ひとりごと(2007年5月分)

2007年5月31日(木)       「両立」

雨がよく降ります・・・。

今週も学校にちゃんと行っています。いつものように時間は流れ、その中で日々いろいろな事が起きていて、1つずつこれをいつもクリアしていたんだなぁと実感。帰ったらぐったりで、少しうたた寝してから夜中にさらおうと思ったのに・・・結局寝てしまって1日練習が抜けました。必要とあらば気持ちの切り替えは早いので、たった1日だけの事なのに、数日弾いていないような不思議な感覚に襲われます。

学生さんにもいつも言っているのですが、疲れていて集中できない時は無駄な練習をするより、いっその事練習を休んだ方がいいと思うのです。その代わり練習するからには、短時間でも集中して質の高い練習をした方がいい、と。それを正に実践しているので、普段学校の仕事が詰まっている時には当然練習できない日もあります(レッスンで弾いたりするので、ピアノに触らない日は少ないかも)。でもさすがに今はそうはいかない・・・寝たい、でも弾かなきゃ。そんな葛藤が続いているので、夜、夢の中でも、電車でうつらうつらしている時も、いつも音がどこかで鳴っています。目が覚めると、まるでCDを聴きながら眠ってしまったように、曲がちゃんと頭の中で進んでいるのですが、今日はそれがいつしかさっき授業でやっていた曲にすりかわっていました・・・一体どこで編曲しているんだか。

こんな時は、学生時代にスコア・リーディングの授業でお世話になったピュイグ=ロジェ先生を思い出します。ちょっと今は時間がないので詳しく書けないのですが、授業が終わると「今晩はコンサートなので、これからリハーサルに行かなくては・・・」と度々おっしゃっていたのを思い出します。フランスの素晴らしい音楽家(作曲家、ピアニスト、オルガニスト・・・)でいらした先生は、来日されてから10余年に渡って幾つもの音大で教鞭を執られ、それと並行して演奏活動も活発になさっていらっしゃいました。先生は絶対にフランス語しかお話しにならなかったので、わずかに分かる単語と手振り身振りからしか先生のお話を理解できなかったのが、返す返すも残念です。作曲と指揮の友人に混じって受けていたその授業、オーケストラ曲の知識が本当に少なかったので、ついてゆくのも必死でした(弾いた曲はフランスものが多かった気がします)。高度な内容で毎回胃が痛くなっていたけれど、休もうとは決して思わなかった。「本当の音楽家」とはこのような方なのであろうと、ただの一学生だった私にも良く分かりました。博学でいらっしゃるのはもちろんだけれど、何よりも音楽を深く愛していらして、そしてそれを私たち日本人学生に伝えようとなさっているのが、言葉を超えてまっすぐに通じてきました。授業と演奏活動を両立されていらしたのを、当時憧れと尊敬の眼差しで見つめさせて頂いていましたが、その先生が亡くなられてもう15年・・・。

ピヒト先生も、草津の音楽祭ではそうでした。午前のピアノのクラスだけでなく午後にチェンバロのクラスもお持ちで、1日中レッスンなさっているのに、夜のコンサートではすばらしい演奏をされているのです。一体いつ練習なさっているのだろう?と思うと共に、何があっても揺るがない精神状態を舞台でどうやって維持されているのだろう?と、ただただ驚嘆したのを覚えています。

そういう素晴らしい先生方から少しだけでも学ばせて頂けた事、今の私の中でもかなり大きな部分を占めています。ロジェ先生のように見事に両立できたら・・・でも私のような凡人にはとても真似出来ない・・・当たり前ながらそれを感じる今日この頃です。

リサイタルまで残り、実質1日?となりました。今回演奏できる素晴らしい曲の数々について感じた事と考えた事は山ほどありますが、それについては全然書けなくてごめんなさい。お時間ありましたら6月3日、ぜひ津田ホールにお出かけ下さい。よろしくお願い致します。自分で言うのも何ですが、今回の選曲は各曲もともかく、組み合わせとしてもかなり美味しいのではないかと密かに思っています・・・。



2007年5月28日(月)       「暗譜に始まり暗譜に終わる」

又もやご無沙汰しております。

時間がとにかく足りなくて、パソコンを起動するまでの時間さえ惜しい位です。何せ迷惑メールが多いもので、まともにメールを開けられるまでどれ位かかるか・・・ウィルス・ソフトがちゃんと働いてくれるお陰でもありますが。

