ひとりごと(2005年2月分)

2005年2月25日(金)     「アンコール・ピース」

やっと春一番が吹きました。あの日は暖かな日差しに恵まれて幸せな気持ちになりましたが、その後の冷たい雨ったら・・・。

明日は秩父のコンサート。前半は「愛の挨拶」で始めてブラームスのヴァイオリン・ソナタ1番「雨の歌」、後半にはクライスラーの小品(「美しきロスマリン」と「ロンドンデリーの歌」・・・クライスラー自身のアレンジによる素敵なハーモニーの伴奏がついています)、「タイスの瞑想曲」、「ツィゴイネルワイゼン」というプログラム。

アンコール・ピースばかりというプログラムも好きです。アンコール・ピースというのは、演奏会のアンコールで弾かれる事も多い曲(つまり演奏時間が短く、そして有名である、美しい、技巧的など何かしら特徴がある)を指します。芸大で伴奏助手をしていた時の事、あるヴァイオリンのクラスで「アンコール・ピースを弾く」というテーマの下に試演会が行われました。皆それぞれ思い入れのある曲を選んで弾いていたのですが、それが又楽しそうで・・・もちろん聴く方も非常に楽しめました(私は伴奏で行ったのですが)。「コンチェルトなどが上手く弾けても小品が弾けなければ何もならない」、そのクラスの先生がそうおっしゃっていたような記憶があります。確かに小品を弾く機会は多いですが、粋に弾くのは実に難しい・・・。

それが強く印象に残り、いつかアンコール・ピースばかり集めたコンサートを企画しようと思っていました。2000年のすみだトリフォニーの小ホールでのコンサート(詳細はコンサートの記録ー自主企画をご覧下さい)。この時の選曲は本当に楽しかった。あれこれ弾きたい曲が目白押しで、でも一晩で続けて聴き、又弾く事を考えると迷って迷って・・・。実際弾いてみた感想といえば「これはこれで相当難しい」。その人の性格にも拠るのでしょうが、私はどちらかというと長い曲に入り込む方が楽。だから気分の切り替え(タッチの切り替えも)にちょっと苦労しました。意外にトークが入る方がこういう場合楽なのかもしれませんね。でも玉手箱を開けたようなそんなワクワクした気分も味わえました。

2枚目のCD「ラ・ヴァルス」(ディスコグラフィーのページをご覧下さい)は、そんな経験を踏まえて作ったものです。ちょうど2年前の今頃録音し、昨年の今頃は編集作業と曲目解説書き・・・それは、実際のリサイタルでアンコールを弾く時の気持ち、また選曲理由などを含めて自分で執筆しました。CDなら1曲ごとに録音できるからコンサートよりは少しは楽かなと思ったのですが、新鮮な気分で弾くと1テイク毎にちょっと違ったヴァージョンになってしまうのが難点。これが録音とライヴの違いなのですね。・・・それはともかくと、聴きやすいのはもちろんですが素敵な曲を選びました。どれも個人的にも思い入れがありますが、中でもゆっくりした作品、例えばショパンのノクターンや舟歌、ラフマニノフのヴォカリーズは格別。そして自分でオーケストラ・スコアから編曲したラヴェルのラ・ヴァルスは、ピアノ用にどう響きを組み立てていくかその作業にすっかり夢中になってしまいましたが、オーケストラと一味違った感じに仕上がっていると思います。このサイトを開設する前の話なので、この欄にまだこういうPRは書いていない気がしますが・・・ぜひ一度聴いてみて下さい。

アンコール・ピース特集第2弾のコンサートもいつか又企画したいですね。今度はどんなプログラムにしようかな?

このところ、毎回だんだん文が長くなっていますね。読みにくかったらごめんなさい。別に日常的な事を書くのは全然苦ではないし(学術的な事はそんなに書けないでしょうけど)、中途半端に終わらせるのが嫌で最後まで書こうとするとあんな長さになってしまうのです。今日は短めに。そのあたりの話はまたいずれ・・・。



2005年2月22日(火)     「上野」

この頃は外や家、あちこちで合わせやら本番やら・・・朝から晩まで学校に居るのと又違った意味で、何となく慌しいです。普段はあまり乗らない路線の電車に乗ることも多く、車窓から外を眺めていると景色がどことなく春めいて来たのが分かります。白やピンクの色は梅の花?あの甘酸っぱい花の香・・・昔、この季節に大宰府に行った事を思い出します。

最近上野へ行く機会があり、界隈を歩きながらしばし感慨に浸りました。上野に通ったのは大学と大学院、そしてブランクがあった後の弦楽科伴奏助手時代。附属高校は当時御茶ノ水にありましたが、週1回のレッスンは大学で行われた為、高校から含めると計12年!

