできるようになってきたのですが、その表現に見合う音が出せていない事にある時ハタと気付いたのです。一番足りないと思ったのは、クリアで明るい音、切れのいい音。もちろん子供の頃からそういう音が出せていない事はさんざん言われていたのですが、事の重大さに全然気付いていなかった・・・やはり自覚は大切。気付いてしまったら自分で出す音に自分で許せなくなり、何が何でも直そうとやっと思えたのです。指のトレーニングのアシスタントをさせて頂いていた事で何をすべきかは分かっていましたが(先生は私にその事を気付かせようとなさっていたのではないかと、今は思います・・・)、20年来の癖を直すのはそう簡単には行かないもの。必死で取り組んだつもりでも2〜3年かかりました。でも直している最中はちっとも苦でなかった。欲しい音が出せたらピアノを弾くのがもっと嬉しくなるだろうなと、ただそれだけを思い描いていたそんな長い道のりでした。

当時悩んでいたさまざまな問題は大分解決したものの、今は今で別の問題がみえてきています。という事は、まだ進化する余地はあるらしい・・・。

友人に聞くと、やはり専門的なレッスンを受けるようになった時に、いっぺん簡単な曲(ツェルニー30番とか)に戻されて音の出し方から学び直したとか、留学したら体の使い方と音の出し方だけに数ヶ月を要したとか、そんな話がいろいろ出てきます。皆一緒だったんだなぁと思うと共に、今曲りなりに先生という立場に置かれてみて、そこまで指導出来るかと問われるとちょっと自信がなくなる・・・。確かに今のままでいる方が楽かも知れないけれど、今後何十年も弾く事を考えたら果たしてどうなのか。仮に変える事にしたら中途半端で止める事はありえず、学生さんも私もそこまで長期決戦で我慢できるか。そんな事をいろいろ考えて堂々巡りしてしまうのです。難しい問題です・・・。

テクニックの話はまた書きたいと思っています。続きはいずれ。

亡くなった祖母が大切にしていた小さい(けど年季の入った)サボテンがあり、それが蕾を1つつけました。昨年はお天気が悪くて蕾をつけず、2年ぶり。ただその花は1日限り、昼間しか開かず、一昨年も花開いた日の夕方に気付いたので見られなかったのです。今年こそはちゃんと見ようと気にかけていて、今日も帰りの電車の中「もしかしてそろそろかな?」と思っていたところ。でも帰ってから爆睡してしまい、夕方水やりに行ってみたら先ほど閉じたばかりでした。ごめんね。2年ぶりだったのに・・・。



2007年6月27日(水)       「言葉」

やっと梅雨らしくなりました。いつの間に7月はすぐそこ・・・。

パソコンはそこそこ元気に動いてくれています。先週も今週も本当に盛りだくさんな毎日で、お休みも全然とれず、なかなか更新できなくてごめんなさい。昨日も学校に12時間滞在し、今日もまた朝早くから行くので、あっさりといってみます。

このところは「言葉づいている日々」です。たくさんの言葉を聞きました。そしてたくさんの言葉をしゃべりました。もちろん、毎日何気なく耳と口を通過している言葉には限りが無い。けれど意識的に言葉を扱えば脳味噌も相当働かせるし、何よりも自分の気持ちの動向に改めて気付けるような気がするのです。という訳で、頭も心も120%くらい稼動した感があり、今は文章を考えてもちっとも冴えないな〜と痛感するのみ。そう、疲れていると、的を得た表現は全然出てこないものなのです。

たった一言の重み・・・考えさせられる事が何度もありました。学内の模擬コンクールの審査で書いた講評、学生さんが外のコンクールで頂いてきた審査員の先生方のご講評、教育実習の学校訪問で指導して下さった先生から伺えたお話、久しぶりに読んだ小説、友人が言ってくれた一言、私がレッスンで発している言葉・・・などなど。たった一言でもいろいろな感じ方があるし、胸に響く言葉にたくさん出会えました。

昔から気をつけている事の一つに、「言葉を発する前にいったん口の中で唱えてみる」というのがあります。ありがたくも(?)その逆に見られる事が多いのですが、実際は白黒はっきりしていて、うっかりするとかなりストレートに物を言ってしまうタチ。高校生位の頃に自覚して、自分の不用意な一言を戒める為に始めましたが、効果の程は・・・?