ま、それはともかく、曲が多いので練習し始めれば、7〜8時間はあっという間に経ってしまいます。でも家に居られない日が多いので、平均すれば・・・?今年は週3日学校なので、半月あっても「後1週間しかないっ」と焦っていました。今週も学校は休まず行くので、ちなみに今日の段階では実質残り2日というところ?昨年よりはプログラム的にそんなに怖くは無いはずなのに、どうしてこんなに練習時間が足りないのだろう?と考えたら、昨年も同様に週3日ではあったけれど、朝10時半で終わって帰れる日が1日あったっけ、と思い出しました。そして、今月前半は妙に疲れて全然さらえなかった、これが響いています。

でもそのお陰で、いつもはあまり聴けないCDが聴けました。ピアノが弾けなくても気持ちだけせめて離れないようにしようと、そういう訳でした。例年だと自分でどう弾くかが定まって来た頃、つまり本番2週間前位でしょうか、CDを聴けるのは。それより前だと、楽譜を読み込めていなくて肝心要の本質を聴き逃したりするし、なのにその歌い回しを何気なく覚えてしまって期せずして演奏が似てきたりするし。いつもはこの時期、相当切羽詰まって練習しているので、実は何枚か聴けないままになったりしています。どちらにしろ繰り返し聴く時間はとても無くて、どれも1回だけ、すごく集中して聴くだけですが。

今どんな練習をしているか書いたら、もしかしたら幾人かの方々は面白がって読んで下さるだろうな・・・とは思うのですが、ちょっと余裕がないのが残念。今日も今からリハーサルに出かけます。何とか30分でまとめてアップしようと思っているので、文章が支離滅裂です。お許しを・・・(リサイタルが終わった頃、こっそり手を加えているかもしれません)。

練習していて思う事、結局は「全ては暗譜に始まり暗譜に終わる」。人それぞれの考え、方法があると思うので、全くの個人的な意見ですが、特に最近その思いが強くなってきました。

今回のプログラムはどれも、大なり小なりかつて勉強した事があります。昨年から今年にかけて取り組んだ「ダンテを読んで」は別として、練習の仕方や曲の解釈、本番での演奏についての考えなど、何もかもが昔とは違う事に気が付きました。本番を前に考えるのは「どんな演奏をしたいのか」が一番大切で、それと同時に「曲をどう解釈するか」を探し、それがはっきりしたら「どう練習するか」が見えてきて、そして練習とは全く別の「その時だけの演奏をする為に何が必要か」を考え、そして「怖さをどう克服するか」だと思うのです。その怖さの理由を探ってゆけば、結局のところは何もかもが暗譜に行き着く・・・。

楽譜に書かれている事、本当に全てを覚えようとしたらキリがないもの(今回は130ページ)。特にピアノは音が多く、旋律と伴奏、あるいは複数の旋律、それぞれにニュアンスが必要だから。音を間違いなく読むのはもちろんの事、楽語のみ、強弱記号のみ、速度関連の用語のみ、アーティキュレーション(音をつなげるか切るかに関する記号)のみ等々、的を絞って楽譜を最後まで見ていくとかなり発見があるものです。つまり、その部分で一番目立つものしか読んでいないんだなぁと気付かされる始末。耳も同様で、複数の旋律を1つずつ拾っていくと、意外に聴いていないラインが見つかったりします。

この段階に到る前に、とりあえず楽譜無しで弾いても最後まで通るようにはなっているけれど、この「全ての暗譜」の段階が一番きつい。何はともあれとにかく覚える。ちょくちょく休憩をいれて頭を冷却する時間が必要で、脳味噌がフル回転している実感があります。他の事は一切考えられなくなるので、当然言葉を扱う感覚もゼロになる、従ってこのひとりごとも何度か書こうと試みたけど・・・無理でした。とりあえず全てを覚えてから数日放っておくと、なぜか頭の中で発酵というか定着というか記憶が落ち着いてきます。そうすると脳味噌の中で記憶が然るべき場所に整理整頓されて配置され、覚えた事が意味を持ってつながり、弾きながら必要な情報がすっと出てくる・・・ようになるはず。