大学のすぐ目の前の四つ角にレトロな感じの遺跡(?)があります。今の学生さんに聞いたら「あれって何ですか?」と逆に尋ねられてしまいましたが、それはかつての京成線「博物館動物園駅」。日暮里と上野の間にも駅があったのです。各駅停車の電車の内でも4両編成の電車しか停車できず(ホームが短いので)、穴倉のように薄暗くて空気が濁っているような、そんなちょっと変わった駅でした。学生時代、お昼休みを挟んで1限空く曜日は大抵家へ一度戻っていました(練習室は絶対空いていなかったし)。博物館動物園駅から乗れば、往復でちょうど1時間。電車は確か・・・時間帯にも寄るけど1時間に2本位?いつも時刻表を持っていて(当然ケータイもなかった時代)、その電車をつかまえるべく駅までよく走りました。でも助手として勤め始める直前に駅は廃止になってしまったのです・・・不思議な雰囲気の駅だっただけに愛着があって、いつか復活しないかなと思っていたのですが。それからはいつも上野公園を突っ切って学校に通うようになりました。上野の山の下から15分歩く事になったけれど、四季の移り変わりを肌で感じる事が出来るのもなかなかよいもの。

学生時代、突発的な休講があるとどう過ごしたらいいものか一瞬迷ったけれど、そんな時は学校の外へ逃げる事が多かったです。あまりに天気が良いある日、ピアノ科皆で不忍池にボートに乗りに行った事がありました。散歩にも事欠かない場所柄、根津や日暮里方面へ坂道や路地をてくてく歩くのも気持ちよく、そうすると何かしら歴史のある建物や新しいお店を発見したものです。学校すぐ近くの桃林堂のお薄と和菓子や、愛玉子(オーギョーチーと読みます)という台湾名物のデザートなども食べに行きました。

美校(美術学部)の友人をアトリエに訪ねていく事もありました。音楽学部と美術学部は道を挟んで隣同士。授業のカリキュラムも重ならないので、普段何しているのかはお互い実は何も知らない。学祭関係の委員会や部活(バレーボール)などで知り合った友人に、制作途中の過程や出来上がった作品を見せてもらい、又いろいろな話をしました。そこから受けた刺激は本当に多かったし、音楽について、表現について、自分について、その辺がつながり始めてきたのはそんな頃でした。

芸大を離れてから随分上野も様変わりしたものです。雨が降ると公園内は水溜りで足元がびしゃびしゃになったものですが、広場や道が整備されて歩きやすくなりました。またJRの駅構内はともかくと、地下鉄を利用していた私にとっては近場にお昼を買ったり寄り道したりするお店があまりなくて、通っていた当時はちょっと困っていたのです。アトレが出来ておしゃれで便利になり、演奏会帰りでも買い物ができると言うのは画期的!夜も書店が開いているとふらふらっと吸い寄せられてしまいます。

近くに美術館や博物館、そして動物園などあって恵まれていた環境でしたが、授業などでそうしょっちゅうは行けないもの(なんてもったいない)。絵を見るのは前から好きでしたが、友人の影響もあって更に身近に感じられるようになりました。また、敢えて遠回りして桜並木の下を通って帰る事はよくありました。春の桜吹雪、夏の青葉、秋の紅葉、冬の落葉、そんな中友達とおしゃべりしたり、一人考え事したり・・・その雰囲気と周りの風景が好きでした。やはり印象に残るのは帰り道、夕暮れ時か夜。お寺の鐘の音と夕焼けが一緒に思い出されます。

アメ横が近いのに昔はあまり行きませんでした。滅多に行けなくなった今は興味が出てきて、寄れる時にいろいろ買い物していきます。最近よく行くのはエスニックの食材のお店。ベトナムのフォーはお気に入り。韓国唐辛子、コチュジャン、オイスターソース、ナンプラーなどうまく使いこなすには程遠いけど、いろいろ試してみています。人ごみは苦手だけどアメ横には何故か人のパワーを強く感じます。

書き始めてみてこんなに思う事考える事あるんだなぁと、少し自分でも驚いています。生まれも育ちも東京下町、チャキの江戸っ子(2代目半なのでまだチャキチャキではないのです)としては、やはり上野の空気は体に馴染んでいます・・・。




2005年2月17日(木)     「楽譜」

風邪やインフルエンザが今流行っているそうですが、皆さん大丈夫ですか?