ところでレッスンって、果たして言葉で成り立つのか、それとも音楽によって成り立つものなのか、今わからなくなっています。それとももしかして「その人の存在」そのもので成り立つ・・・?大学生の時に、受験生の副科ピアノのレッスンをお引き受けしたのを初めに現在に到るまで、年月だけはそれなりに積み重ねられてきているのですが、未だこれでいいのか試行錯誤の日々です。振り返ってみればこれでも進歩しているとやっと思えるのですが、もっともっといい方法があるような気がする。ま、何はともあれ、レッスンだって「伝えてなんぼ」。まずはこちらの思っている事を伝えなければ・・・。

学校はこれからしばらく佳境、大体週5日は通うような生活になります。いつものように長々と書けるのは夏休みに入ってからでしょうか。しばし仮眠をとって今日も学校へ向かいます。こんな時の朝一の野菜ジュースは効き目ばっちり・・・。




2007年6月18日(月)       「心細さと心地良さ」

梅雨に入ったかと思えばいきなり中休みで、例年の6月よりずっと暑い(と思いつつ、未だに半袖を着ない私も矛盾しています)。青空が拝めるのは嬉しくとも、真夏の水不足が今から心配。でも晴れの(雨の降らない)日にしか出来ない事も多いもので、いろいろはかどりました。

先週もお仕事いろいろでしたが、それよりも何よりもパソコン(ソフトもハードも)の不調に翻弄されました。今まで全く問題なく動いてくれた事に感謝すべきで、そろそろこうなる時期になったかと覚悟していますが、でも動かなくなったらどうなってしまうのか心配・・・。今思えば先月からその兆しはあって、でもそれどころではなかったので目をつぶっていたのです。今後思いきり更新が遅れるような事があったら、パソコンが入院したと思ってしばしお待ち下さい(そうならない事を祈りつつ)。

ネットで情報をいろいろ検索してはみたものの、そういう問題でもなかったので結局電話でサポートを仰ぎました。専門家の方にお尋ねしてやはり正解。「こんがらかっていた糸がするするとほどけていくように」、正にそんな風でした。考えられる可能性を一つ一つ試し、それを素人の私にも分かるように説明して下さり、その過程が実に丁寧でプロのお仕事だなぁと感嘆したのです。

この季節になれば植物は元気になります。それにしても生命力が強い!頂いた花束の中によく入っている観葉植物(ドラセナとかクロトンとか)は挿し木するのがお決まりで、どれも立派に育っています。春の大風にもぎ取られたライラックの小枝も、水につけたら復活して根っこが生えてきたので植えつけました。風に揺れるアジアンタム、いつの間にか胞子を飛ばしてあちこちの鉢に居候しているので、大きくならない内に掘り取って植え替えました。放っておいても芽を出し、そして育つ。こんな風なたくましさがほしいなと思う時が良くあります。

間近に留学を控えた学生さんにメールを送ったりしていて、ふと思い出した事があります。ヨーロッパあちこちの風景。独りで歩いていた事が多かったからこそ、目に映ったものもその時考えていた事も明確に思い出せます。感じる事と考える事が表裏一体となっていたあの時、その後どのように生きていくのか全く予想もできなかったけど、音楽から離れない事だけは確信できていました。駅の雑踏でも街中でもいつも感じていた心細さと心地良さ、今どっちも忘れかけている事にちょっとだけ不安を感じます。慌しいと言いつつも、日々の生活にある意味慣れっこになってしまっているようで。