しかし、例え全てをしっかり頭に入れられたとしても、頭の中に入っている事を音で表現できるかできないかは全く別問題。頭の中の記憶を頼りに、どのように指を順番に動かし(特にシューマン、裏拍で入れる旋律が多く、指がもつれる危険大)、そして余分な力を抜いて体をどのように使って、そこにどのような感情を込め、どういう音色を作り出すか?それを関連付けて無意識でもできるように体の感覚に刻み込むのも、結局は暗譜なのです。でも練習でできても本番は別・・・。

ここまで暗譜にこだわる理由。楽譜にどれほど大量の情報が盛られていたとしても、そしてそれをどこまでも誠実に表現するとしても、実はその先には自由があるから。それは紙の上の記号=楽譜に記せる事には限りがあるし、そこまで楽譜を解読したらきっと作曲者はその先の自由は演奏者に与えてくれると思うのです。自分というキャラクターを、本来の作品と作曲者を越えてまで表に出す必要はないと考えているけど、その先の自由はやはりある方がありがたい。作曲者と作品は私にとって絶対的な存在価値を持っているので、後ろめたさを持たずに自由に弾かせて頂く為に、そこまで作品を知っておく事は何が何でも必要な事なのです。

30分の割には(支離滅裂な割には)長くなりました。ちょっと練習してから行こうと思ったのに、その時間がなくなった・・・。

今発売されているムジカノーヴァ6月号、インタビューでとりあげて頂きました。よろしかったらご覧になって下さい。

ある知り合いの方から頂いたメールです。こんな事を書いて下さいました。「ピアノのリサイタルには息の詰まるような緊張感があって、それは他の楽器のリサイタルで次第に緊張感がほぐれてくるのとは違う。でもその緊張感が、聴き終えた後の充実感をもたらしてくれる。」というような内容でした。その緊張感がお好きなのだそうです。伴奏や室内楽ではまず緊張しないのに、ソロではいつも怖い思いをし、お客様に余分な緊張感を伝えていたら申し訳ないといつも考えていたので、このメールには逆に私が元気付けられました。これを励みにもうちょっと頑張ろう・・・。




2007年5月19日(土)       「天気雨」

5月も半分過ぎたというのに、全く波乱万丈なお天気だこと・・・。

今週のある日の話。家を朝出た時は足元びしょびしょのざぁざぁ降りで、学校の最寄駅で降りたら晴れ間が広がり「折りたたみ傘にすればよかった・・・」と後悔、午前の授業中に外を見れば傘の花がたくさん開き、図書館で過ごす代わりに久々に外にお昼を食べに出たら水たまりばしゃばしゃで、学校に戻る時には青空が覗き日も差しているのに雨がパラパラ、夜に帰る時には星がキラキラ輝いていました。3日分位のお天気・・・。

その日の不思議な天気雨は、午後レッスンに来た学生さんとの間でも話題になりました。どう見ても真上には雲はないのに、どうして雨が降っているのか、ついでに言えばどうして虹が出ないのか?それにしても不思議な光景でした。ぼんやり歩いていて、ふと、今度弾くフモレスケの「笑いと涙・・・」ってこんな感じなのかな?と思ったのです。

しかし今週は本当に予定がびっしりでした。学校に行くのは平日3日連続、朝から晩まで隙間なくレッスンと授業が入っているので、その3日間が過ぎると自分のピアノはすっかり他人事になってしまうのが悩みの種。それはいくら何でもまずいと思ったので、最近は帰る前に気合を入れて1時間ほどさらっていくようにしていましたが、朝からぶっ続けなので本当はしばしぼぉっとしたい・・・。ところが今週はその夜に日替わりで、私のレッスン(外国から素晴らしいピアニストがいらしていたので)、学校の実技試験の審査(今年からピアノ科だけ試験が年5回となり、内2回を選んで受けるシステム)、学内の模擬コンクールの審査が入っていました。気持ちの切り替えも大変なら体力面でも大変だったけど、全部が自分のピアノに還元できるような有意義な3日間となりました。