試験シーズンはとりあえず終わりました。今となって思い起こせば、全く信じられないような生活を送っていたものです。ホッとする間もあるんだかないんだか、次は3月第1週にかけて又新しくいくつか伴奏での本番があり、その為の譜読みと合わせが始まっています。演奏曲を決めかねていた人から一昨日の夜「やっと決めた!」と連絡があり、昨日の合わせに間に合わせようと夜中に慌てて譜読みをしました。我ながらあまり変わり映えしない生活だなぁと思いつつ・・・。

とりあえず一段落したら、まずする事は楽譜の整理。ピアノの上には楽譜がどさっと積まれていますが、例えばそこにあるのは先頃終わったばかりの試験で弾いた伴奏譜、今月末から来月頭にかけて弾く新しい伴奏譜、6月のソロのリサイタルの楽譜、レッスンしている学生さんの弾いている楽譜、長期計画で勉強しておこうと思うソロの曲の楽譜(これは殆ど「積ん読」状態)などなど。そして各曲につき楽譜は1冊だけという訳ではなく、コンチェルトのオリジナルのオーケストラ・スコア、伴奏をする相手からそれぞれ送られてきた伴奏譜、ソロの勉強用に書き込みをする為のコピー、出版元の違う楽譜(原典版でも各社微妙に違うし、校訂者の解釈等参考になる事もあるので)など、とにかく沢山あって訳が分からなくなりそうです。

楽譜は大切なものであり、又読んでいても実に面白いものです。それは創造の源でもあるから。私達のしている事は自作自演ではなく、過去の大作曲家が遺してくれた楽譜からどのように生きた音楽を甦らせるかという事。作曲家の書いた音符や記号一つ一つを解釈し音にしていく過程で、その作曲家の生きた時間をも想像しているのです。自分のオリジナリティーを出す以前に、楽譜から読み取れた事を踏まえてどんな風に演奏するか、その時々で考える内容も違うもの。かつて学生時代に勉強した曲の楽譜を広げてみると、沢山の書き込みで埋まっています。先生から受けたご注意はもちろんですが、楽譜を眺めていて気付いた事、自分で思いついた演奏のヒント、CDを聴いたり楽書を読んだりして考えた事などを、忘れまいと克明にメモってあるのです。「当時はこんなにいろいろ考えたっけ?」。書いた事自体忘れていたりしますし、自分の考えもいろいろ変わってゆくものだなぁと驚きます。今でこそいちいち書き込まなくなったので楽譜はかなり綺麗ですが、それでも唯一ちゃんと書くようにしているのが指使い。どんな音色やどんな歌い方を望むかで指使いは変わるし、仕上がりの早さや暗譜の手間を考えたらこれは必須条件。

無人島に行かなきゃならないとしたら何を持っていく?とはどこかで良く聞くような会話ですが、持って行くとしたらCDよりは断然楽譜(もし楽器がなかったとしても)。セレクトは・・・何だろう?究極の1冊だったら絶対にバッハ。平均律かな。ゴールトベルク変奏曲も捨て難いけど・・・。

さて、コンサート情報に1件追加しました。日にちが迫っているのですが、昨日チラシが送られてきたので一応載せます。ヴァイオリンのソロを弾く田島さんは若手有望株!秋には出身地の富士市と東京でリサイタルがあってその時も伴奏するのですが、今回はお気軽に楽しんで頂ける曲を多く入れています。会場は蔵づくりの建物だそうで(私はまだ伺った事がないのですが)、キャパシティ数十名のアットホームな感じのところだそうです。西武秩父駅や秩父鉄道秩父駅からバスに乗って30分はかかるとの事、お近くにお住まいの方がいらっしゃいましたら是非お出掛け下さい。

それにしても人騒がせな昨朝の地震、前の晩にちょうど見た東京の大地震をテーマにした某ドラマのワンシーンが脳裏に浮かび、「あんな事がもし起きたら」とちょっと怖くなりました。以前にいろいろ準備しておいた備蓄品の点検も改めてしなければ・・・。