写真だって殆ど撮っていないのに、まるで追体験しているように映像ごと思い出されてきました。何だろう、この記憶力・・・。



2007年6月11日(月)       「教育実習」

さわやかなお天気が続いていましたが、昨日の大雨・・・久しぶりに雷鳴と雨音をじっくり聞いた気がします。

リサイタルが終わって早くも1週間が経ちました。当日は本当にたくさんのお客様がいらして下さり、心より感謝しております。ありがとうございました。そしてリサイタル後から、気のせいかアクセスカウンターの進み方が速くなったような気もしますが・・・いつもの如くなかなか更新できなくてごめんなさい。

先週はいきなり学校が忙しくなりました。リサイタルによるしわ寄せが来た訳ではなく、例年の事ですがこの時期は急にやるべき事が増えてくるのです。リサイタル前も外に練習しに行ったりで前日しか家に居られず、終わった翌日は辛うじて休みにしたものの、その後5日連続ずっと学校に居ました・・・(家に居たい)。という訳で最近は家に寝に帰るだけで、本当に1週間前に舞台に立っていたのか定かでない程。という訳でリサイタルについて振り返るのは又後日に・・・すみません。

先週していた事いろいろ。

高校では3週間の教育実習期間に入り、教科担当として1人の学生さんを受け持つ事になりました。指導案を前に一緒に考え、気付かされる事も多々あり。

一方、教職ピアノのレッスンを受け持っていた学生さんの実習校訪問もする事となり、連絡をして日程を決めて頂きました。初めての事で、今から緊張しています。

高校の授業でのリズムやクレ読み(ト音記号、ヘ音記号、5つのハ音記号)、楽語の小テストの問題作成。理解しているつもりだけど疑問点も出てくるもの。面白いけれど、いざ問題を作りパソコン入力となると、結構時間がかかります。

週末は高校の体験イベントなるものがあり、30分のレッスン(無料なので短い)を数人。その日初めて顔をあわせるまで何を聴かせてもらえるか分からず、せっかく準備してきてくれた曲を全部聴いて、限られた時間でどんなアドバイスができるか、精一杯頭を悩ませながらのレッスンでした。

試験やコンクールを控えて、学部と院の学生さんには肝試しのチャンスを設けました。ホールとの打ち合わせがあり、プログラムを作り、果たして間に合うのか気になって補講・・・。

荒牧先生との初合わせ。曲決めの為に既に頂いていた約10曲をさらって歌詞を読み、その日初見でも約10曲弾きました。シューマンの「女の愛と生涯」、高校生くらいからぱらぱらと弾いていた憧れの曲、その日初めて全曲歌と合わせました。シューマンを弾いたばかりだからか、楽譜から見える事がたくさんあって・・・「これを書いていたシューマンの心境までが聴こえるような気がする」と言ったら、言い過ぎ?プログラムに入るかどうかはまだ保留です。

などなど・・・。

教育実習、私たちの頃はまだ2週間でした。それでも目いっぱい、いろいろ授業や副科ピアノのレッスンを持たせて頂き、放課後は先生方とテニスをしたりして、大変大変と言いつつも楽しかった記憶があります。そしてその時に初めて、先生方のお気持ちに気付く事ができました。中学高校生の頃は、自分の目線でしかものを見ていなかったと言う事に気付かされ・・・先生の存在のありがたみを本当の意味で理解したのは遅まきながらあの時だったと、今懐かしく思い出す事ができます。

しかしなかなか体は本調子には戻れず、どこに自分の基準があるのか、何だかゆらゆらしている感じ。それでも時間は進んでゆく、というのが最近思う事です。やはりリサイタル前は相当不健康な生活をしていました。今思えばの話。疲れた時に疲れたと言って休みたいのに、それが出来ないのは変。自然の豊かなところに行って静かに過ごしたいと思うけど、今はちょっと無理・・・。


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