というところでそれがどんな風だったのか、この後どう話を繋げていくのか、今書きながら大体展開が定まっていたのに・・・眠い眠いとにかく眠いっ。曲目解説は今週初めにやっと書けて、学校に行っていた日はいっぱいいっぱいで、今はひたすら「本当の意味での暗譜」をする為に頭が記憶モードに入っているし、脳味噌が睡眠を要求しています。という訳で今回はここまで。中途半端だけど延び延びになるのが怖いので、このままアップしてしまいます。

今週のいつだったか、何気なく夜空を見上げた日がありました。西の空にまばゆく光る星があって、「あ、宵の明星。」と思ったら、東の空にもちょっと赤味を帯びた強く光る星を発見。ヘリか何かの発する光かな?と思うほどの明るさなので、多分惑星でしょう。今ネットで調べてみたらどうやら木星らしい。ちょうど今は、昨日から明日にかけて西の空で水星が細い月と金星の近くに位置し、もう数日すると月は土星に近づくそうです。春の星空って冬ほど強い印象がないけれど、今の惑星の強い輝きは一見の価値があると思うので、ぜひぜひご覧下さい・・・。



2007年5月8日(火)        「漠然と」

連休もいつしか過ぎ・・・気持ちいいお天気でした。今年は暖冬だったせいか、ハゴロモジャスミンがぼうぼうに生い茂って今満開。風にのっていい香りがしてきます。

とは言ってもこのお休み、今年はちょっときつい。花粉症でだるくて良く寝ていました。薬が効いて半月ぶりに声が戻ってきたけれど、花粉が去るまであとどれ位かかるのだろう?いつもは寝る時間を削ってでも練習するのに、それができない今はちょっと憂鬱・・・。まぁ今まで無理しまくったツケが回ってきたという事で、体の言い分をおとなしく聞く事にします。

今は大量の楽書を広げて、必死で曲目解説を書いている最中です。頭の中で漠然と曲の魅力がイメージされていても、切り詰めた字数で文章をまとめるにあたって言葉を選ぶのは本当に難しい。例えば、ベートーヴェンの偉大さを端的に一言で表すのは・・・無理!それでもずっと考え続けて、言葉がひらめいてくるのを待つのはかなり頭が疲れます。正直、私ごときの拙い文章でこれら大作曲家の魅力を十全に伝えられるはずがないと思う。言葉にしようとすればするほど本質が遠のいていく。でもどなたかに書いて頂こうとは決して思わないのです。演奏するに当たってこの過程は外せないと思うし、何とか書けたあかつきには、作品に向かう自分の姿勢が変わった事に気付きます。

リサイタルまで4週間を切りました。当日に一番いい状態で持ってこられるよう、時間の使い方をシュミレーションするのは大切な事。全ての曲の仕上がり具合を鑑みながら練習のスケジュールを考え、また練習できる日や時間を確保し、学校の仕事との兼ね合いも考え・・・キャパシティの小さい私は自分の事だけで精一杯なのに、コンクールや試験を控えた学生さんの事がいつも頭にあって、間に合うかどうか結構そちらの方が気になったりします。曲数の多いコンクールを受ける学生さんには、時間軸を横にとって何の曲をどの時期にさらうかが一目瞭然の表?を作ったりしてみました。でもそれが一番必要なのは私・・・?

元々心配性なので、後々で「取り越し苦労だった〜」で済む事もありますが、やはりソロの、それも自主企画のリサイタルというのは自分自身でしなくてはならない事がたくさんあり、そして特別の意味合いを持っています。コワイという思うのは仕方がないにしろ、結局は自分自身を信じられるかどうかに尽きるような気がする。敵がいるとしたらそれは自分、でも自分は味方にもなってくれるのです。昔はもっと(本番を前にした時)盲目的に自分を信じることができたような気がするけれど、今は余計な事を考えすぎるのかも。早く弾く事だけに専念して、雑念を振り払いたい今日この頃です。

とか何とか言いつつ、今しているのは今日朝一の授業の準備。今年度から初見の授業でスコア・リーディングの初歩も扱う事となり、昔を思い出しながらいろいろ勉強し直しています。聴き慣れているオーケストラや室内楽でも、スコアをよくよく眺めればたくさんの発見があり・・・教える立場にありながら、こんなに面白い勉強させてもらえるというのもありがたいもの。しかしそれにはやっぱり時間が足りない・・・。


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