2005年2月13日(日)     「マエストロ藤岡さん」

やっと少し時間的ゆとりが持てるようになりました。まずしたのは眠る事・・・。

今日は最初に、1月22日の欄にちょこっと書いたきりになっていた指揮者の藤岡幸夫さんの事について書かせて頂こうと思います。藤岡さんとの接点は、ある先輩のヴァイオリニストからの伴奏の依頼・・・コンチェルトでのオケ合わせに先立っての、指揮者とソリストとの打ち合わせの場でした。藤岡さんのお名前は聞いた事はありましたが演奏を聴かせて頂いた事はなく、当然お会いしたのも初めて。その伴奏も数日前に急に頼まれたもので、きちきちのスケジュールの中何とか時間のやりくりをして行った事を覚えています。そんな中なぜ行こうかと思ったのか・・・直感でしょうね。私は後から行ったのですが、その部屋に入った途端に不思議なオーラを感じました。太陽のような方だなぁと。音楽に対しては真摯に向き合っていらっしゃるのに音楽を離れるととても気さくな方で、そのギャップにも非常に驚かされました。また普通の伴奏合わせは沢山経験がありますがこのような状況は私には珍しく、興味深い時間を過ごせました。

その後演奏会に度々お伺いするようになり、その第一印象そのものの演奏をされる方だなぁと感激しました。最近は関西と海外での演奏会が多いそうでなかなか聴きに伺えないのが残念ですが、今まで聴かせて頂いた事をいろいろ思い返してみて、藤岡さんの演奏の魅力は「熱い演奏をされる事」と、「心から音楽を愛していらっしゃるのが演奏から伝わって来る事」だと思っています。中でも印象深かったのは白鳥の湖(抜粋)と作曲家の吉松隆さんの個展。言葉にするとどんどん伝えたい事とかけ離れていってしまう気がするので一言のみ。白鳥の湖は心を揺さぶられる美しくも悲しい音楽でした。又藤岡さんは、吉松さんの全管弦楽作品をCD録音されている真っ最中ですが、それはそもそも藤岡さんが吉松さんの作品に惚れこんだところから始まった話だそうです(公式サイトによりますが詳しくは参照して下さい)。そのような訳で吉松さんの個展は、作曲家と指揮者お二人の共感と理解の上に成り立った素晴らしい演奏となり、その場に居合わせられて本当に良かったと心から思えるコンサートでした。

公式サイト内の「フロム・マンチェスター」というページには藤岡さんご自身が文を書かれているのですが、それを読ませて頂くのも楽しみの一つ。お人柄が良く表れていると思います。音楽について深く考えていらっしゃる事も然り、オーケストラのメンバーやファンの方など「人」を大切になさる事も然り・・・。又普段は「本当にマエストロ?」と思わされるほどで、一度吉松作品のCD発売記念のトークショーに遊びに行った時は大爆笑でした(ぜひサイト内のその数回分のトークショーのレポートも読んでみて下さい、お勧め!)。漫才かと思うほどお二人のぼけとつっこみがおかしく、なるほどここまでの信頼関係を築かれているのだからこそ・・・と納得しました。えぇと話を戻します。その「フロム・マンチェスター」の内容に共感できるところが沢山あったのです。恩師の渡邉暁雄先生の話や現代音楽について、などなど・・・。それもファンになった一因ですね。

藤岡さんが久々に2月27日に都内で振られるので、今からとても楽しみにしているのです。正指揮者をされている関西フィルさんとショスタコーヴィチのシンフォニー。ご興味おありでしたらぜひお出掛け下さい。詳細は、リンクのページから藤岡さんのサイトへたどっていってご覧下さい。

さて話変わって、昨日はピアニストの友人が現代音楽ばかりのサロン・コンサートを開いたので聴きに行きました。第二次大戦後の音楽を集めたという事で、リゲティ、ブーレーズ、ジェフスキ、武満、デュティーユというプログラム。そういうコンサートの企画自体がすごい!と思っていましたが、作曲家や作曲技法についての詳しいトークもついていて、非常に面白く聴く事が出来ました。勝手な推測ですが、恐らく全部一応五線紙に記されている作品だと思われます。たった5人の作品でもそれぞれに全く違う個性が感じられ、20世紀以降の音楽にどれだけいろいろな音楽が生まれたのだろう・・・?と考えたら、何だか嬉しくなりました。でも準備がきっと大変だったろうなと思います。演奏にも体力がきっと必要なのでは?しかしあれだけのプログラムを弾きながら頭を働かせてのトークは大変!演奏直後は息が切れていて代わってあげたい位(?)でしたが、本当にブラヴォーでした!

彼女がトークで話していた事ですが、大学生になってサックスや打楽器の伴奏を沢山するようになってから近現代の曲に目覚めたそうで、「いつかこのような形のコンサートを」とずっと思い続けていたそうです。私もこのところサックスの伴奏が多く近現代の曲に触れる機会が多いのですが、はたと考えてみてピアノのソロでは新しい作品をあまり弾いていないなぁと思い当たりました。というか正直「そこまであまり知らない」。教えている学生さんたちからも「何か良い曲ありませんか?」と尋ねられることもあり・・・。ピアノは古今東西沢山レパートリーもあるから、そこまで切羽詰まって探さないでも済んでしまう一面もあるとは思うけれど、それではいけないと自覚しています。例えばサックスは楽器の歴史が新しいからレパートリーも当然新しく、「近現代の作品だから」とは意識しないで演奏しているのではないかな?と思うのです(あまり尋ねた事はないのですが)。事実、サックスの伴奏を頼まれた時に私自身、「こういう現代モノは譜読みが大変だから・・・」なんて事は全く考えないし。

「演奏されなければ楽譜は所詮楽譜のまま、生きた音楽ではないし、後世に残る術もなくなってしまう」。かつて作曲家の友人といろいろ話し、考えて私自身もそう思うようになりました。だからいろいろ楽譜を探したり、又ある時耳にしていいなぁと思った作品は自分でも弾いてみる事は大切だなぁ・・・と。そんな努力が自分には足りないと少し反省しています。

何であれ「いい作品はいい作品!」なのです。聴いていて、あるいは弾いていて納得させられる力が秘められている、そういう作品に出会えたら光栄です。明日たまたま試験で伴奏するデニゾフのサクソフォン・ソナタという曲、学生時代から何度も演奏するチャンスがありました。初めて楽譜を見た時は今まで見た事もないようなその音の並び方(数学的であったりジャズ的であったり・・・うまく説明できない!)にびっくり仰天し、自分のパートが弾けるようになるまで、そしてサックスときちんと合うようになるまで、そして音楽的表現が出来るようになるまで本当に本当に時間がかかりました。今となってはスタンダードなレパートリーですが、この曲に出会った当時は演奏される機会がまだ少なかった頃。始めは確かに抵抗があったのですが何度もその後演奏し、又それなりに音楽的経験を積んできて今思うに、これは素晴らしい作品だと実感するようになりました。本当に緻密に書かれていて奥が深く、楽譜を正しく読み取って演奏する事自体が難しいのですが、逆にそれをクリアすればいろいろな解釈も出来るような気がするのです。明日は二人続けて同じ曲を伴奏するのですが、伴奏者が同じであっても二人とも全然別の演奏をしますね。面白いものです。明日が楽しみ・・・。



2005年2月7日(月)      「今回のプログラム」

又もやお待たせしました。現在のキツイ生活も今週で少し楽になる予定・・・。

今週前半は試験の伴奏が佳境です。特に明日は9人。本番の合間を縫って全員の直前の通し(合わせ)を入れなければならず・・・まさか試験に伴奏者が遅刻していく訳にもいかないし、時間がなくなったからこの人の合わせはパスするという訳にもいかないし、時間の読みの深さ(?)と勘がモノをいいます。結構胃がキリキリしそう。と言っても私はかなり心配性で時間の余裕を大分みているので、実際は時間が余る事の方が多い。大丈夫!・・・と言い聞かせています。

伴奏の仕事をしていて思うには、「相手に心配をさせるような事はしてはならない」。これは肝に銘じています。例えば自分の演奏の事で頭がいっぱいなのに、その上伴奏者が出番に間に合わなかったら(数日前の試験の伴奏でもそんな場面に出くわしました)、伴奏者の方がアガッてトチリまくったら・・・?もし自分が伴奏を頼む立場だったらそういうのは嫌なものです。他には、引き受けてみたものの難しくて弾けないから、あるいは急遽他の予定が入った為ドタキャンする。こんなピンチヒッターの話もしょっちゅう舞い込みます。そんな話を書き始めたら枚挙に暇がない・・・いろいろ聞いているからこそ自分こそちゃんとしないと!と思います。

先週土曜は一日かけて専攻外のピアノの試験を聴いていました。洗足学園では副科ピアノは別にあるのですが、私が聴いたのは教職課程を取る学生さんの為のピアノでした。出席も当然厳しく、試験に用意する曲は簡単なスケールと3曲(楽譜は見てよい)。グレード別で自分に合った程度の曲で受けられるのですが、それでも半期毎に3曲用意するというのは本当に大変。良く頑張っているなぁと思いながら聴いていました。それも試験場に入ってピアノの前に座ってから、「スケールは何調、曲は・・・」と指定されるのです。それだけでも相当緊張するそうです。もし自分が例えば声楽の副科の試験でそんな経験をする羽目になったら・・・いやぁそりゃドキドキするでしょうね。

さて、本題。6月のリサイタルのプログラムをやっと決めました。前回のプログラムをあれこれ迷って決めたのがもう1年前・・・?本当に最近は時間の進み方が早く感じます。詳細は「コンサート情報」をご覧下さい。

プログラムはその時に一番弾きたいものを考え、それを核にして一晩のプログラムを決めていきます。今回どうしても弾きたいと思ったのがベートーヴェン。ここ数年はバロックや古典の曲を入れずロマン派以降の作品でプログラミングしていたので、久々にベートーヴェンに取り組んでみたくなりました。選んだのが初期の傑作、作品10−3のソナタ。そしてベートーヴェンに組み合わせられるものとして2番目にぜひとも弾きたいと思ったもの、それがシューベルトでした。年齢は離れていたものの同時期にウィーンで活躍していた作曲家同士です。昨年末位までに考えていたのは別の作曲家なのですが、最近気分が変わりまして・・・。D960のソナタは深い曲で時間的にも長いので、後半はこれ1曲で行こうと決めました。というところで前半にベートーヴェンと組み合わせるものを考えたのですが、時間的に長過ぎないもの、そしてベートーヴェンとシューベルトという(響き的には)オーソドックスなものがくるので、近現代の響きを組み合わせたいなと思いました。そこで浮上してきたのがバルトークのソナタ。べートーヴェンに影響を受けており、又時間的にそんな長くもないので。

ここまででソナタが3曲。字面を見る限りではちょっとどうかな?と思うところもあり・・・いつもはソナタや小曲、変奏曲などをバランスよく並べるようにしているので、今回のようなソナタばかりというのは全く初めての事。実際聴いたり弾いたりした感じでは、それぞれが全然違うので飽きる事はないと思うのですが。ただ前半の時間にまだ余裕があるので、そこでバッハの短めの作品を入れたらどうかなと思いつきました。バッハとベートーヴェン、ドイツのみならずクラシック音楽を代表する大作曲家つながりで、又バルトークもバッハを模範としてきました。組曲にも惹かれるのですが、さすがにそれでは長過ぎるのでトッカータを。やはり導入は長過ぎない方がいいと思うので、これは良い選択だと思っています。

ここまで決めたら時間を計りながら弾いていきます。基本は前半45分、後半30〜35分にアンコールで大よそ90分、これを基準にしています。聴いた感じや弾いた感じのバランスも大切なので、どんなに弾きたくてもその年はお蔵入り、いつかタイミングよくプログラムに入れられるのを待っている曲が沢山あるし、組み合わせによっては初めて弾く曲もいくらか混ざります。ただその代わり、弾いた事がなくてもどんな風に弾くか明確にイメージできる曲を選んでいます。通して弾いてみて違和感を感じなければまぁまぁ成功かな、と。毎年そんな風にプログラムを決めているのです。

いつの間にか立春過ぎて日差しはすっかり春。これだけ寒くても樹や草は着々と春の準備を整えています。数日見ない内に様子は随分と変わるもので、新芽もいつの間にかぷっくりと膨らんでいます。昨日は薔薇の剪定をしました。本当は1月終わりか2月入ってすぐにしないとならないのですが、どうにも余裕がなかったので・・・。家の薔薇は鉢に窮屈に植えてあって可哀想なのですが(地植えの方が喜ぶだろうけれど台風など悪天候の時は助かります)、昨年はこの時期寒肥を例年より多めに施したら、結構頑張って年間通して咲いてくれました。来週少し生活が落ち着いたら、今年も寒肥奮発しようっと・・・。


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